ライブハウスの窮地を救うか!? チャンスに変える「無観客配信」ポイントはネット環境の整備と僅かな工夫
新型コロナの感染拡大で危機的状況に陥ったエンタメ業界。今後、緊急事態宣言が解除されたとしても「3密」の代表と取上げられるライブハウスが通常営業に戻るまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。そんな先の見えないライブエンターテイメントの中で、いま「無観客配信」が注目されている。東京都も「3密」にならなければ協力金の給付対象となる事を発表した。このピンチをチャンスに変えられるか? 「無観客配信」について探ってみよう。
エンタメの救世主、無観客配信はピンチをチャンスに変えられる!?
新型コロナの感染拡大で危機的状況に陥ったエンタメ業界。今後、緊急事態宣言が解除されたとしても「3密」の代表と取上げられるライブハウスが通常営業に戻るまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。そんな先の見えないライブエンターテイメントの中で、いま「無観客配信」が注目されている。東京都も「3密」にならなければ協力金の給付対象となる事を発表した。このピンチをチャンスに変えられるか? 「無観客配信」について探ってみよう。
メジャーアーティストの映像監督や大小様々なイベントやライブ配信を手掛けるA+plus(エープラス)の代表・田中英和さんは、無観客配信について「工夫次第で新しいスタイルが生まれるチャンス」と語る。世界でも活躍する3人組のロックバンド「人間椅子」のライブ配信を担当し、他にもゲームショーやカンファレンス等の大規模配信からワンオペと呼ばれる、1人ですべて撮影・配信する小規模まで数々な配信を行ってきたが、新型コロナウイルスの影響で観客を入れたイベントの配信は一気に無くなり、代わりに無観客配信の依頼や相談が殺到しているという。
「ミュージシャンのライブ配信や企業、団体、個人の配信まで依頼や相談は様々です。ただ無観客という言葉に『お金にならない』という印象の方々も多く、『最小限の予算で。出来る範囲で』という依頼が増えています。なかでも品質を重視するエンタメの配信は、それに合ったシステムを使う事が重要なのですが、出費を抑えられるZoomやSkypeなどの会議&電話アプリを使った配信や、撮影や配信未経験のスタッフが試行錯誤で運営したり、配信業者が入ってもボランティアに近い形で協力するという状況も見受けられます。もちろん、それぞれの事情はあるのですが、送り手も受け手もこれを続けていくと、お互いにどこかで疲弊して満足できなくなると思っています。そこでライブ配信の依頼があった場合、まず最初に収益化できるかどうかを一緒に考えながら、その上で予算面や技術面を含めて提案させてもらいます」と説明した。
しかし、専用のシステムを導入すると出費もかさみ、動けば動くほど赤字になってしまうと不安を抱える人も多いと思うが「もちろんすべてには当てはまりませんが、やり方次第で収益も上げられますし、今までリーチできていなかった人にも認知してもらえて、確実にファンも増やせると思います」と語り、次のような提案を紹介した。
「まず会場(ライブハウス、イベントスペースなど)自体がYouTube LiveやLINEライブといったマネタイズできるライブチャンネル、プラットフォームを1個作るのはありだと思います。アーティストのチャンネルではなく、会場自体に『投げ銭』ライブができる環境があれば、これまでのようなスケジュールでライブ配信ができて、会場、アーティスト共に還元できる。また有料配信を行う仲介業者と組む事もありだと思います。これまでリアルにこだわっていたライブハウスもシフトするタイミングかもしれません」と語った。
「投げ銭ライブ」とはファン自身がその価値を決めて自由に支払う払うライブの事。アイドルの配信などを筆頭に個人のYouTube Liveも使用しており、0円というファンもいれば数万円支払うファンもいる。代表的なものとしてYouTube Liveの「スーパーチャット(スパチャ)」がある。ただし、チケット制の有料配信と違い、事前の収益予想もつかないし、赤字になるリスクも抱えている。
「先日、渋谷の数百人規模のライブハウスでロックバンドの『投げ銭』の無観客配信のお手伝いしたのですが、結果としてお客さんを入れた時と変わらない売り上げになり、ライブハウスにも十分還元できました。アイドルとは違ったファン層なので最初は不安でしたが、この結果には驚きましたし、同時に『投げ銭』はそれだけカジュアルになってきたと実感しました。理由として全国のファンからドリンク代という名目で500円を払う人もいれば、好きなアーティストの支援という事で数万円単位で払う人もいましたし、加えてECサイトを使ったグッズの販売の宣伝もやったので、効果があったのだと思います。アーティストにとっても東京・名古屋・大阪といった主要地域にしか行けない人たちには全国、もしかしたら全世界に見てもらえるチャンスかもしれません」と一例を挙げた。