「これを売ってしまったら、二度と手に入らない」 念願入手の貴重フェラーリ、意外な誤算も?
「今のフェラーリには一切興味がない」。そんな60歳男性オーナーが乗っているのは、1993年式のフェラーリ・モンディアルTだ。30年ものの旧車ながら走りは健在。荷物をたっぷり乗せられる極上の1台は、生涯大事に乗るつもりだ。しかし、1つだけ“誤算”があったという。こだわりの詰まった愛車物語とは。
93年式フェラーリ・モンディアルTと運命の出合い 99年式ゲレンデヴァーゲンG320Lはリフトアップ
「今のフェラーリには一切興味がない」。そんな60歳男性オーナーが乗っているのは、1993年式のフェラーリ・モンディアルTだ。30年ものの旧車ながら走りは健在。荷物をたっぷり乗せられる極上の1台は、生涯大事に乗るつもりだ。しかし、1つだけ“誤算”があったという。こだわりの詰まった愛車物語とは。(取材・文=吉原知也)
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ずっと「どうしても欲しかった」という世界のフェラーリ。もともと旧車が大好きなだけに、フェラーリであっても現代のタイプは選択肢になかった。スポーツタイプがいいが、2シーターは敬遠。条件は徹底しており、「5速マニュアル、黒シート、赤色、4人乗り、そしてオープンカーでほろのタイプ」というものだった。
さらに旧車となると、希望にぴったりなものはなかなか見つからない。関東地区の専門店十数軒を回るなど、探しまくった。数年前にやっと出合えた。横浜の専門店だった。
エンジン音を聞いて、ビビッときた。「すごくいい音がして、これだっ! と思いました。即決でした」。リトラクタブル・ヘッドライトにも魅了された。念願がかなった。
トランクが付いており、容量の大きさは趣味のゴルフにもうってつけだ。「トランクにツアーバッグがすっぽり入るんですよ。クーラーボックスも積めるので、ちょっとした旅行の荷物もばっちりです」。それに、「運転席も広くて乗り心地はいいですよ。あと、ほろは現代型の自動じゃダメなんです。雨が降ってきたなと思ったら、自分で屋根を閉める。手動だからこそいい。ちょっとしたコツもあるんですよ」と、熱く語る。
冬でも「オープン全開」で快走。ただ、エアコンの利きが悪くなってきており、真夏は「屋根を開けていても、人間がもたないです」。故障リスクも考えて、夏場はあまり乗らないという。
「フェラーリは、エンジンが走っているという印象ですが、この車は、ファミリーカーのように使い勝手がいいんです。そこが気に入っています」。そして、「旧車の魅力は、ひと言で、シンプル・イズ・ベスト。余計なものが付いていない。走っていて、ピッピピッピとセンサーが鳴らない。『ザ・クルマ』の感覚で乗ることができます。そこがいいんです」。旧車への情熱を口にする。
実はもう1台持っている。メルセデス・ベンツ Gクラスだ。「99年式のゲレンデヴァーゲン G320Lです。ゲレンデは街中で乗っている人が多いですが、僕は山に行きます。赤城山を中心に、雪山に走りに行くんですよ。ちなみに、10センチ、リフトアップしています。山仕様です」というから驚きだ。
ところで、フェラーリは想定外だったことがあるという。果たして、どんなことなのか。
「僕も妻もゴルフが大好きで、『妻と一緒に行ける!』と思っていたのですが、妻は『乗らない』と。全然乗ってくれないんです」と苦笑い。なんと、奥様がお気に召さないというのだ。「どうも妻にとっては乗りづらく、エンジン音もうるさいようで(笑)。『この車ならばゴルフは行かないよ。勝手に1人で行って』と言われています(笑)。明治神宮外苑のイチョウ並木も好きでよく行くのですが、妻は恥ずかしがって……。ただ、ゲレンデは安心感があるそうで乗ってくれるのですが、妻はそれでも助手席ではなく、後ろの座席に乗るんです」。まさかの事態。夫婦でフェラーリでゴルフを満喫、とはいかないようで、ちょっと寂しそうに語った。
そんな男性オーナーは、乗り物全般が大好きで、「バイクも好きで、オフロード専用とトライアル専用のバイクを持っています」。それだけでなく、空と海にも思いをはせ、「いつかセスナを買いたいんです。それに、クルーザーにも興味があって……。見本市に通っています」。夢は大きく広がっている。
愛車のフェラーリは貴重モデル。今はネットで中古を調べてもなかなか出てこなくなったというだけに、希少価値を改めて実感している。「死ぬまで乗るつもりです。子どもが引き継ぐかどうか分かりませんが、自分が乗れる限りはこの車に乗っていきたいです。それに、基本は売りません。だって、これを売ってしまったら、もう二度と手に入らないですよ。大事に大事に乗るつもりです」と言葉に力を込めた。