中大の“看板”法学部が茗荷谷キャンパスに移転 ネット「都心回帰で名門が復活するか」

中央大は今月、東京都心に位置する茗荷谷キャンパス(文京区)をオープンした。看板学部である法学部がこの新キャンパスに入っており、都心回帰に卒業生からは歓迎の声が多く上がっている。駿河台キャンパス(千代田区)と小石川キャンパス(文京区)も新設され、3月30日には茗荷谷キャンパスで合同開校式が行われた。河合久学長は「レガシーに依存する『都心回帰』ではなく、発展を期する『都心展開』というのがふさわしい」と強調した。法学部の都心展開は創立130周年にあたる2015年に策定された中長期事業計画「Chuo Vision 2025」に基づいている。

4月にオープンした中央大茗荷谷キャンパス(写真はイメージ)
4月にオープンした中央大茗荷谷キャンパス(写真はイメージ)

おしゃれでクラシカルな校舎 白門、テミス像、屋上庭園、学食は銀座スエヒロ

 中央大は今月、東京都心に位置する茗荷谷キャンパス(文京区)をオープンした。看板学部である法学部がこの新キャンパスに入っており、都心回帰に卒業生からは歓迎の声が多く上がっている。駿河台キャンパス(千代田区)と小石川キャンパス(文京区)も新設され、3月30日には茗荷谷キャンパスで合同開校式が行われた。河合久学長は「レガシーに依存する『都心回帰』ではなく、発展を期する『都心展開』というのがふさわしい」と強調した。法学部の都心展開は創立130周年にあたる2015年に策定された中長期事業計画「Chuo Vision 2025」に基づいている。

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 茗荷谷キャンパスには法学部の全学年と大学院法学研究科が多摩キャンパス(八王子市)から移転し、約6000人の学生が通っている。地上8階、地下2階建ての校舎は、中大の前身である英吉利(イギリス)法律学校の赤レンガ造りをモチーフにしており、吹き抜けのエントランスが広々とした印象を与えている。入り口の白門デザインやテミス像が目を引くほか、英国の法曹院「ミドル・テンプル」のクラシックなデザインを用いた法学部図書館や食堂は落ち着いた雰囲気だ。

 地下1階の食堂は銀座スエヒロカフェテリアサービスに営業を委託。焼ハンバーグステーキ定食、黒豚の生姜焼き定食などは450円から、韓国風牛焼肉丼スープ付、三元豚のロースかつ丼みそ汁付などは450円から。麺類も安価で特製天ざる、熱々山菜そば、冷やし温玉うどんなどは330円から、厚切り焼豚の塩ラーメン、ジャージャー麺などは450円から注文できる。屋上庭園には緑があふれており、地域に貢献できるよう区民相談窓口、郵便局、保育園なども収容している。

多摩センター駅に掲示されている恵泉女子学園の案内広告【写真:ENCOUNT編集部】
多摩センター駅に掲示されている恵泉女子学園の案内広告【写真:ENCOUNT編集部】

 中大は1978年(昭53)に多摩キャンパスを開校し、文系学部を都心から移転した。これは60年代から70年代初頭にかけて激しさを増した学生運動を鎮静化させることと、大学志願者の増加に対応するため、安価で広々とした新キャンパスが必要とされたことが理由だ。しかし、昨今は少子化の進行で大学間の学生獲得競争は熾烈(しれつ)化している。そのため、多摩地区など郊外に移転した大学は次々と都心回帰を図っている。

 東洋大は05年に1、2年生を埼玉県の朝霞キャンパスから文京区の白山キャンパスに移転。21年には朝霞キャンパス撤退を表明し、現在は白山キャンパスに文学部、経済学部、経営学部、法学部、社会学部、国際学部、国際観光学部が集約されている。東京理科大は25年4月に薬学部を千葉県の野田キャンパスから葛飾キャンパスに移転する。一方、多摩市の恵泉女学園大は24年度以降の学部生、大学院生の募集停止を発表した。入学者の定員割れが続き、大学経営が困難になったことが理由だが、都心から遠く離れたキャンパスが敬遠されたことも背景にある。

 今回の中大法学部移転について、卒業生からは「早稲田も明治も法政も法学部は都心にあり、霞が関周辺の裁判官、検事、弁護士からのサポートも得やすかった。多摩まで来てもらうのは不便すぎる」「多摩移転で司法試験合格者数が落ち込んだ」「都心回帰で名門が復活するか」などの声がネットに上がっている。

 かつては「司法試験の名門」と呼ばれていた中大法学部。22年の法科大学院別の司法試験合格者数ランキングは1位京都大(119人)、2位東京大(117人)、3位早稲田大・慶応大(104人)、5位一橋大(66人)、6位神戸大(54人)、7位大阪大(51人)で、8位にやっと中大(50人)が登場する。以下、9位東北大(27人)、10位同志社大(25人)。

 一方、合格率を見ると1位京大の68.0%、2位東大の60.9%、3位一橋大の60.0%と続き、中大は26.2%と大きく引き離されている。慶大の57.5%、早大の44.8%、日大の32.0%と比べても低い数字だ。もちろん、中大法学部出身者が東大、早慶などの法科大学院に進むケースも多いため、一概に中大法学部の地盤沈下とは言い切れないし、法曹界では中大出身者がいまだに一大勢力をなしている。また、司法試験の結果だけで学びの質が評価できるわけではないが、河合塾が公表している大学法学部偏差値では早大、慶大が67.5、上智大が65.0、青山学院大、法大、立教大が62.5。中大の法律学科は試験方式によって60~65と幅があるが、予備校講師は冷静に言った。

「地下鉄丸ノ内線茗荷谷駅から徒歩1分という至便さに加えピカピカの新校舎、食堂のメニューの豊富さなどが評価され人気化しそうですが、早稲田や慶応の法学部に合格した学生はまず流れてこないでしょう。上智の法学部と両方に合格したら、多少の流れが期待できるかもしれません」

 名門復活なるか。数年後になるであろう移転の効果検証に注目したい。

次のページへ (2/2) 【写真】茗荷谷キャンパスの開放感のある屋上庭園
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