【週末は女子プロレス♯96】男女問わず、全方位にケンカ売る傾奇者 ウナギ・サヤカ「『普通』と言われるのが一番嫌い」

2019年1月4日に東京女子プロレスでデビューし、20年11月からスターダムに参戦した“傾奇者”ウナギ・サヤカ。この2団体では他団体での試合はほとんどなく、所属として試合数を積み重ねてきた。とくにスターダムではコズミックエンジェルズのみならず、ユニークな発想で新人選手の底上げに貢献。ところが、昨年のスターダム5★STAR GP終了後から方向転換(?)、積極的に他団体に出場するようになり、いまや、女子プロレスのみならず男子の団体にまでケンカを売りまくっている。22年から現在まで、10団体のリングに上がっているのだ。

これまでの歩みを振り返ったウナギ・サヤカ【写真:新井宏】
これまでの歩みを振り返ったウナギ・サヤカ【写真:新井宏】

2022年から現在まで、10団体のリングに上がる

 2019年1月4日に東京女子プロレスでデビューし、20年11月からスターダムに参戦した“傾奇者”ウナギ・サヤカ。この2団体では他団体での試合はほとんどなく、所属として試合数を積み重ねてきた。とくにスターダムではコズミックエンジェルズのみならず、ユニークな発想で新人選手の底上げに貢献。ところが、昨年のスターダム5★STAR GP終了後から方向転換(?)、積極的に他団体に出場するようになり、いまや、女子プロレスのみならず男子の団体にまでケンカを売りまくっている。22年から現在まで、10団体のリングに上がっているのだ。

 スターダムの選手として他団体のリングにがったのは、昨年4月の後楽園ホール60周年 還暦祭」が事実上初めてだった。その2週間後にはディアナの後楽園ホールに白川未奈と乗り込みタッグ王座に挑戦。7月には東京女子時代に縁のあるまなせゆうなとガンバレ☆プロレスで再会した。その後スタートしたシングルリーグ戦5★STARでは戦績が低迷。これが響いたかシリーズ明けにウナギのカードは組まれておらず、ここから彼女の言う「ギャン期」になだれ込むのである。

 では、「ギャン期」とはなんなのか。“期”というくらいだから“なにかのシーズン”ということになるのだろう。そのあたりをウナギ本人に聞いてみると……。

「なんですかね? 終わる可能性もあるし、2期が始まる可能性もあるし、無期限というか自分の気分次第でやってます(笑)。まあ、リミッターゼロで走ったらどこまでいけるかって感じですね。いろんなところに上がってるいま、メッチャ楽しいし、まだまだこれからって感じです!」

 では、ウナギは何をターゲットに、それぞれの団体のリングに上がっているのだろうか。まずは「ギャン期」の本格スタートとなったJUST TAP OUTから。

「JTOは若くていい選手が多い。(狙いは)トップのベルト巻いてる稲葉ともかなんでしょうけど、あの辺をかき回していきたいなって。Aoiと組んでドクペカブキを結成したのも、そういう理由からです。Aoiにも超えたいものがあるし、団体内にとどまっていたら変われないところもあるから、一緒に新しいもの作りたいなってところがありますね」

 JTO初登場の10月7日から9日後、ウナギはディアナに参戦。メインの8人タッグで井上京子&井上貴子&神取忍&タイガー・クイーン組と対戦した。大御所たちの遭遇は、いままでなら絶対にありえないカードだろう。なかでもディアナ創設者の京子に興味津々。4・29後楽園では、キャリア35年の京子とシングルマッチで激突する。

「まさかのカードでビビりました(笑)。私、井上京子ってホントにすごいと思うんですよ。あんなにわかりやすくプロレスラーだって感じでお酒飲んで、試合して、ベロベロになってるのに、子どもたちにご飯作ってと。それをやれる人ってなかなかいないだろうし、そういうところも含めて人としても好きなんですよね。ディアナには井上京子という強い柱がある。だからこそ、その柱を越えたいんです。ディアナには変わろうとして飛びついてくれる若い子たちもいるので、背負うわけではないけど一緒に進みたい。なんでこの子たちは先輩の胸を借りてずっとやってきてるんだろうとも思っているので、それをひっくり返してやりたいと思ってます」

 ディアナ初参戦から9日後の10月25日には、Marvelousに登場。これは21年の5★STAR公式戦で敗れた彩羽匠狙いと言っていい。が、この大会で彩羽は負傷し約4カ月間の欠場を強いられてしまう。

 とはいえ、もともとウナギは彩羽以外にもマーベラスとは因縁があった。マーベラス勢がスターダムに参戦したとき、長与千種引っ張り出しをアピールしていたのがウナギだったのだ。さらに彩羽から「ファンの人が言うほど変なヤツじゃなかったです。ちゃんとプロレスラーでした」とのコメントにカチンときた。普通に考えれば誉め言葉なのだが、傾奇者からすれば屈辱でしかない。

「私って『普通』と言われるのが一番嫌いなんですよ。なので、彩羽匠ともう一回やりたいし、あのときとは全然違うところを見せたい。そして、長与千種の後継者みたいな意識でやってる人たちみんなをひっくり返してやりたいと思ってます」

 11月20日にはセンダイガールズの後楽園に参戦。橋本千紘&優宇のチーム200キロと大胆にも2対1のハンディキャップマッチで対戦した。しかも、パートナーXを連れてくるとしておきながら、ふたを開けてみれば「最初からいねえんだよ!」。2人を騙した真意は、いったいどこにあるのだろうか?

「仙女は橋本千紘とやりたかったから。それに、ギャン期に入るなら2人いっぺんに相手したいなって。仙女には(里村明衣子が作った)古きよき強い女子プロレスがあると思うんです。橋本とはシングルして負けましたけど、まだまだやり残したことがありますね」

 仙女でハンディ戦をおこなった日、ウナギはZERO1の靖国大会に出現した。しかもアジャコングとのシングル要求である。このとき、工藤めぐみGMはジャガー横田とのタッグ戦を提案。これもまた驚天動地のカードだったが、アジャにはまだたどり着いていない現実がある。

「アジャは所属じゃないけどポスターのセンターになりえるレスラーじゃないですか。ギャン期を始めた以上、やるからにはアジャに意識される、超えるプロレスラーにならないと。ZERO1に上がったのは大谷晋二郎イズムを感じたいというのもあります。なんだったら大谷より熱いプロレス作りたいなって。アジャにはまだ触れてないので、どうなるかわからないですけど、まだまだこれからですね」

スターダムの魅力を語ったウナギ・サヤカ【写真:新井宏】
スターダムの魅力を語ったウナギ・サヤカ【写真:新井宏】

「ギャン期」はまだまだ助走段階

 昨年12・29のスターダム両国国技館で白川とのピンクカブキが解散。これにより、ウナギは完全に流浪のレスラーになったようだ。これは同時に「ギャン期」の加速化にもつながった。その活動はとどまるところを知らず、前述の団体に参戦し続けながら、2月15日にはGLEATに初参戦。細川ゆかり復帰戦の相手をつとめ、その後、宮城倫子にも矛先を向けた。4・12後楽園で一騎打ちをおこない「GLEATから追放してやるよ」と言うのである。

「GLEATって盛り上がりのすごい団体。勢いがメチャクチャある。でも、男子だけなんですよね。それって悔しいじゃないですか。だから女子をなんとかしたいみたいなところがあって、いっそのこと男子もひっくり返してやろうかなみたいに考えてます。なので、『GLEATはウナギ・サヤカ』みたいにもっていきたい。そのために宮城倫子を追放する。だって、誰も宮城を見たくないでしょ」

 そして、2月19日にはなんと全日本プロレスの後楽園ホールに出現、諏訪魔と一触即発状態となった。これを受け、3・14新宿で試合が組まれた、諏訪魔&尾崎魔弓&雪妃魔矢組vsヨシタツ&SAKI&ウナギ組で、王道マット初参戦を果たしたのである。

「刺激的でしたね。私、コロナ禍で昔のプロレスを見ていたときに、川田利明の試合に衝撃を受けたんですよ。それから全日本が大好きになって、そのリングに上がれたことが夢みたいでしたね。上がってみて最初に思ったのが、全日ファンの懐の深さでした。歓声とか空気感とかすごくよかったです。こんないい環境でやってるんだから、諏訪魔はもっと頑張れよって思いました。最後の最後まで尾崎と雪妃に助けてもらって、しっかりしろよって(笑)。やっぱり諏訪魔をひねり潰したいので、今後も先が長いと思いますよ」

 男子中心の団体が増えていくなかで、2月22日には初代タイガーマスクのストロングスタイルプロレスに初参戦。参戦発表にあたり、ビデオメッセージで初代タイガー佐山サトルを名指しで挑発など、らしさ全開。狙いは、ディアナで初遭遇したタイガー・クイーン一本にあるという。

「タイガー・クイーンってまだ負けたことないらしいじゃないですか。だったら、勝ちたいですね。3WAY闘って、私とは正反対のレスラーだってことがわかりました。向こうは何も言わない。その向こう側に何があるんだろうって、メッチャ思います」

 このように、現在のウナギは男女の垣根を越えて全方位にケンカを売りまくっている。単発の大会以外、ほとんどで継続的に参戦しているのが求められている証拠だ。「査定してやるよ!」がスターダム時代からの決めゼリフだが、現在のウナギはこれまでの経験がどこまでプロレス界全体で通用するか自分自身を査定しているような感もある。

「私はカードが決まる前から試合が終わってそれ以降も、ずっとそのカードというか、その人との闘いがずっと続くと思ってるんです。その人とのストーリーを紡ぎ続けるというか、そういったところすべて含めてプロレスだというのを教えてくれたのがスターダムでした。そこはスターダムが圧倒的だったんですよね」

 スターダムで学んだことをいま一人で実践しようとしているウナギ。ということは「ギャン期」はまだまだ助走段階なのかもしれない。10団体参戦からスタートし、これからが本章。「リミッターゼロで走ったらどこまでいけるのか」。ウナギの出没するところ、何かが起こる!

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