「若者よ、選挙に行くな」強烈メッセージのCMが物議 全方向から批判も… 制作者の狙いは?

第20回統一地方選挙が今月9日、23日に投票日を迎える。そんななか、「若者よ、選挙に行くな」という皮肉の効いたメッセージで、若い世代に政治参加を促す啓発CMがネット上で賛否両論を呼んでいる。啓発CMの制作元で若い世代への主権者教育事業を行う株式会社笑下村塾のたかまつなな代表に、CMに込めた意図と反響を聞いた。

啓発CM制作元の株式会社笑下村塾・たかまつなな代表【写真:本人提供】
啓発CM制作元の株式会社笑下村塾・たかまつなな代表【写真:本人提供】

「若者よ、選挙に行くな」というメッセージで、逆説的に投票を呼び掛ける内容

 第20回統一地方選挙が今月9日、23日に投票日を迎える。そんななか、「若者よ、選挙に行くな」という皮肉の効いたメッセージで、若い世代に政治参加を促す啓発CMがネット上で賛否両論を呼んでいる。啓発CMの制作元で若い世代への主権者教育事業を行う株式会社笑下村塾のたかまつなな代表に、CMに込めた意図と反響を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

「若い人たちへ」「今のままの日本が一番だよ。選挙なんか行かなくていいよ~」「選挙? 何にも変わりゃしないわ」「若者よ選挙に行くな」。統一地方選の告示が始まった先月23日、ネット上で公開されたCMでは、男女3人の高齢者が口々に若者に投票を控えるよう呼びかける様子が収められている。

 高齢者たちの主張は徐々に過激さを増し「コロナで修学旅行がなくなった? かわいそうね~。私の旅行は支援してもらったけどね」「若い人の人口が少ないから『私の一票なんて無意味だ~』って開き直ってるの? ふーん面白い」「年功序列? 若い人の意見は通らない? 老害だ~ いくらでもTwitterで言ってればいいわ」と若い世代をあおるような発言も。「政治に若者はいないも同然」とし、「君たちは選挙には行かない」「私たちは選挙に行く」と繰り返すことで、逆説的に投票を呼び掛ける内容となっている。

「『若者よ、選挙に行くな』をコンセプトにしたCMを最初に制作したのは2019年の参院選のときです。若い世代の選挙啓発といっても、普通の内容ではなかなか伝わらない。元ネタは当時アメリカで話題となっていたトランプ政権への風刺映像で、これを日本の現状に合った形でアレンジするなら、政治の世代間格差にスポットを当てるのがいいなと思い制作しました。今回は4年前のものをもとに、コロナやネット投票など、より若い世代の怒りに刺さる要素を加えたアップデートをしています」

 反響は大きく、「皮肉が効いていて面白い」「投票することの大切さが分かってありがたい」などの好意的な声の一方で、「若者と高齢者の対立をあおるのはどうなのか」「世代間の分断を招く」など、賛否両論が寄せられている。

「若い世代を選挙に向かわせるためには自分たちが損をしていることを伝えなくてはいけないし、世代間格差は現実に存在している。もちろん分断や対立をあおったり、高齢者を悪者にしたいという意図はありません。CMはあくまで創作物ですが、フィクションとして捉えられていないと感じることも……。反響は4年前よりはるかに大きく、『世代間格差』というワードがより炎上しやすくなっているとも感じます」

 啓発CMを作る上では気にかけるところも多かったといい「政治の話題になると、すぐに『これはどこの党への投票を促すものなんだ』という目で見られる。CMは『若者が選挙にいけば社会を変えられる』をテーマに、同性婚やベーシックインカム、憲法改正など、与党野党問わずにいろんな党の主張を満遍なく入れたつもりですが、そうしたことで全方向から批判を受けてもいます」と苦労を語る。

「ネットで社会運動をする人も増えましたし、大人に任せておけないという危機感を抱いている若者も多い。署名活動やデモ、政治家に会いに行く、自ら立候補するなど、政治に参加する方法はいろいろありますが、一番手軽な手段が選挙。若者にも社会を変えられる力があるんだと知ってほしい」

「選挙に行くな」「いないも同然」とまで言われ、若者はどう動くか。投票日は今月9日、23日に迫っている。

次のページへ (2/2) 【動画】強烈なメッセージが印象的な啓発CM
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