中村歌之助、前歌舞伎座の座席プレートを取ってお守りに「もうほぼ時効みたいなもの(笑)」

歌舞伎俳優の片岡千之助、中村莟玉(かんぎょく)、中村歌之助が1日、東京・東劇で行われた映画『わが心の歌舞伎座』の先行上映会に登場しトークセッションを行った。

トークセッションに登場した中村歌之助【写真:ENCOUNT編集部】
トークセッションに登場した中村歌之助【写真:ENCOUNT編集部】

ギュウギュウになって芝居を見た照明室「あの角度は僕たちしか見れない」

 歌舞伎俳優の片岡千之助、中村莟玉(かんぎょく)、中村歌之助が1日、東京・東劇で行われた映画『わが心の歌舞伎座』の先行上映会に登場しトークセッションを行った。

『わが心の歌舞伎座』は、2009年に建て替えのために休場が決まり、10年に閉場した第4期歌舞伎座(以下、前歌舞伎座)のドキュメンタリー映画で、11年1月に初上演された。今年が13年に完成した現在の第5期歌舞伎座新開場10周年ということで、再上演されている。

 同作には、千之助の祖父・十五代目片岡仁左衛門や、莟玉の養父・四代目中村梅玉、歌之助の祖父・七代目中村芝翫(しかん)が登場しており、前歌舞伎座での思いを語っている。また、十二代目市川團十郎や二代目中村吉右衛門、十八代目中村勘三郎といった数々の歌舞伎俳優も登場し、稽古風景や楽屋の日常、美術やかつら、床山といった制作現場の様子なども収められている。

 歌之助は2、3歳の頃から、千之助は3、4歳の頃から前歌舞伎座に立っており、もともと一般家庭出身の莟玉も10歳で舞台を踏んでいる。歌之助は、「久しぶりに見ると泣きますね、この映画は。懐かしさもありながら、うちの祖父(七代目芝翫)もそうですけど、亡くなった方たちもいて。『いないんだな』って改めて気づくと言うか」と振り返った。

 前歌舞伎座の思い出を聞かれた千之助は、「ロビーですね。歌舞伎座に入ったところ。あの頃は本当に小さかったので、ロビーでいろんな番頭さんに遊んでいただいた」と懐かしんだ。また莟玉も、「僕はもともと一観客として(前歌舞伎座で舞台を)見ていたところから、楽屋に入れていただけるようになって、そこが夢の空間で。前の歌舞伎座の楽屋は狭くて大変で、衣装を着ちゃうと入れ替わるのも大変だったんですけど、でもその感じがすてきでした」と語った。

 歌之助は、2階の左右にあった照明室に思い入れがあるという。「僕たちは芝居を見る時は照明室の陰からコソっと見ていて。今は照明室も大きくなっていますが、昔は小さくて、みんなギュウギュウになって、ライトの(光の)熱さの中で先輩方の芝居を見るのが好きでした。あの角度は僕たちしか見れないですから」と語ると、千之助も莟玉も「うんうん」と首を縦に振り、莟玉は「あのガッタガタのいすでね~」と懐かしんだ。

 また千之助は、閉場する際に座席のプレートを持ち帰る俳優が多くいたと明かした。「プレートに何階何列って書いてあるじゃないですか。あそこの番号を見て、自分の誕生日のプレートをみんな取ってました」と語ると、歌之助も「9月10日なら9列10番とか取って」と明かした。

 MCから「取ってもよかった?」と尋ねられた歌之助は、「もうほぼ時効みたいなものですけど!」と笑い、「みんな歌舞伎座に思いがあったので、何か歌舞伎座のものを持って帰りたいというのがあった。(観客が)いなくなった客席を見てしんみり見ている中で、ドリルを持ってプレートを取っていました(笑)」と当時の様子を振り返った。今も鏡台の中に当時のプレートを入れているといい、「前の歌舞伎座の席番はお守り」と語った。

 同作は全国の映画館で4月13日まで1週間限定上映。東劇は20日まで。

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