東大4年・22歳異端の化学者が卒業目前で満期退学 教授らを呆然とさせた決断の背景

化学者で発明家の村木風海さん(22)が3月31日、東京大を満期退学すると発表した。村木さんは地球温暖化を止めるための発明や、人類の火星移住を実現するための研究などを行っている。大学4年生の村木さんはなぜ、このタイミングで退学を決めたのか。本人を直撃した。

東大を満期退学した村木風海さん【写真:ENCOUNT編集部】
東大を満期退学した村木風海さん【写真:ENCOUNT編集部】

村木風海さんインタビュー「ひやっしー」「そらりん計画」などを研究・発明

 化学者で発明家の村木風海さん(22)が3月31日、東京大を満期退学すると発表した。村木さんは地球温暖化を止めるための発明や、人類の火星移住を実現するための研究などを行っている。大学4年生の村木さんはなぜ、このタイミングで退学を決めたのか。本人を直撃した。(取材・文=中村智弘)

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 3月末の取材日に開口一番、村木さんがこう言って笑った。

「今日、同期が卒業式をやってる中、大学に行って退学届けをもらってきました。(教務の人に)3回くらい『休学ではないですか』と聞き返されました。4年生の終わりに退学するなんて信じられない、という様子で、ちょっと面白かったです」

 村木さんが東大を満期退学することに決めたのは、昨年9月。2か月間、悩んだ末の結論だった。決めたらすぐに研究室に行って、教授や一緒に研究する仲間に「(学校を)辞めることになりました。今までお世話になりました」と宣言した。教授らは突然のことにポカンとしていたという。

「辞める一番の理由は、温暖化を止める研究に専念するためです。現在、一般社団法人 炭素回収技術研究機構(CRRA)の代表理事・機構長を務めていますが、大学の研究室が忙しく、真夜中にしかCRRAの仕事ができなかった。そもそも、東大に入ったのも、東大卒という肩書きが欲しかったわけではありません。二酸化炭素から何か作れるという研究を唯一やっていたのが東大の研究室だったんです」

 小学4年生のときから化学者として活動する村木さんは2019年、推薦入試で東大理科一類に入学。東大では1、2年生は一般教養の勉強をしなければならない。「化学の勉強をしたくて入ったのですが、授業は数学や物理ばかり。最初の2年間はウズウズしていた期間でした」。3年生になって、ようやく専門の勉強が始まったが、基本は座学が中心。村木さんが本当にやりかったことができるようになったのは、研究室に入った4年生のときだった。

「最高でしたね。最新の装置を触れることができたんです。研究室に入って最初の2週間は、先輩から実験の仕方や操作の仕方をみっちりたたきこまれる地獄のような期間なのですが、僕にとっては夢のような期間でした。大学4年間で一番テンション高くやれた。ただ、夏休み前までに全ての装置のやり方が分かった。そして、ハタと気付いたんです。東大に来た意味は全て達成したと」

 9月に退学を決めた後は、CRRAの仕事に専念。3月31日まで東大に在籍したのは、学士号の学位をとるために、大学に4年間在籍する必要があったからだという。4年間の在籍に加え、124以上の単位を取得し、論文を書き、筆記試験と面接を通過すれば、国から大学卒業と同等の権利を与えられる仕組みがあるという。学士を取得し、最終的には、研究者として認められるために、博士論文を出したいという。半年間、我慢して大学を卒業するという選択肢はなかったのか。

「温暖化のタイムリミットまで、あと7年くらいしかありません。大学の研究室は週6がマストで、全く会社での研究時間が取れなかった。半年間も自分の研究所での研究を停滞させてしまったら、温暖化を止めることはできません。自分の社会的体裁を気にして、7年のリミットのうち半年を無駄にするのは温暖化に携わる化学者としてありえないと思いました。そこで、思い切って研究室を辞めてから会社の経営基盤を安定させることができましたし、研究員を増やすこともできた。温暖化を止めるためには世界中の人の意識を変えないといけない。海外との交渉もうまくいき初めています」

 村木さんがやりたいことは、地球を温暖化から守り、第2の故郷として火星を開拓すること。「人類を救うためだったら、どんな手段でも取るし、王道と言われるレールから外れてもいいと思っています」。異端の22歳が“自分の道”を突き進んでいる。

□村木風海(むらき・かずみ)2000年8月18日、山梨県出身。日本の化学者、発明家、冒険家、社会起業家。一般社団法人炭素回収技術研究機構(CRRA)代表理事・機構長。10年、小学4年生の時に化学者の道へ。17年、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)異能vationプロジェクト「破壊的な挑戦部門」に採択され、CRRAを創設して機構長に就任。18年、大村智自然科学賞。19年、研究実績により東京大学推薦入試で理科一類に合格。同年、『世界を変える30歳未満の日本人30人』としてForbes JAPAN 30 UNDER 30 2019 サイエンス部門受賞。21年、内閣府ムーンショットアンバサダーに就任。同年12月、『今年の100人』としてForbes JAPAN 100に選出される。代表的な研究・発明に「ひやっしー」「そらりん計画」「成層圏探査機もくもく計画」がある。

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