ベビーフェイスで人気博した山口リエは2児の母 現在はフラダンスの先生に「人生1度きり、まだまだ挑戦」

ベビーフェイスのアイドルとして1990年代に人気だった山口リエさんは、フラダンスの先生になっていた。10代はCM、ドラマでテレビ出演を重ね、20代で舞台も経験した。だが、27歳で芸能界を引退。あれから18年、子育てで忙しい中、趣味で始めたフラダンスがセカンドキャリアになった。芸能界にいた頃は悩みも多かったが、今は「キラキラと輝く思い出ばかり」と言える。45歳になった山口さんの半生に迫った。

今年20年ぶりにステージで歌を披露した山口リエさん【写真:ENCOUNT編集部】
今年20年ぶりにステージで歌を披露した山口リエさん【写真:ENCOUNT編集部】

豊川悦司、武田真治出演のドラマ『NIGHT HEAD』で女優デビュー

 ベビーフェイスのアイドルとして1990年代に人気だった山口リエさんは、フラダンスの先生になっていた。10代はCM、ドラマでテレビ出演を重ね、20代で舞台も経験した。だが、27歳で芸能界を引退。あれから18年、子育てで忙しい中、趣味で始めたフラダンスがセカンドキャリアになった。芸能界にいた頃は悩みも多かったが、今は「キラキラと輝く思い出ばかり」と言える。45歳になった山口さんの半生に迫った。(取材、文=福嶋剛)

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 山口さんは今年1月、元CoCoの宮前真樹さんの記念イベントにゲスト出演した。約20年ぶりにステージに立ち、歌も披露した。当時と変わらない姿に驚いたファンも多かった。

「去年、(宮前)真樹さんに『1曲歌ってほしい』と声をかけていただき、こんなチャンスは2度とないと思って、デビュー曲の『ピュア』を歌わせていただきました。家族には『ママはこれから歌の練習を始めるからね』と言って、約半年は真剣に自宅で練習しましたから(笑)。引退して以来のステージだったので、心臓が飛び出るくらい緊張しましたけど舞台に立った瞬間、あの頃に戻りました」

 人気アイドルとして駆け抜けた90年代。文字通り、目まぐるしい日々だったという。

「キラキラと輝いていましたね。今日はお芝居をやって、明日は歌って、次の日はバラエティー番組に出演して、合間に雑誌の取材を受けて……とか。そんな生活が楽しかったですし、大変なこともいっぱいありましたけど、いい思い出ばかりです」

 芸能界入りのきっかけは、子役時代に大手プロダクションに声をかけられたことだった。

「両親が歌手のマドンナが大好きで、私もよく一緒にテレビを見ていました。小学3年で『将来の夢はマドンナになる』と書いたのを覚えています(笑)。その後、小さな子役事務所に入ってエキストラ役でCMに出演したとき、芸映プロダクションの方がそれを見ていて、中学1年で芸能界に入りました」

 デビュー作となった「キャンパスリップ」(ロート製薬)のCMでブレーク。その後、「アイスの実」(江崎グリコ)や「カップスター」(サンヨー食品)といった旬なタレントが出演するCM出演を重ねた。

「まったく特技のない私はただただラッキーでした。でも、CM撮影はいくら時間がかかっても大好きで、いつも完成したCMをテレビで見るのが楽しみでした」

 役者デビューとなった92年のフジテレビ系連続ドラマ『NIGHT HEAD』では、主演の豊川悦司、武田真治に次いで鍵となる謎の少女・双海翔子を演じた。

「忘れもしない中学3年のときです。斬新なドラマでしたよね。視聴率もすごく良かったことを覚えています。私は超能力を持った少女というちょっと怖い役でしたが、初めてのお芝居だったので最初はすごく不安でした。でも、私はあまり細かい演技指導がない役柄だったので助かりました。豊川さんと武田さんは、当時から大人気だったので私にとってはお兄さんというより、スターという印象でした。撮影中は、いつもご一緒させていただきましたが、俳優さんがロケバスの中で堂々と着替えることにビックリしました。当時はまだ田舎の中学生だったので、豊川さんが着替えを始めたときはドキドキしました(笑)。武田さんには同級生から預かったファンレターを渡したりして、子どもでしたね」

 翌93年には、念願の歌手デビューを果たした。

「ある日突然、『これから歌ってもらいます』と言われて、いきなり歌のレッスンが始まりました。そして半年後、岡山にあるデパートの特設ステージで緊張しながらデビュー曲を初披露しました。私は歌が上手ではなかったので全国キャンペーンも不安でしたが、ファンの皆さんの応援が励みになりましたし、『お客さんの前で歌えるって幸せだな』と勇気をもらいました」

 だが、当時はアイドル冬の時代。テレビで歌う機会は少なかった。

「歌番組がどんどん減っていき、バラエティー番組でも歌のコーナーが次々になくなり、情報番組のリポーターやクイズ番組の解答者をやらせていただくことも多くなりました。事務所のスタッフは、そういう時代だからこそ『タレントしての可能性を広げられるように』といろんなお仕事を入れてくださったんです。10代の頃は必死に1つ1つのお仕事に向き合っていましたが、20代に入って、『本当に自分に合うものって何だろう』と悩むことが多くなりました」

 20代では、ドラマだけでなく、ミュージカル、舞台出演の機会も多くなり、俳優活動の幅も広がった。だが、2005年に芸能界を引退した。ファンも驚く突然のことだった。

「その前にマネジャーの知り合いだった事務所に移籍して、事務所の先輩だった川島なお美さんに、演技だけでなく礼儀作法も厳しくご指導いただきました。『女優として心機一転、頑張りましょう』となお美さんに『リエラ』という名前をいただき、新たなスタートを切ったのですが、お仕事をやればやるほど自分の演技に自信が持てなくなり、役者を続けるのが辛くなってしまいました。それで『もう区切りをつけよう』と決意し、2005年に引退しました。未練は全くありませんでした。

 そして、すぐに5年連続で主役をやらせていただいたミュージカル『アルプスの少女ハイジ』の劇団関係者に掛け合い、事務スタッフとして雇っていただきました。配役のシフト表の作成や電話の応対、衣装のクリーニングまで裏方の仕事はすべてやりました。私が働いている姿を見かけた芸能関係者からは『リエちゃん、何やってるの』なんて言われました(笑)。実家から東京まで毎日、電車通勤しました。疲れて家に帰ると母が『楽しそうだね』と言ってくれて、ようやく肩の荷が下りました」

4月からオンラインでフラダンス教室を開く【写真:ENCOUNT編集部】
4月からオンラインでフラダンス教室を開く【写真:ENCOUNT編集部】

2人の娘はタレント時代の母親に興味なし

 引退から3年後の08年に結婚。夫になったのは小、中学校の同級生だった。

「実は主人とは学校ではほとんど話をした記憶がなくて、私が覚えているのは中学の卒業式に『サインして』と言われたくらいです(笑)。劇団で働いていたとき、仲の良い友達に誘われて地元の飲み会で再会しました。仕事は結婚したタイミングで辞めました。

 娘たちはこの春から中学2年と小学6年になるので、長女は私が芸能界に入った年齢になりましたね。そういえば、この前、アイドル時代のお宝(写真)が押し入れから出てきて、娘たちに見せたら『へぇ~』のひと言。あまり私の過去には興味がないみたいです(笑)。今はダンスを習ったり、一緒にカラオケに行ったり、塾に連れて行ったり、まだまだ忙しいですね」

 特技のフラダンスは10年前から始めた。きっかけは、引っ越しだったという。

「引っ越して、ごあいさつに行ったご近所さんがフラダンスの先生をやっていて、『子育ての息抜きにどうですか』って誘っていただいたんです。試しにやってみると、いつの間にか夢中になっていました。幼稚園のお子さんから80代のおばあちゃんまで、みんなが笑顔で一緒のステージで楽しめる踊りって素敵だなと思って」

 趣味で始めたフラダンス。楽しみながらスキルを高め、教室を開くまでになった。

「フラを初めて3年目に先生から『自分のサークルを持ってやっていった方がいいよ』と勧めていただき、地元でフラダンスサークルを始めました。キッズ教室を開いたり、小学校で教えたり、イベントに出演したり、いろいろとやりました。コロナ禍になってみんなで集まることが難しくなり、去年の春に6年間続けてきた教室を閉じてしまいましたが、フラダンスは続けていきたいので、オンライン教室を4月から始めることにしました。自宅でもできますし、日本中どこにいても一緒に踊れるので、新しい出会いもあると思います。みんなで楽しい時間を過ごしたいですね。人生1度きりですし、まだまだいろんなことに挑戦していきたいです」

 引退から18年。宮前さんのイベントに出演した様に、今後も芸能関係の仕事依頼が届く可能性はある。

「今の私ができる範囲でしたらやりたいと思っています。歌はいつでもお受けします(笑)。そのときは、きっとまた家族を部屋に閉じ込めて必死に歌の練習をします」

 最後に「芸能界にいた頃の自分に言葉を掛けるとしたら」と問うと、山口さんは少し考えて言った。

「そうですね……。頑張っていましたね。体力的にも精神的にも壊れちゃいそうになりながら、一生懸命立ち続けていました。褒めてあげたいですが、もしかしたら、『もうちょっと頑張れたんじゃないのかな?』って。そんな言葉もかけてしまうかもしれません」

 今も輝きのある45歳。フラダンスをきっかけにエンターテインメントの魂は、よみがえってきたように感じる。山口さんの今後が楽しみになってきた。

□山口リエ(やまぐち・りえ)1977年8月5日、東京都生まれ。91年、CMでデビュー。92年、フジテレビ系ドラマ『NIGHT HEAD』で俳優活動を開始。93年、シングル『ピュア』で歌手デビュー。ベビーフェイスの少女系アイドルとしてCM、ドラマに多数出演。98年からは、5年連続でミュージカル『アルプスの少女ハイジ』の主役を務めた。2005年、芸能界を引退。一般企業に就職。08年に結婚。09年に長女、11年に次女を出産。13年からフラダンスを始め、16年にフラダンスサークルを主催。今年4月から、フラダンスのオンラインレッスンを開始。

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