低年齢化と高身長化が加速するK-POPグループ 日本人メンバーの増加は「礼儀」も評価

K-POPグループに所属する日本人メンバーが存在感を増している。昨年の大みそかに放送されたNHK『紅白歌合戦』に出場した3組のK-POPグループではTWICEのミナ、サナ、モモのほか、LE SSERAFIM(ル セラフィム)のサクラこと宮脇咲良とカズハ、IVE(アイヴ)のレイが注目を集めた。他にもインスタグラムのフォロワー数900万超のNCT127・YUTA、BTSの弟グループと呼ばれるENHYPEN(エンハイプン)のニキ、オーディション番組『Girls Planet 999』から生まれたkep1er(ケプラー)のヒカルとマシロが活躍している。韓国の芸能事務所は日本の人材に何を求めているのか。TFN(旧名T1419)のキオ、PRIKILのリンコを輩出した東京・新大久保のK-POP専門ダンススタジオ・KPDS(K-POP DANCE STUDIO)責任者の松岡さんに聞いた。

グローバルアイドルを目指してレッスンに打ち込むKPDSの練習生【写真:ENCOUNT編集部】
グローバルアイドルを目指してレッスンに打ち込むKPDSの練習生【写真:ENCOUNT編集部】

スカウト担当が来日し練習生候補を選抜「忍耐強い生徒、頑張れる誠実な生徒」

 K-POPグループに所属する日本人メンバーが存在感を増している。昨年の大みそかに放送されたNHK『紅白歌合戦』に出場した3組のK-POPグループではTWICEのミナ、サナ、モモのほか、LE SSERAFIM(ル セラフィム)のサクラこと宮脇咲良とカズハ、IVE(アイヴ)のレイが注目を集めた。他にもインスタグラムのフォロワー数900万超のNCT127・YUTA、BTSの弟グループと呼ばれるENHYPEN(エンハイプン)のニキ、オーディション番組『Girls Planet 999』から生まれたkep1er(ケプラー)のヒカルとマシロが活躍している。韓国の芸能事務所は日本の人材に何を求めているのか。TFN(旧名T1419)のキオ、PRIKILのリンコを輩出した東京・新大久保のK-POP専門ダンススタジオ・KPDS(K-POP DANCE STUDIO)責任者の松岡さんに聞いた。(取材・文=鄭孝俊)

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 今年で開校11年目を迎えたKPDS。JR新大久保駅から徒歩1分に位置するビル5階にある同ダンススタジオでは、10代の女性たちが激しいダンスの振り付けに集中していた。韓国の大手芸能事務所の対面オーディションを控えた彼女らは、同事務所の練習生選抜、その後のデビューを目指している。コロナ禍中からSMエンターテインメント、JYPエンターテインメント、YGエンターテインメント、HYBEなどの大手をはじめとする韓国の芸能事務所は日本の人材に着目しており、オンラインや動画によってオーディションを行ってきた。だが、最近は事務所スタッフが来日し、直接会うスタイルの対面オーディションに熱心だという。

「韓国は市場が狭いこともあって日本や東南アジア、北南米などの音楽市場に進出するため、日本語や英語が話せるメンバー、タイやオーストラリア出身のメンバーを加えるなど、多国籍化を進めています。とりわけ、地理的に近い日本市場を各事務所は重視しており、将来のアイドル候補となる人材を求めて当校に接触してくる韓国の新興芸能事務所も増えています。お付き合いがあるのは計30社くらいでしょうか。私も1月に韓国に行ってソウルの各芸能事務所を回ってきました」

 K-POPグループに日本人メンバーがいると、日本のファンとのコミュニケーションも円滑にできるうえ、日本人としてもグループに対して親しみがわく。ただ、日本人だからといって実力が伴わないと、当然ながらデビューは厳しくなる。韓国に生徒を送り込むうえでKPDSが重視していることは何か。

「意外に思われるかもしれませんが、まず、指導しているのは“礼儀”です。教室に入るときのあいさつ、トレーナーの先生への感謝の言葉などを大きな声で発するよう徹底して教えています。実際に練習生試験に合格して韓国に渡った生徒に対して、韓国の事務所スタッフは『礼儀がよくできていますね』と言って期待してくれますし、評判もよくなります。最初は人見知りだった生徒もだんだん積極的になってきますし、これは他のK-POPスタジオにはない当校の特徴です」

 ただし、礼儀やあいさつはあくまでも基本。K-POPアイドルとして期待される大きな条件とは何か。

「一般的な傾向として韓国の事務所は男子より女子のスカウトに熱心です。男子の場合は兵役という問題がありますが、女子は芸能活動を中断することなくアイドルを続けられます。ただ、女子は以前に比べて低年齢化が進んでいます。世界的に人気となっているNewJeansの最年少メンバー、ヘインは14歳です。デビュー前に練習生期間があるので小学校6年くらいから、最低でも中学2年までにオーディションに合格する必要があるわけです。オーディションでは各社とも3年後を見据えていますね。だから、中学3年以上では即戦力でないとなかなか選ばれない。当校でも最近は小学5年や6年の子が増えました」

 さらに、もう1つ条件が加わったという。それは高身長化だ。

「ミュージックビデオでダンスをダイナミックに見せるためには、体格や手足の長さが重視されます。低年齢化と高身長化、これに全体の雰囲気や表情、将来性などが加味されます。実際に韓国で練習生になると問題も起こります。練習についていけず、辞めてしまう生徒も中にはいるわけです。韓国の事務所からは『とにかく忍耐強い生徒、頑張れる誠実な生徒を送ってください』と言われます。当校はマインドも重視しているので、ダンスの発表会で競争心を持ってもらえるようなカリキュラムを作っています」

 KPDSの後を追うかのように東京や関西ではK-POP系ダンススクールが次々と開校し、その数は2年ほど前の2~3倍近くに膨れ上がっているという。K-POP第4世代グループの来日公演も続々と行われており、勢いは増す一方だ。実際に韓国で3年間の勤務経験がある松岡さんは、K-POPの今後についてこう語る。

「世界的な音楽ジャンルとしてさらにポピュラー化しそうです。日本では飽和状態に見えるかもしれませんが、例えば本校出身のキオが所属するTFNは南米で大変な人気となっています。K-POPの市場は日本だけではありません。私たちの知らない国や地域でK-POPが聴かれているという現実を見ると、まだまだファンは世界中で増えていくのではないでしょうか」

 夢は世界へ――。真似事のカバーダンスではなく、プロのK-POPアイドルを目指す日本の若者が今後も増えていきそうだ。

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