21歳で扇状的ダンスが魅力のバーレスクの道へ 世界一の日本人女性「脱ぐことは表現の手段」

身にまとった衣装を一枚一枚脱ぎ捨てていくという扇情的な演出が特徴のバーレスクダンス。日本ではあまり知られていないその魅力を広めようと、奮闘する一人の女性ダンサーがいる。世界大会で世界一に輝いた経験もある33歳の日本人ダンサー、リタ・ゴールディーさんにバーレスクとの出合いとその魅力を聞いた。

世界一に輝いた経験もあるバーレスクダンサーのリタ・ゴールディー【写真:本人提供】
世界一に輝いた経験もあるバーレスクダンサーのリタ・ゴールディー【写真:本人提供】

身にまとった衣装を一枚一枚脱ぎ捨てていくという扇情的な演出が特徴のダンス

 身にまとった衣装を一枚一枚脱ぎ捨てていくという扇情的な演出が特徴のバーレスクダンス。日本ではあまり知られていないその魅力を広めようと、奮闘する一人の女性ダンサーがいる。世界大会で世界一に輝いた経験もある33歳の日本人ダンサー、リタ・ゴールディーさんにバーレスクとの出合いとその魅力を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

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「バーレスク」とは、16世紀にヨーロッパで発祥したと言われる社会風刺(パロディー)を含んだ文学・戯曲・音楽の1ジャンルのこと。長い歴史の中で時代に合わせてより華やかに、より人々を魅了する形態へと変化していき、1930年代のアメリカで「衣装を焦らしながら脱いで魅せる」というエンターテインメントとしてのバーレスクダンスが確立した。

 その後、さらに露出度を高めた「ストリップ」の登場とともに徐々に下火となるも、90年代に入り再ブームに。2009年にはハリウッド映画「Burlesque(バーレスク)」が公開され、現在では伝統的な「焦らし脱ぎ」の要素を備えたものと、セクシーな踊りのみを見せるものの2つの形態が共存している。ちなみに前者であってもストリップとは異なり、焦らす過程のテクニックを見せるもので、最終的に極小の衣装となることはあっても、実際に乳房や陰部まで露出することはない。

 リタさんがバーレスクと出合ったのは、アクセサリー制作などを行う専門学校に通っていた20歳のとき。作品のテーマとして、ロックンロール、カントリー、ジャズといった古い年代の音楽やファッションを調べるなかで、50年代のアメリカのピンナップガールと関わりの深かったバーレスクの世界観に魅了されたという。

「もともとバンドをやっていたこともあり、人前に立ちたいという思いもあった。現在、日本ではおそらく100人を超えるプロダンサーが活動しているのではないかと思いますが、当時は20人にも満たないほどでした。バーレスク、という言葉を耳にする頻度が増えてきているのに対し、活動している人数が少ないことにも、これから伸びるエンターテイメントであると可能性を感じました」

妊娠中には大きなお腹をさらけ出した姿でのショーも

 21歳の誕生日にステージデビュー。その後ダンサーをしながら公演を行うためのイベントスペースを共同経営、21年9月には独立し歌舞伎町にバー「ファンタスティックラウンジ」をオープンした。コロナ禍の2020年には、オンライン開催された世界大会「ワールド・バーレスク・ゲームス」に作品を送り、一般投票の部で優勝。翌21年に同じくオンライン開催された世界大会「ベスト・オブ・バーレスク」では、一般投票部門、プロフェッショナル部門の2つで世界一に輝いた。現在は第2子を妊娠しており、大きなお腹をさらけ出した姿でのショーも行っている。

「妊娠中のショーは第1子のときにも経験しています。私の仕事はバーレスクダンサーの活動がメインだったため、自分自身がステージに立たないとお金が入ってこない。他の職業に就いている方で、妊娠中も仕事を続けて出産ギリギリになってやっと産休を取るという方もいらっしゃるかと思います。まずはお金を稼がなくてはいけないのと、保育園に入れるためには仕事の実績を作っておかなくてはいけないという事情もありました」

 活動を始めた当初は、有名になりたいからバーレスクという手段を選んだと思われることも多く、「テレビには出ないのか」「芸能活動はしないのか」と聞かれたこともあったというが、自分自身が有名になりたいという気持ちだけでメディアに出ることは望まなかった。

「自分の活躍だけが目的ではなく、バーレスクそのものの普及も必要。競技人口を増やすには趣味で気軽にバーレスクに関わる人が増える必要がありますが、憧れて目指したいと思える圧倒的なプロフェッショナルの存在も必要だと思った。それにはこのジャンルのパフォーマンスで生計を立てていけるというロールモデルを作らければいけないなと。バーを始めたのは、日頃からショーを見る文化がない人たちにも、飲食店ということで気軽に入っていただき雰囲気を味わってもらえるから。まずはお店に来て知ってもらい、興味を持ってくださった方がショーのイベントにも遊びに来ていただけたら理想的です。飲食店として経営基盤は持ちつつ、夢を見せられる時間のある場所でありたいと思っています」

 そこまで語るバーレスクの魅力とは何なのか。

「初めてバーレスクを観る人には肌の露出が多いためセンセーショナルに感じるかもしれませんが、脱ぐことはあくまで要素のひとつで、それが全ての目的ではありません。脱ぐ過程のテクニックや世界観、物語などを見せるメッセージ性の強いダンス。言わば脱ぐことは表現のための1つの手段なんです。もとは社会風刺から始まったこともあり、振り付けによって定義される他のダンスとは違い、ルールが少なく、つねに既存の価値観を壊すような独創性が求められる。ダンスの中に踊り手の人生が垣間見えるところがバーレスクの魅力です。

 だから、ステージを見て『私もやってみたい』という人が驚くほど多いんです。どんなボディーライン、容姿を持っている人であっても、表現したい『自分』を持っている人が堂々と脱いでスポットライトを浴びている。誰かに脱がされてやっている人はこの業界には一人もいません。偏見の目もあるけど、実際は憧れの視線のほうがずっと多い世界。ぜひ一度ステージに足を運んでほしいと思います」

□リタ・ゴールディー(りた・ごーるでぃー) 1989年12月18日、大阪府出身。専門学校在学中の20歳のとき、バーレスクダンスを知り、21歳でショーデビュー。2020年に世界大会「ワールド・バーレスク・ゲームス」の一般投票の部で優勝、21年には別の世界大会「ベストオブバーレスク」の一般投票、プロフェッショナル部門の2つで世界一に。同年より新宿・歌舞伎町でバー「ファンタスティックラウンジ」をオープン。国内でのバーレスクダンスの普及に務める。

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