劇的V字回復に成功…サンシャイン水族館の快進撃が止まらない理由を館長に直撃

猛暑が続いた夏休み、一服の涼を求め水族館へ遊びに行った人も多いだろう。今や水族館大国と呼ばれる日本で、老舗の一つが40年以上の歴史を誇る東京・池袋のサンシャイン水族館だ。2009年に70万人まで減少していた来館者数は11年、17年の2度のリニューアルを経て、17年度には過去最高の197万人を記録するなど人気絶頂を迎えた。ENCOUNTでは、サンシャイン水族館の丸山克志館長を直撃。そこには業界の常識を覆す数々の改革があった。

丸山館長が斬新な改革を実行した
丸山館長が斬新な改革を実行した

「天空のペンギン」が大ヒットし業績が大幅改善

 猛暑が続いた夏休み、一服の涼を求め水族館へ遊びに行った人も多いだろう。今や水族館大国と呼ばれる日本で、老舗の一つが40年以上の歴史を誇る東京・池袋のサンシャイン水族館だ。2009年に70万人まで減少していた来館者数は11年、17年の2度のリニューアルを経て、17年度には過去最高の197万人を記録するなど人気絶頂を迎えた。ENCOUNTでは、サンシャイン水族館の丸山克志館長を直撃。そこには業界の常識を覆す数々の改革があった。

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――V字回復が話題になっています。実際の手ごたえはどうでしょうか?

「V字っていうとかなりのものですけど、確かに経済的価値は前よりも生み出せるようになりました。その結果として、より多くのお客様に入っていただけるようになりました。水族館の価値、魅力をうまく施設として表現できるようになったし、それを伝える宣伝・広報などの手段が、自分たちだけでなく親会社のサンシャインシティを含めて全体としてできるようになりました」

――2018年度の来館者数は出ましたか。

「173万人ですね。アミューズメント施設はオープン・リニューアルの後は来場者数が落ち続ける傾向がありますが、サンシャイン水族館は2017年のリニューアルでピークを達成し、2018年が173万人、2019年以降もこの入館者数を維持、あるいはそれ以上にするよう、継続して努力をしています」

――2度のリニューアルが大成功し、経営状態が改善しました。

「施設としてハード面でとても良いものができて、2回目のリニューアルでさらに良いものになりました。迎え入れる私たちも、お客様にいろいろな魅力を伝えられるようになりましたし、前段階として魅力を外に発信する広報・宣伝その他ともうまく連携できるようになりました。飼育スタッフ、企画担当、宣伝広報担当などそれぞれがバラバラで考えて作り上げるのではなく、皆がいろんな意見を出し合いながら展示だけじゃなく全部を作り上げてきているということが本当に大きいと感じております」

――展示の中で特にうまくいったところは?

「何といっても都会の空を飛んでいるように見えるペンギンの展示『天空のペンギン』ですね。2011年のリニューアルの時、各水槽の展示変更をしていくにあたって3つの決め事があったんです。『日本一』『日本初』が1つ目、『お客様の知的好奇心をくすぐるようなもの』が2つ目、もう1つが『水中感』『水塊』(水の中から見ているような感覚)を感じられるものです。それを最低でも一つ満たすものを、各展示案を作り上げる時の条件として進めました。サンシャイン水族館でしかできないものとか、その特徴を生かしたものを狙った3つの決め事だったと思います」

大人気の「天空のペンギン」
大人気の「天空のペンギン」

外部との衝突に「何言ってんだ!?」

――リニューアルには外部の方も招き、意見を聞きました。

「外部の方として、水族館プロデューサーの中村元さんが入ったことも、とても大きかったです。内部だけで、もしくは関わりのある方だけで検討すると、拡散した意見は出るけれど否定はされない。否定も含めながら、物を言える人を入れたということで、自分たちの視野が広がり、考え方も変えやすくなったと思います」

――以前は外部の方を招聘することはありませんでした。摩擦もあったのではないでしょうか?

「そうですね。熱いタイプの衝突と冷たいタイプの衝突といろいろありました。多少どころじゃないなぁと思います(笑い)。自分たちとしてはこれまでもとても素晴らしい水族館を続けてきた自負がありますし、経験・スキルもあります。そんな中、ある意味、否定的な部分も含めた意見を持つ外部の人間といろんなことを話し合っていく中では『何言ってんだ!?』みたいなところも、人によって差はありますけど、ありましたね」

――その中でどのように着地点を見つけていきましたか?

「より良い新しいものを生み出すという方向だけはみんな一緒でした。自分たちの積み重ねてきたことに対して意見を言われるというのは、なんとなく反論もあるけれども、自分たちのこれまでの経験の範疇の中でしか考えられていなかったという気づきにもなる。突拍子のない案が出ても、まず、『そんなの無理だ』という否定から入らずに、そこに展示する生き物のすばらしさ、魅力を伝えるためにはどうやったらいいかを考えました。そしてサンシャイン水族館がビルの屋上にあり耐荷重など様々な不利な条件下にある中で、どうしたらそれが実現できるかというのを改めて考えていきました。それは何のためかと言ったら、新しい水族館で新しい価値を生み出したいと思えたからだと思います。だから、反発は熱い、冷たい、いろいろとありましたけど、そういう中で、いろいろな思いを抱えながらも、どうやったらより良い水族館を実現できるか、一緒に考えていったみんなが素晴らしいと思います。途中で本当に嫌になっちゃった人もいますけど(笑い)」

――バブル崩壊後、来館者数が落ち込みました。低迷期を振り返ると?

「細かなリニューアルは重ねていたんですね。一時的に少しずつ入館者数は上がったりしながらも、全体の傾向としては右肩下がりでした。その背景には、競合の水族館やアミューズメント施設がいろいろできてきたことが挙げられます。横浜・八景島シーパラダイスさんやマクセル アクアパーク品川さん、また水族館だけに限らず、いろいろな娯楽も増えていった中で、本当の意味での“変わった感”がないまま、継続していくのは困難になっていった結果が来館者数70万人でした」

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