藤巻亮太「レミオロメンを超えなきゃ」 プレッシャーと闘い続けた日々、35歳直前の転機

「今が一番素直な感覚で音楽と向き合えている気がします」――。ソロアーティストとして10周年を迎えた藤巻亮太が、約5年ぶりにオリジナルアルバム『Sunshine』を発表した。全編にわたり、「太陽の光」と「大地に生きる大切さ」が描かれている。ここまで順調な歩みにも見えるが、本人は「決して平たんな道のりではなかった」と言った。時代を築いたレミオロメンという大きな存在との闘い、気持ちの変遷も明かした。

約5年ぶりにオリジナルアルバム『Sunshine』を発表した藤巻亮太【写真:冨田味我】
約5年ぶりにオリジナルアルバム『Sunshine』を発表した藤巻亮太【写真:冨田味我】

“自分のため”だけでは頑張りきれないと分かった

「今が一番素直な感覚で音楽と向き合えている気がします」――。ソロアーティストとして10周年を迎えた藤巻亮太が、約5年ぶりにオリジナルアルバム『Sunshine』を発表した。全編にわたり、「太陽の光」と「大地に生きる大切さ」が描かれている。ここまで順調な歩みにも見えるが、本人は「決して平たんな道のりではなかった」と言った。時代を築いたレミオロメンという大きな存在との闘い、気持ちの変遷も明かした。(取材・文=福嶋剛)

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――ソロ活動10年。どんな歩みだったでしょうか。

「僕は10代の頃から現在まで、変わることなく今の感性を大切にしながら音楽を作ってきました。レミオロメンで駆け抜けた20代はメンバーのため、バンドのために良いものを作ろうと思いながらでした。そして、ソロになった30代は、『自分のためにやらなきゃいけない』と思ってやってきました。ところが、やっていくうちに『自分のためだけでは頑張りきれない』と気付き、その“心の持ちよう”をどこに持っていったら良いのか悩みました」

――その理由は。

「やっぱり、10年以上やってきたレミオロメンを超えなきゃいけないというプレッシャーを背負ってしまい、ソロとして始めたばかりの頃にレミオロメンと藤巻亮太の間に一線を引いていたんです。いつも心の中で過去と比べながら、この先やっていけるのかという未来への不安ばかりで、『俺は今日っていう日、今という時間を1ミリも生きてないぞ』と思ったんです」

――ソロとして、転機はいつでしたか。

「35歳になる手前でセカンドアルバム『日日是好日』(ひびこれこうにち、2016年)を制作している頃でした。レミオロメンと藤巻亮太の間に線なんてものはなくて、むしろ、『地続きでつながっているんだ』と気付いて、すごく気持ちが楽になりました。『もう、過去や未来について悩むのをやめて、今日という日を大切にして生きよう』と思った瞬間、ふたたびみずみずしい気持ちで曲を作れるようになりました。もう1つの転機は、翌2017年にリリースしたサードアルバム『北極星』のときでした」

――ターニングポイントがこれまでのアルバムに反映されているんですね。

「言われてみればそうかもしれませんね。この時期は地元の山梨県に戻って曲作りを行いました。レミオロメンの頃から現在まで僕の歌には地元の風土が編み込まれていて、『藤巻亮太は、幼いころから故郷の恩恵を受けてここで育まれてきたんだ』という自分の原点を再発見しました。それで、“いつまでも変わらないもの”という意味を込めて『北極星』というタイトルを付けたんです。そして、今度は『音楽で山梨に恩返しをしたい』と思い、僕が大好きでリスペクトするアーティストを地元に招いて音楽フェスを開くことを決めたんです」

――藤巻さん主催による地元山梨での音楽フェス『Mt.FUJIMAKI』ですね。

「2018年にスタートしました。恐れずにいろんなところに飛び込んだことでたくさんの出会いが生まれて、出会いの数だけ人の価値観に触れました。今まで“この人と合わないから避ける”とか、“自分を守るために殻に閉じこもる”といった頭でっかちだった自分を壊してくれたんです。すると『音楽って楽しいな』とか『曲が生まれるってすてきだな』と、音楽を始めた頃のピュアな思いを取り戻すことができて、『今なら新鮮な気持ちで曲を書ける』と思いました」

――それが今回のアルバムにつながったんですね。

「自分の価値観にないものに出会った感動や驚き、学びといった感情を揺さぶられた瞬間、その振れ幅が大きければ大きいほど面白い曲が書けると思っていて、僕が曲を作る上で大切にしていることなんです。それは音楽を始めた頃の純粋な気持ちにも似ていて、1曲が生まれたときの喜びや僕のバンドメンバーたちとセッションして新しいサウンドに生まれ変わったときのワクワクする気持ち、そして、ドキドキしながら演奏してお客さんが盛り上がったときの感動。今回のアルバムは、今まで以上にそういった思いを素直に曲にできました」

――たっぷりと時間をかけて制作されたそうですね。

「歌詞はかなり時間をかけました。こういった時代をともに生きる1人として、希望を持って音楽を作っていきたという思いがあって今回の曲もこの時代の空気感とか言語化されていないものを自分なりに感じながら言葉を編んでいきました。一方でサウンド面は僕の尊敬するミュージシャンたちとセッションしながら作っていくのが本当に面白くて」

――藤巻さんにとって人との出会いが原動力になっているところは。

「あると思います。自分の心を曇らせていたのは自分自身であり、人との出会いが新たな価値観に触れるきっかけになり、自分の生き方にもまたみずみずしさが反映される。そんな瞬間を味わったことで今回のアルバムタイトルは『Sunshine』と付けました」

――話は変わりますが、藤巻さんの最近のマイブームは。

「筋トレですね。40代に入ってちょっと姿勢が悪くなってきたので意識するようになりました。でもトレーニングといっても軽くですが。『藤巻亮太がバッキバキの筋肉で……』とか自分でも想像できませんから(笑)」

――藤巻さんは読書好きとしても知られていますが、最近読んだ本は。

「沢木耕太郎さんの『天路の旅人』(22年、新潮社刊)です。旅の本質というか旅を通してのさまざまな出会いが描かれていて出会いと旅というのは似ているんだなって。読み終わったら旅をしたくなりました(笑)」

□藤巻亮太(ふじまきりょうた)1980年1月12日、山梨・笛吹市出身。2003年、レミオロメンの一員としてメジャーデビューし、『3月9日』『粉雪』など数々のヒット曲を世に送り出す。12年、ソロ活動を開始。1stアルバム『オオカミ青年』を発表以降も2ndアルバム『日日是好日』、3rdアルバム『北極星』、レミオロメン時代の曲をセルフカバーしたアルバム『RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010』をリリース。18年からは自身が主催する野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI」を地元・山梨で開催している。23年1月、ソロ活動10周年を彩る4thアルバム『Sunshine』をリリース。2月26日、ソロ活動10周年のアニバーサリーを締めくくる新曲『朝焼けの向こう』を配信。

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