港区の池で見つかった巨大ナマズ、移送当日に死亡確認 関係者絶句…外来種の問題提起に

東京・港区にある有栖川宮記念公園の池で2月に行われた生物調査の際に、体長144センチの特定外来生物・ヨーロッパオオナマズが見つかった。外来種問題を啓発する京都市内の専門施設に引き取られる予定だった9日朝、死んでいるのが確認された。同区が1か月以上、公園内の施設で懸命の養生を続けてきたが、悲しい結果となり、関係者は一様に肩を落とした。区の担当者は「きょうに限ってこういった形になり、残念です。このような状況を含めて、外来種問題を考えるきっかけになれば」と言葉を絞り出した。

有栖川宮記念公園の池で採取されたヨーロッパオオナマズ【写真:東京都港区提供】
有栖川宮記念公園の池で採取されたヨーロッパオオナマズ【写真:東京都港区提供】

1か月以上の懸命の保護「この前まで元気だったのですが…」と落胆 本来は日本にいないはずの特定外来生物・ヨーロッパオオナマズ

 東京・港区にある有栖川宮記念公園の池で2月に行われた生物調査の際に、体長144センチの特定外来生物・ヨーロッパオオナマズが見つかった。外来種問題を啓発する京都市内の専門施設に引き取られる予定だった9日朝、死んでいるのが確認された。同区が1か月以上、公園内の施設で懸命の養生を続けてきたが、悲しい結果となり、関係者は一様に肩を落とした。区の担当者は「きょうに限ってこういった形になり、残念です。このような状況を含めて、外来種問題を考えるきっかけになれば」と言葉を絞り出した。

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 引き取り当日の朝、保護用プールのシートをめくると、力なく浮いた巨大ナマズの姿が。区によると、今月4、5日の土日は活発な様子が見られ、前日8日は浮いている状態は確認されなかったという。この日は、引き取り先の「花園教会水族館」が、車両にタンク設備を携えて京都から都内にある公園まで来ていた。「いよいよというところで残念」「この前まで元気だったのですが…」。作業のため集まった関係者からは、落胆の声が漏れた。

 今回、公園内の池のしゅんせつ工事に伴い、1月20日、2月4日の2日間にわたって行われた生物調査。32種類、計約5000匹の生き物が捕獲された。最も採取されたのは外来種のブルーギルで、2608匹。一方で、在来種のモツゴやクロダハゼが予想以上に多く確認できたという。この中で、最大の注目を集めたのが、2月4日に採取された巨大ナマズだった。区によると、採取後は一時期、著しく衰弱しており、生存率はかなり低いと見られていたが、保護用プールに移動後、奇跡的な回復を示した。専門家によるDNA鑑定などを通して、ヨーロッパオオナマズであることが判明した。この池では12年前には存在は確認されていなかった。

 一方で、ヨーロッパオオナマズは外来生物法に定められた「特定外来生物」。区によると、飼養することは原則禁止されているが、学術研究・展示・教育などの目的で行う場合については必要な手続きを経たうえで、可能という。

 区は、生物多様性や環境を考えることを目的とした事業で発見された背景があることから、展示・教育施設に受け渡す方向で調整を進めた。引き取り先は、今年で開館11年を迎え、外来種問題の啓発・教育展示をしている花園教会水族館に決まった。

 発見後の対応について区の担当者は「かなりの巨大魚で大食漢であろうことから、池の生態系への影響が大きすぎるため、まずはこの池からはとにかく移動する必要があると考えました」と明かす。発見された当日は、種類も分からず、とりあえず引き取り先を探すことに。「その時点では、ナマズの種類を特定できる人はいなかったので、特定外来生物であることも分かりませんでした」。その後の調査で特定外来生物のヨーロッパオオナマズであることが分かった。

ヨーロッパオオナマズは懸命の保護により一時復活を遂げていた【写真:東京都港区提供】
ヨーロッパオオナマズは懸命の保護により一時復活を遂げていた【写真:東京都港区提供】

「人間によって池に放されたものと考えています」 特定外来生物のシリアスな現実

 担当者は続けて、「それと同時に、外来生物を数多く引き取り、教育展示している花園教会水族館様から引き取りのお申し出をいただきました。区としても、当日の来園者や報道でご覧になった方から、『なんとか生かしてあげてほしい』等のご意見もいただきましたし、生物多様性を周知啓発することを目的としたイベントで発見された生き物ですので、教育展示に役立てていただくのが一番いいと考え、花園教会水族館様に引き取っていただくことにいたしました」と、経緯を改めて説明した。

 ナマズの保護・養生は専門家の指導を受けながら取り組んだ。保護プールにエアポンプ、ろ過機を設置。水質安定剤を入れ、毎日、ナマズの様子に加え、機械類の動作や水漏れの有無などをチェックしていた。水族館の担当者は「これまで池の泥の中に棲んでいた環境が大きく変わったこともありますし、気温差もあります。生き物なので、こればかりは何とも言えません。難しいです。残念でなりません。私たちとしては、外来種問題の啓発について引き続き取り組んでいきたいです」と語った。

 死骸は冷凍された。今後、東大の研究施設が引き取る予定だという。残念な結末を迎えたが、都心の池に、本来日本にいないはずの巨大ナマズがいたことは、ペットを捨てる行為や外来種の問題提起につながると言える。

 ナマズはどこからやってきたのか。区の担当者は「日本で自然に生息している生物ではないため、人間によって池に放されたものと考えています」とし、もともとは飼育されていたとの見方を示す。

「推測ではありますが、2016年に特定外来生物に指定されるまでは、ペットショップ等で販売されていたそうですので、そういったところで購入された個体が遺棄された結果なのではないかと考えています。公園管理者が『池に魚を放さないでください』と看板を立てているのですが、残念ながら今回調査でも、キンギョやカメなど、ペットの遺棄と考えられる個体が散見されました」と打ち明ける。浮き彫りとなった外来種の根深い問題。1匹のナマズから考えさせられることは、数多くありそうだ。

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