死者ゼロ&新規感染者なしで外出禁止解除のベトナム、コロナ封じ込めのウラに「昔の日本のような人情」

全世界で300万人以上の感染者と20万人を越す死者を記録している新型コロナウイルス。感染拡大が続く中、感染者270人、死者ゼロという衝撃的な抑え込みに成功したのがベトナムだ。厳格なロックダウン政策に成功し、すでにほぼ全域で経済活動を再開させた人口9600万人の同国。どのようにして、コロナ禍をコントロールできたのか。在留邦人は感染拡大を防いだ市民の一体感に注目。「昔の日本のような人情」と振り返っている。

ハノイ市内ではバイク渋滞が復活【写真提供:A-Life ダンススタジオ】
ハノイ市内ではバイク渋滞が復活【写真提供:A-Life ダンススタジオ】

ハノイ市内で日系ダンススタジオを運営する根本優樹マネジャーに聞く

 全世界で300万人以上の感染者と20万人を越す死者を記録している新型コロナウイルス。感染拡大が続く中、感染者270人、死者ゼロという衝撃的な抑え込みに成功したのがベトナムだ。厳格なロックダウン政策に成功し、すでにほぼ全域で経済活動を再開させた人口9600万人の同国。どのようにして、コロナ禍をコントロールできたのか。在留邦人は感染拡大を防いだ市民の一体感に注目。「昔の日本のような人情」と振り返っている。

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 コロナ禍から4月1日からロックダウンの続いていたベトナム。新規感染者ゼロの日が続いたため、23日にほぼ全域で解除された。

「ベトナムはひとまずコロナとの戦いに勝ったようです。23日にロックダウンが解除されました。現時点ですが、死者ゼロに抑えたことは本当に凄いと思います。新規感染者が出た時などは、町中に消毒薬の匂いが充満していたのに、今はありません。ビザの更新に役所に行きましたが、すごい長蛇の列ができていました。バイクの大渋滞も戻ってきましたし、日常が戻ってきましたね」

 こう語るのは、ハノイ市内で日系ダンススタジオを運営する「A-Life ダンススクール」の根本優樹マネジャーだ。神奈川県横浜市出身の根本さんは東京・自由が丘などで運営されている「アンジェロ・ダンススタジオ」でダンス指導協力を行う傍ら、モスクワ、パリなど海外でパフォーマンスを続け、国際大会でも優勝。約3年前にハノイに拠点を移した。

ベトナムに在住する根本優樹さん
ベトナムに在住する根本優樹さん

SARSと鳥インフルエンザを経験し、国民全体が高い意識

「感染者の数が多かったハノイはコロナの危険度最高ランクに指定されていました。その影響で、一部の事業はまだ営業再開を停止されています。ダンススクールについても本格稼働はまだですが、今日(27日)親御さんのリクエストでマンションの屋上で3人の子供に限定してレッスンをしました。5人以上の集団になると公安にまだ注意を受けてしまいます。『全力で子供にカラダを動かせてあげたい。どうにかならないですか』と親御さんは話されていました。やはりロックダウンの日々のストレスは大変だったようです。子供たちの笑顔が見ることができて本当に良かった」(根本氏)

 密状態を作らないために、屋外で少人数でのレッスンを行ったと語ってくれた根本氏。ベトナム政府では使用済みマスクのポイ捨てに月収分の700万ドン(約3万2000円)の罰金を課すなど、コロナ対策の厳格な罰則を設けたが、市民の意識も高かったようだ。

「SARSと鳥インフルエンザの悪夢を経験していたので、市民もルールを守りました。隔離生活の中でも一体感はあったと思います」と根本氏。世界に先駆けてコロナを封じ込めた理由の1つに、人情があるという。

「1か月も仕事に出られないと、普通経済的に心配になるじゃないですか。でも、みんな慌てない。自分勝手な行動に出る人は少なかったと思います。まず、ベトナムは誰かが助けるシステムができている。お金を貸し合う風習もあります。余裕のある人は、大変だろ、うちに泊まっていけよ、と苦しんでいる人に声をかけます。人情がすごくある。うちのマンションの大家さんも『コロナで大変でしょ。次の月の家賃は3割引きでいいよ』と頼む前から言ってくれました。ロックダウン前の食堂でも、『今は大変だから頑張ろう』と大盛りにしてくれたり…すごく温かい。昔の日本のような感じでしょうね」

日常を取り戻しつつあるベトナム【写真提供:A-Life ダンススタジオ】
日常を取り戻しつつあるベトナム【写真提供:A-Life ダンススタジオ】

物資などの買い占めなく、“助け合い”の精神を発揮

 自宅待機が余儀無くされる日々で、経済的な不安を抱く市民は助け合いの精神を発揮。独善的な行動に出る人は少なかったという。そこが感染拡大を防いだ要因だという。

「スーパーから食料がなくなる。水やトイレットペーパーがなくなることもない。買い占めとかもほとんどない。マスクは一時期消えましたが、政府がテコ入れしてから、ガーゼのマスク、普通のマスクと段階的に市場に戻ってきました」(根本氏)

 どうやら、物資の買い占めなどの行為は少なかったようだ。そして、全国的に新型コロナウイルスの新規感染者ゼロの日を数日間連続で達成することに成功したという。

「ハノイは以前から大気汚染が社会問題になっていました。ロックダウンの影響で珍しく太陽が見える日が続いていたのですが、もう見えません(笑)。バイクが走り出したので、一気に空気が悪くなりました」

 世界的にステイホームが続く中、バイクの渋滞とともに日常を取り戻したベトナム。根本さんのダンススクールも今週末に完全に再開される見込みだという。

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