ローソンの“食品ロス削減”実証実験、予想外の反響が続々 子ども食堂の課題解消のヒントにも

店舗から出される食品ロスは近年、喫緊の課題となっている。大手コンビニ「ローソン」は、食品ロスの削減と食品の有効活用につなげ、子どもの貧困問題解決をサポートしようと、主力商品からあげクンなどのフライドフーズの販売期限切れ品を、支援を必要とする「子ども食堂」に寄贈する実証実験を今年1月から開始した。同社では、通常は店頭から撤去する販売期限切れのデザート10品目について値引き販売する初の実証実験を実施。大手チェーンが本腰を入れ始めた取り組みの今を追った。

液体急速冷凍機で凍結されたフライドフーズ。寄贈先は子ども食堂だ【写真:ENCOUNT編集部】
液体急速冷凍機で凍結されたフライドフーズ。寄贈先は子ども食堂だ【写真:ENCOUNT編集部】

独自の“販売期限切れ商品”の値引き実験、国産牛乳の消費拡大の支援策も

 店舗から出される食品ロスは近年、喫緊の課題となっている。大手コンビニ「ローソン」は、食品ロスの削減と食品の有効活用につなげ、子どもの貧困問題解決をサポートしようと、主力商品からあげクンなどのフライドフーズの販売期限切れ品を、支援を必要とする「子ども食堂」に寄贈する実証実験を今年1月から開始した。同社では、通常は店頭から撤去する販売期限切れのデザート10品目について値引き販売する初の実証実験を実施。大手チェーンが本腰を入れ始めた取り組みの今を追った。(取材・文=吉原知也)

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「今まで廃棄していた食品を実際に子ども食堂で食べていただける。我々の取り組みについて、子どもたちに喜んでもらえてすごくうれしいです。無駄がなくなるというを点ではお店にとっていいことですし、SDGs(持続可能な開発目標)の面で、個人的にもすごくいい取り組みだと考えています」

 ローソンゲートシティ大崎アトリウム店(東京都)の小山了也店長は、今回の寄贈プロジェクトの実感についてこう語る。この同社の直営店は、フライドフーズ寄贈の“実証実験現場”だ。

 販売期限切れの定義は、同社が定めている「販売可能な期限を過ぎて店頭撤去しているが、喫食できる商品」というもの。今回、からあげクン4種類、Lチキ3種類、鶏から3種類、北海道産きたあかりの牛肉コロッケ、旨みあふれる牛肉メンチのフライドフーズ5商品について、鮮度を保ったまま保存が可能な液体急速冷凍機で凍結し、品川区社会福祉協議会など関係機関と協力・連携のうえで、品川区の子ども食堂「子どもゆめ食堂だんらん」に寄贈するという概要。寄贈された商品は、子ども食堂で再調理され、昼食や夕食のメニューなどとして提供されている。

 同店では、多めにフライドフーズを用意するランチタイムの売れ残りを中心に、液体急速冷凍機で凍結してすぐ隣の冷凍庫に移して保管。例えば、からあげクンとLチキの販売期限は製造から6時間と決められており、6時間経過した商品を売場から撤去し、急速冷凍する。基本的に週1回、子ども食堂が受け取りに来るという流れだ。試験的な取り組みは2月28日まで実施予定だ。

 同社として初めてのチャレンジ。まだ課題をあぶり出している途中で、同社の担当者は「まだ実証段階であり、本取り組みを拡大展開するには、冷凍機を置くための店舗スペース確保、地域のニーズの把握、また急速冷凍という手法自体についても検証が必要と考えています」。さらなる分析を重ねていくという。

 一方で、予想外の反響がいくつかあった。

 まずは、子ども食堂が抱える課題を解消するためのヒントになったことだ。担当者は「子ども食堂ではコロナ禍の影響で、持ち帰って食べることが定着したことから、もう一度子どもたちを食堂に呼び戻すことが課題となっているそうです。そういった中で今回は『ローソンのからあげクンが食べられる』ということで、多くの子どもたちが食堂に集まったと聞きました。これはコロナ前のさまざまな世代が集まっていた『居場所づくり』としての子ども食堂を取り戻すのに非常に有効だ、と食堂運営者からご評価をいただいております」と明かす。もともと食品の安全性を担保するため子ども食堂での再調理を条件に寄贈しており、ローソン側としても、からあげクンをきっかけに、もう一度子どもたちを子ども食堂に集めたいという思いがあったという。

 点が線になるような広がりを見せている。「ローソン社内からは『前から子ども食堂の支援を個人的にしたいと思っていた。ボランティアなどできることを教えてほしい』という声も聞こえてきました。それに、本取り組みを知ったさまざまな企業から、自分たちも何か役に立ちたいとの連絡を多く頂戴しております。社会が動き出すきっかけの1つになったとうれしく思います」。今後の展開が注目される。

ローソンゲートシティ大崎アトリウム店で先進的な食品ロス削減の実証実験が行われている【写真:ENCOUNT編集部】
ローソンゲートシティ大崎アトリウム店で先進的な食品ロス削減の実証実験が行われている【写真:ENCOUNT編集部】

大手コンビニが取り組む責任ある行動「さまざまな社会課題の解決に向けて」

 そもそも、ローソンでは食品ロス削減を重要な課題と捉え、「2025年に2018年対比25%削減、2030年に同50%削減」を目標に掲げている。AIを活用した発注の適正化や値引き販売などを推進。19年からは社会活動として、食品の支援を必要としている家庭や障がい者福祉施設などに余剰となった食品商品などを寄贈する取り組みを継続的に実施している。

 また、年末年始の帰省や冬休みで学校給食がなくなり牛乳の消費が減少する期間に合わせ、全国の店舗でホットミルクを半額で販売する施策を実施。22年12月31日~23年1月1日の2日間で約100トンの販売を記録しており、国産牛乳の消費拡大を支援している。

 さらに、画期的な“販売期限切れ商品”の値引き販売も。消費期限内ではあるものの通常店頭から撤去するデザート10品目を対象に、まず、期限が消費期限当日の午前0時となっている当該デザートを店頭から撤去。生鮮食品EC(電子商取引)「クックパッドマート」の専用アプリに数量を登録し、冷蔵保存する。クックパッドマート会員の購入希望者からアプリ上で注文・決済が入り次第、ローソン店舗内に設置している商品受け取り用生鮮宅配ボックス「マートステーション」に格納。その後、消費期限を迎える前の正午から午後11時までに購入希望者の客自ら受け取ってもらうという仕組みだ。

 値引き率は約50%。都内のナチュラルローソン芝浦海岸通店で、22年12月13日から23年1月31日まで実施した。結果は良好のようで、「販売目標に対して、堅調に推移しました。取り組みには好意的な声が多く、SDGs・食品ロスへの関心の高さを改めて実感しています。今後は、実装店舗拡大に向けた各所調整と取り扱い商品の拡大検討が必要だと考えています」。さらなる展開を見込んでいる。

 数多くのジャンルの食品商品を取り扱っているだけに、どうしても食品ロスのイメージが付きやすいコンビニ。複合的な視点を持って、社会貢献に力を注ぐ意義をどう考えているのか。

 同社は「食品ロス削減は世界的な課題であり、CO2削減や貧困問題など、さまざまな社会課題と密接に絡んでいます。大手コンビニが取り組むことで、業界や社会全体に食品ロスへの興味・関心が広がり、課題解決の促進ができると考えています」と力を込める。

 業界のリーディングカンパニーの1つとしての責任ある行動。地域社会との連携も重視しているといい、「全国約6万店のコンビニのスケールメリットを生かした包括的な取り組みと、地域ごとの特性に合わせた細かい取り組みを組み合わせながら推進していきたいです。ローソンは『私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。』をグループ理念に掲げているので、マチを幸せにするために、さまざまな社会課題の解決に向けて、地域の皆さんと一緒に取り組みたいと考えています。地域で何か困りごとがあれば、まず『ローソン』に行ってみよう! そう思ってもらえる存在を目指します」としている。

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