外出自粛のストレスでいつの間にかアルコールやゲーム依存に!? 専門家が語る対処法

コロナ明けに何をしようか、具体的に計画してみる

 現実に気付いたら、希望にアクセスしてみてください。ワクチンができて自由に動き回れるようになったら、何をしようか、と考えるのです。旅行が好きなら、どこに行きたいですか? 誰と行きますか? 飛行機を使って? 船に乗って? なるべく具体的に考えてください。インターネットで旅先のステキな写真を見つけて眺めるのもいいでしょう。漫画が好きな子供なら、いつ、何という漫画が出るから買おう、というようなことでもいい。こうしたプラスの予測をリスト化してみる。そうすることで、マイナスの興奮も低くなっていき、アルコールやゲームに依存する傾向は下がっていくでしょう。

 依存しないようにするには、人と話すことも有効です。リモート飲みより“リモートカフェ”をしてみてください。お気に入りのスイーツとコーヒーや紅茶を用意して、パソコン経由でおしゃべりするのです。話すネタを思い付かない人は、そのスイーツを話している相手に紹介してもいいでしょう。アルコールではないお茶やスイーツでも、不安やイライラがやわらいでいることに気付くでしょう。人に向かって話すということは、自分の状況をまとめることになるので、自分の考えていることなどが具体的になっていき、整理がつきやすくなるし、話すこと(相手が聞いてくれること)で嬉しいですよね。嬉しくなることで活力も出るし、不安も下がります。

 今のつらい状況が自分だけじゃないことを確認することも、不安やストレスをやわらげてくれます。頭では自分だけじゃない、とわかっていても、その“証拠”を見つけて書き出す作業をすると、自分のなかで整理ができていきます。たとえば、不安やストレスから眠れなくなっているとします。それで酒量が増えたり、ついゲームをしているのかもしれません。そんな場合は、ブログやツイッターで「眠れない」と書いている人の文章を探して読んでみてください。そして、それを評価して文章にまとめてみてください。「その通り!」と思うとか、「ここはちょっと?だな」というように。そうすると頭の中が整理されて、また少し不安やストレスがやわらぎ、アルコールやゲームに逃げることが減っていくでしょう。

一気にゼロにしなくても良い

 アルコールやゲームをゼロにしなくても良いのです。ゲームばかりしている子供に「ゲームばっかりやってちゃダメ!」「勉強しなさい!」と言ってばかりでは、隠れてやるようになるだけです(罰の効果です。罰は百害あってなんとやらです)。ゲームを取り上げるのではなく、“そのことばかりをする”という状況を変えてあげるのです。たとえば、子供が食べたいというおやつを一緒に作るとか、昼間、勉強や仕事をしたら、夕食の後、家族で1人1曲歌うとか、YouTubeで覚えたダンスを披露するとかしてみる。それだけでも、“ゲームばかりする”という状況を変えることができます。つまり、やめさせたいことを抑えようとするのではなく、やっても良いことを皆で認めましょう、と考えてください。

 不安やストレスを一気にゼロにしようとするのではなく、以上のような方法で少しずつ不安やストレスを減らすようにしてみてください。少しずつ変わっていくことで、いつの間にかアルコールやゲームに頼っている時間が減っていることに気付くでしょう。我慢しなければならないことが多い今は、自分でも気づかないうちに不安やストレスがたまっているものです。できるだけいろんなことをしてみて、ものの受け取り方や考え方のバランスをとるようにしてみてほしいと思います。

□杉山雅彦 (すぎやま・まさひこ)1953年3月13日、岐阜県生まれ。1976年、東京教育大学教育学部卒。1981年、筑波大学大学院心身障害学研究科博士課程修了。足立区教育センター教育相談員、名古屋市立保育短期大学助教授、筑波大学助教授などを経て、2001年、広島国際大学人間環境学部(現・心理科学部)臨床心理学科教授。2010~2013年、日本行動療法学会理事長。現・あかつき心理相談研究所顧問、福島学院大学福祉学部教授。共同監訳書に「CRAFT依存症患者への治療動機づけ 家族と治療者のためのプログラムとマニュアル」(金剛出版)など。

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