なぜ武尊や那須川天心ではなく“芦澤竜誠”なのか 演出家に聞く人気番組起用のワケ
格闘家でありラッパーの芦澤竜誠と演出家のマッコイ斎藤氏が“喧嘩”しながら街ブラする番組『芦澤竜誠と行くぶらり喧嘩旅』が約7か月の時をへて帰ってきた。ABEMA格闘公式YouTubeで累計1230万回超の再生数を誇る人気番組のファン待望の新作はアメリカ編。演出を手掛け、芦澤と珍道中を繰り広げるマッコイ氏に番組企画の経緯や“芦澤竜誠”という存在について話を聞いた。
今や人気は格闘技界の外へ、プロ野球選手もとりこに
格闘家でありラッパーの芦澤竜誠と演出家のマッコイ斎藤氏が“喧嘩”しながら街ブラする番組『芦澤竜誠と行くぶらり喧嘩旅』が約7か月の時をへて帰ってきた。ABEMA格闘公式YouTubeで累計1230万回超の再生数を誇る人気番組のファン待望の新作はアメリカ編。演出を手掛け、芦澤と珍道中を繰り広げるマッコイ氏に番組企画の経緯や“芦澤竜誠”という存在について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
「なんか最近、街を歩いてても声をかけられるんですよね」と喜びがにじみ出る。プロ野球選手からも声をかけられるほどだと笑う。
芦澤は昨年6月に行われた今世紀最大級の格闘技イベント「THE MATCH 2022」に参戦。YA-MANと対戦し、1R・KO負けを喫していた。その後、同番組の配信も止まる。12月にはこれまで所属していた団体・K-1との契約解除。大みそかのRIZINに自身の楽曲『ナマズ音頭』を歌いながら登場し、電撃参戦を発表した。
常に格闘技界を騒がせる存在だ。新たに始まったザ・ワールド編では、「THE MATCH 2022」後に米国武者修行に行っていた芦澤に密着。マッコイ氏がドタバタだった再会を振り返る。
「怒らなきゃいけない部分がたくさん出てきました。ああいう格闘家、天才肌の人って動きが分からないじゃないですか。こっちが行くからって住所をもらってたんですけど、いざ出発する1週間前ぐらいから連絡が取れなかったんです」
芦澤に“保護者”として接しているマッコイ氏の口調が熱を帯びてくる。「トレーニングしてるから忙しいのかなと思いながら、こちらから何時に着きますといった連絡をしました。到着するころにはLINEの既読がついてるだろうと思ったけど全くつかないんです。本当に連絡がつながらないんです。ただの俺の米国旅行になるって不安で仕方なかったですよ」とまくし立てた。
それでも“息子”芦澤を信じて何とか送られてきた住所に向かったマッコイ氏。付近に着いたその瞬間だった。
「住所確認して、本当に1分も経ってない。車を降りて左の方の200メートル先から下駄の音をさせて歩いてくるやつがいて、パッと見たら芦澤だったんです。だからあの映像はそのまんま。なんの演出もしていないんですよ」
芦澤の言い分は「日本時間と米国時間って違うじゃん、だから来る日がよく分からなかった」。当然のようにマッコイ氏は叱ったと振り返った。
武尊がジャイアンツなら芦澤竜誠は阪神タイガース
第1回の放送は2021年。今や人気番組になっているが、武尊でも那須川天心でもない。なぜ芦澤だったのか。番組企画が始まった経緯についても言及した。
「僕はもともと、ABEMAの『格闘代理戦争』という番組をやらせてもらっていました。そのなかでK-1選手に監督として出てもらったときに“芦澤竜誠”も出てきたんですよ。彼はずっと『オラァ!』みたいな人。一方で武尊選手とかは怒ることもなくもっと冷静に教える感じ。すごく編集がしやすい。武尊くんが読売ジャイアンツなら芦澤は阪神タイガース。本当に真逆で、芦澤は見にきているお客さんにもブチぎれる。それが面白くて」
納得がいかないときにはスタッフにも怒っていたという芦澤。マッコイ氏はその中でも良い部分を見抜いていた。
「実は礼儀正しいんですよ。怒りの矛先が向いているところにはガンガン行くんですけれど、ないところには至って良いやつなんですよ。でもまだ子どもの部分で怒っているところがありました。そこをK-1選手、有名選手になると周りも何も注意しなくなる。それはちょっと違うなと俺は思ったんですよね。それで企画を思いつきました」
すぐにABEMA格闘チャンネルのエグゼクティブプロデューサーの北野雄司氏に相談した。「俺がひたすらあいつを怒る。あいつはキレたときの言葉のチョイスがめちゃくちゃ面白いんです。周りが言えなかったところを俺が怒るから。俺がそれを叱ることで芦澤がかわいく見えるし、逆にあいつが面白くなる。だからやらしてくれと言いました」。
始まった企画は大ヒット。ABEMA格闘チャンネルの人気企画にもなった。マッコイ氏は常に芦澤を“息子”と表現する。「僕ら、30歳近く離れてると、馬鹿野郎って言いやすいんです」と父の顔になった。
同番組では、今後も米国修行に励んだ芦澤の映像を放送するようだ。ぶらり喧嘩旅だけではなく、練習シーンにも密着。UFCファイターも所属するメガジムでの姿に心を打たれたとうなずいた。
「本当に無言でしたよ。総合を真剣に習っていました。ただ米国に行っただけじゃなかったですよ。真剣に彼は何かを変えようと行っていて、そのシーンを見たら、『息子よ、ようやってんじゃないか』と言いたくなりますよ。本当に何か覚悟を感じました」
今年はRIZINファイターとしてリングに上がる芦澤。“因縁”皇治との一戦は盛り上がり必至の対決となるだろう。そんな中でマッコイ氏と見せる“親子”の掛け合いにも期待したい。