中学受験はアクシデント頻発 入念な併願パターンを準備「親はATMになる覚悟必要」

今年も私立中学の受験シーズンが始まった。関東では男女共学の栄東中学(さいたま市見沼区)の入学試験が10日から始まる。同校は超難関を目指す受験生とその保護者の間で人気の高い前受け校だ。教育産業によってはこれを「お試し受験」とも呼んでいるが、簡単に言うと滑り止めのことである。在学生自身が同校を“滑り止めの星”と呼んでおり、毎年1万人以上が入試に挑む全国最多のマンモス受験校として人気を集めている。

昨年行われた栄東中学校の入試風景【写真:ENCOUNT編集部】
昨年行われた栄東中学校の入試風景【写真:ENCOUNT編集部】

大手予備校講師「再試験すれば合格者の半分は入れ替わる」

 今年も私立中学の受験シーズンが始まった。関東では男女共学の栄東中学(さいたま市見沼区)の入学試験が10日から始まる。同校は超難関を目指す受験生とその保護者の間で人気の高い前受け校だ。教育産業によってはこれを「お試し受験」とも呼んでいるが、簡単に言うと滑り止めのことである。在学生自身が同校を“滑り止めの星”と呼んでおり、毎年1万人以上が入試に挑む全国最多のマンモス受験校として人気を集めている。

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 関東の中学受験の一般入試日程としては10日からの埼玉県、20日からの千葉県、そして2月1日からの東京都、神奈川県へと進んでいく。第一志望校を受ける前に試験慣れするため、あるいは滑り止めを確保するために埼玉や千葉の難関校を受験する生徒は多い。難関校にチャレンジする生徒は1月10日、11日(選択制)に入試が行われる栄東のほか開智、大宮開成、浦和明の星、千葉県では20日からの市川、渋谷教育学園幕張、そして2月1日からの開成、麻布、武蔵、桜蔭、女子学院、雙葉といった男女御三家や早稲田、駒場東邦、海城、渋谷教育学園渋谷、慶應義塾中等部、吉祥女子、鴎友学園女子、豊島岡女子学園、白百合学園など東京都内の難関校を受験していく。

 大手学習塾が難易度を示す偏差値を毎年発表しているが、中学受験の場合はこの通りにはいかないことがよく起こる。単行本コミック『二月の勝者―絶対合格の教室―』(小学館)の16巻冒頭では「新宿学園海浜中」(モデルは渋谷教育学園幕張)を受験した桜花ゼミナール吉祥寺校Ω(オメガ)クラスの女子トップに君臨する前田花恋が、不合格通知を見て泣き崩れるシーンが登場する。大手予備校幹部がこう指摘する。「大学受験の場合はほぼ模擬試験の結果通りの合否が出ます。言うならば受験前に結果はほぼ見えています。これに比べて中学受験は番狂わせがとても多い。御三家に合格してももう1回同じ試験を行えば合格者の顔ぶれは半分入れ替わる、とまで言われるほどです」。確かに、埼玉の前受け校に落ちて男子御三家に合格するケースがあったり、千葉の市川は“お試し”とは呼べないほど難関化している。また、『二月の勝者』で描かれたように、近年人気化している共学の渋谷教育学園幕張や渋谷教育学園渋谷は開成、麻布、桜蔭、女子学院と差がほとんどなくなりつつある。

 中学受験という試練に立ち向かうのは体力も精神力もまだまだ不安定な小学6年生だ。塾の先生から太鼓判を押されていても取りこぼすことは頻繁に起こりうる。従って、自宅から通学可能かどうかをまずは押さえたうえで滑り止め校を確保しておくことが大事となってくる。「“滑り止め”と言ってもバカにはできません。難関中学と呼ばれる学校は最近、生徒の表現力や発言力、発信力を養うアクティブラーニングや体験学習のほか、有名企業で働く卒業生を講師として招くキャリア教育、さらにSDGsへの理解や英語力を高めるグローバル教育などに熱心です。第一志望は残念な結果だったとしてもカリキュラムのしっかりした滑り止め校に入学できれば期待以上の教育は受けられるはずです」(予備校講師)

 中学や高校の知名度より最終的にはどこの大学に入学できたか、が一般的な社会の評価だろう。ゴールに向けてしっかり学習できれば、“中学ブランド”にはあまりこだわらないほうが良いのかもしれない。とは言え、受験生が小6であることを考えるとランク別の複数校受験は必須だ。受験系雑誌を手に取ると「入試に慣れは必要」「前受け校は無理をしないで安全校を」「前受け校不合格だったが、塾の先生と話して気持ちを切り替えた」などのほか、「受験当日にお腹が痛くなった」「受験票を他校と間違えた」、さらには悪天候による体調不良や交通アクシデントへの対処法などがこと細かにアドバイスされている。子どもの体調やメンタルだけではなく思わぬ環境変化も入試の結果に大きく影響するからだ。こうしたことを考慮したうえで、併願パターンを組み立てていくわけだが、何校も受験すると当然、受験料がかさむ。大手予備校講師がこう諭す。「子どもの中学受験は家族一丸となった一大イベントです。その中には親の経済力も含まれます。塾の費用は年間130万円以上かかりますし、入試になると受験料、前泊のホテル代などおカネが飛ぶように出ていきます。ATMに徹する覚悟がなければ私立中学受験から撤退する、という選択肢ももちろんあります」。

 ただし、おカネをつぎこめば何とかなるというわけではない。前述のように中学受験にはハプニングが付きもの。親子ともに後悔しないためには併願スケジュールを綿密に組むべきだろう。その際、気を付けなければならないのは入学試験の問題傾向だ。例えば、読解力と論理性重視、難問解答力を問う桜蔭なら第2志望は豊島岡、基礎知識や処理スピード能力重視の女子学院なら慶應中等部、丁寧さと堅実さ重視の雙葉なら白百合という流れがある。併願で失敗しないためには、第一志望校の問題傾向に近い中学を選ぶことが大切だ。子どもが通っている塾の先生からのアドバイスも参考にしながら、ぜひとも“二月の勝者”を目指してほしい。

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