亀田興毅氏が「ありえない。化け物」と絶賛する逸材 生涯無敗の23歳、重岡銀次朗の可能性
プロボクシングの元世界3階級王者・亀田興毅氏がファウンダーを務める興行「3150FIGHT vol.4」(6日、大阪・エディオンアリーナ大阪第1競技場=ABEMAで全試合完全生中継)ではIBF世界ミニマム級タイトルマッチ、WBO同級タイトルマッチなど2つの世界戦を含む、計11試合が行われる。ボクシングファン垂涎(すいぜん)のカードがそろったイベントの見どころ、3150FIGHTの2023年の展望を亀田ファウンダーに聞いた。
インタビュー前編、「後楽園ホールなら全試合がメイン級」と豪語する「3150FIGHT vol.4」
プロボクシングの元世界3階級王者・亀田興毅氏がファウンダーを務める興行「3150FIGHT vol.4」(6日、大阪・エディオンアリーナ大阪第1競技場=ABEMAで全試合完全生中継)ではIBF世界ミニマム級タイトルマッチ、WBO同級タイトルマッチなど2つの世界戦を含む、計11試合が行われる。ボクシングファン垂涎(すいぜん)のカードがそろったイベントの見どころ、3150FIGHTの2023年の展望を亀田ファウンダーに聞いた。(取材・文=角野敬介)
◇ ◇ ◇
――まずは今回の興行の見どころを教えてください。
「新たにボクシング界に誕生するであろう怪物、重岡銀次朗には注目が集まるでしょう。でもそれ以外も全部おもろいカードですよ。これは自信がある。3150FIGHTを立ち上げた頃からABEMAさんとも話しているんですけど、全試合にスポットを当ててほしいなと。地上波ではなかなかできないことじゃないですか。メインの世界戦だけを放送して、ほかのカードは前座扱いで、映像も残っていない。そういう時代で生きてきた人間としては、やっぱり初めの試合からしっかりと解説、実況があって放送してくれるっていうのはすごくうれしいこと。だから4回戦でも手抜きすることなく、おもろいカードを揃えた自信はあります」
――中でも重岡選手は、どこまで強いのか期待されています。
「ボクシングの世界って世界チャンピオンにもランクがあるんです。特上、上、並と。今で言うと井上尚弥、井岡一翔なんかは特上。今は4団体あって、チャンピオンになっても知名度のない選手もいるわけです。この銀次朗は将来、特上ランクに入ってくる逸材です。まずチャンピオンになったら、20回ぐらいベルトが動けへんやろって言われてる時点で、もう具志堅さんの域。あの人は間違いなく特上じゃないですか」
――具志堅用高さんは13回連続防衛という日本人男子の最長記録を持っています。まだキャリア8戦の23歳の重岡選手にすごい期待をかけていることがわかります。
「プロアマ通じて、さらに言えばアンダー15を入れても負けたことがないんですよ。アマチュアでは井上選手でも負けている。あのロマチェンコも、メイウェザーも負けている。時代は違うけど、ロッキー・マルシアノですら負けてるんですよ。一度も負けていないっていうのは、本当に化け物、とんでもないことですよ」
――重岡選手はプロで8戦全勝、アマでは56勝1敗で、唯一の敗戦は兄・優大との対戦を棄権したもので、事実上無敗ですね。
「ありえないことです。唯一の負けが兄を殴れないという理由による棄権。この段階で既にドラマがあり、スター性がある。アマチュアだと普通、誰でも負けるんです。えぐいっすよ。多分記録じゃないですか。細かく調べてないですけど、初めてじゃないかなと」
――公開練習ではミットでパンチを受けていました。軽量級離れしたパワーがあると驚いていました。
「ものすごいパンチを持っていますね。ミニマム級とは思えない。正直、ちょっとなめてました。公開スパーの相手もバンタム級ですよ。しかも4回戦とかじゃなくて、A級ボクサー。10キロも重くて、デカい相手にパワーで勝ってましたからね。銀次朗のような日本の宝に3150FIGHTのリングを選んでもらったことを誇りに思います」
――重岡選手のカード以外にも注目のカードがそろっています。
「谷口将隆(WBO世界ミニマム級王者)の2度目の世界タイトル防衛戦。相手のメルビン・ジェルサレム(フィリピン)は強い相手ですよ。ただ谷口も強い。将来は複数階級制覇も狙えるんじゃないかという選手です。メインにふさわしい試合をしてくれるでしょう。スーパーフェザー級のアジア最強決定戦(木村吉光―力石政法)もボクシングファンにはたまらないカードでしょ。昔ならもっと注目されていたはず。いまはなかなかこういうカードが表に出ないんです」
――日本ヘビー級王者・但馬ミツロの試合もあります。デビューから3試合連続1R・KO。日本ヘビー級の期待の星ですね。
「彼は今、キャリアを積んでいってる段階やけど、今回はなかなか倒すのは難しい相手。この相手をKOするんやったら、また一つ上にいける。ぜひ見てもらいたいです。アジアでこの階級の試合はなかなか見られないですよ」
――ほかにも、元柔道の五輪金メダリストで格闘家のサトシイシイのボクシング転向2戦目。フライ級のホープ花田歩夢は世界ランカーとのチャレンジマッチ。元世界1位・大沢宏晋の引退試合。昨年、皇治とエキシビションを行い話題になった“ヒロキング”こと福重浩輝の試合など、確かに見どころたっぷりですね。
「アンダーカードもおもろい試合ばっかりでしょ。どちらが勝つかわからないカードばかり。後楽園ホールやったらそれぞれがメインをはれるんじゃないですかね。本当に振り切ってると思うんです。なかなか今のボクシング界でここまでのカードは揃えられないです。ジムが主催する興行だと、自分のジムの選手を勝たせたい。だからどうしても楽なマッチメイクになる。3150FIGHTはあくまでプラットフォーム。いい選手が集まってくれば、いいカードが必然的に増えてきます。特に今回はボクシングファンに見てほしいですね」
2023年の目標は東京進出
――「3150ファイトVol.1」が2021年の12月。1年間で興行の規模も一気に大きくなりました。最初は選手集めの苦労もあったかと思います。
「確かに大変です。さっきも言いましたが、今までのボクシング界はジムが主催の興行。そこにプラットフォームとして入っていっても、最初は『何言うてんねん。そんなんにうちの選手出されへん』と。でも、今はそんなことも言ってられないんです。コロナもあって、興行をしてもお客さんを入れることができなかった。選手も試合ができない。コロナ禍でボクサーが確か500人近くやめてるんです。
これはちょっとさすがにやばいよって。僕はボクシングのおかげで、今があると思ってる。なんとかボクシング界に恩返ししたいという思いがあって、いろんなジムに直接足を運んで、一からこのプラットフォーム構想を説明させてもらった。それで少しずつ共鳴してくれるジムが増えてきました。そして今回はワタナベジムさんも協力していただけるようになりました。これは大きいです。今一番プロボクサーが多いジムで、90人近くいると思います」
――ほかのジムにも波及していきそうです。
「そうなんです。ワタナベジムも3150FIGHTの興行に出すんだったら、じゃあうちもっていう流れが加速していくんじゃないかなっていうのは想像できます。それで競合するようなところがでてくれば、業界が活性化していく。だから僕らだけじゃなくて、もっといろんなとこが出てこないといけない」
――過去にはTKOの木下さんが出場したり、格闘家の皇治選手のエキシビションもありました。話題作りという側面が大きかったですか。
「エンタメファイトは本来はいらないと思っています。でも3150FIGHTって誰も知らない状況だった。そのときには知名度のある人に助けてもらって、少しでも知ってもらえたらと。今回、4回目で少しは業界内では認知されてきたように感じています。だから今後はエンタメの要素は少しずつ減らしていこうかなと」
――今回ダブル世界戦を手がけるというの相当なインパクトを感じます。
「昨年の12月に第1回があって、今回は3150FIGHTシーズン1の締めくくりという位置づけです。大阪で生まれた3150FIGHTなんで、まずは大阪で世界戦を開催すること、誰もが認めるボクシングイベントにすることが目標でした。それは2022年の初めにも掲げていましたから」
――見事に達成したわけです。シーズン2の目標を教えてください。
「達成したかどうかは1月6日が終わってからにはなるのですが、シーズン2はいよいよ東京進出ですよ。大阪から次は東京です。西日本より、東日本に属するジムの方が多いんです。西日本のジムの方からは3150FIGIHTのリングに上がりたい、上げたいと言ってもらえるようになりました。3150FIGHT SURVIVAL(3150FIGHTへの登竜門)では1日2興行を開催しないといけないぐらい1日に30人以上のプロボクサーが集まりました」
――それだけの試合を1日にというのはなかなか見られないですね。
「えぐいでしょう。それだけのプロボクサーがおるんですよ。それだけ集まってもらえるということは、関西ではある程度は名前が通ったのかなと。中部、九州からも来てくれるんです。だから次は東京でも広げていければと思っています」