『朝生』36回目の正月 88歳の司会・田原総一朗に番組P「200歳まで生きて番組続けてほしい」
テレビ朝日系の深夜討論番組『朝まで生テレビ!』(毎月末放送)が22年春に35周年を迎えた。大みそかの深夜1時45分(=1月1日午前1時45分)からは4時間にわたる朝生『2023元旦スペシャル!』が放送される。今回のテーマは「激論!ド~する?!日本再興2023」。多士済々な面々が日本を希望の持てる国にするにはどうすべきか、議論する。ジャーナリストの田原総一朗氏は企画から番組に参加して司会を務め、88歳になった今でもズバズバと迫る力強い口調は健在だ。最近のウクライナ情勢を目の当たりにして平和への思いをさらに強くしているという。同局の鈴木裕美子プロデューサーに、36回目のお正月を迎える長寿番組『朝生』について聞いた。今回は後編。
渡辺宜嗣キャスター「田原さんは日本で一番パワフルな後期高齢者」
テレビ朝日系の深夜討論番組『朝まで生テレビ!』(毎月末放送)が22年春に35周年を迎えた。大みそかの深夜1時45分(=1月1日午前1時45分)からは4時間にわたる朝生『2023元旦スペシャル!』が放送される。今回のテーマは「激論!ド~する?!日本再興2023」。多士済々な面々が日本を希望の持てる国にするにはどうすべきか、議論する。ジャーナリストの田原総一朗氏は企画から番組に参加して司会を務め、88歳になった今でもズバズバと迫る力強い口調は健在だ。最近のウクライナ情勢を目の当たりにして平和への思いをさらに強くしているという。同局の鈴木裕美子プロデューサーに、36回目のお正月を迎える長寿番組『朝生』について聞いた。今回は後編。(取材・文=鄭孝俊)
――番組で特に思い出に残っていることは何ですか?
「私は2013年から『朝生』を担当していますが、1997年から足掛け10年ほど田原さんが司会をしていた『サンデープロジェクト』を担当していました。当時、田原さんも私も若かった!?せいか、会議で番組の内容をめぐって田原さんと激論になって怒鳴り合ったことがありました。会議が終わると田原さんの方から近づいてきて、『さっきは悪かった。これからもよろしく』と笑顔で握手を求めてきました。これには参りましたね。年下の私からおわびすべきなのに、先に田原さんに謝られてしまいました。“人たらし”みたいなところがありまして、そこがまた田原さんの魅力なんだと思います。基本的に人間が好きな方ですから、コロナでパネラーの方々がリモート出演になったときはすごく残念そうにしていました」
――番組中に視聴者からの意見を電話やファクス、電子メールなどで受けつけていますが、近年、とくに反響の大きかった回、テーマは何でしたか? またその理由をどう考えますか?
「22年4月に放送した『朝生35周年特別企画 激論35年!~戦争と平和 ド~する?!ニッポンの針路~』と銘打った回では、ロシアによるウクライナ侵攻という歴史的危機の中、戦争と平和を考えてもらうために視聴者にアンケート調査をしました。“戦争と平和”は田原さんが生涯をかけて追い続けているテーマですから力が入っていました。質問は『日本が侵略されたら、あなたは戦いたいと思う?』。『戦う』ことを奨励するわけではないので、私はこの質問に抵抗がありました。しかし、ウクライナの市民が武器を持って戦う姿にショックを受けていた若いスタッフたちが、ぜひ視聴者に聞いてみたい、ということで議論に議論を重ね、設問することにしました」
――意外な結果が出たそうですね。
「はい。電話とファクスによる有効受付数は計329件で、『思う』が176件、『思わない』が125件でした。『思う』の理由としては、多い順に①自国は自分たちの力で守るべき、②日本国民と文化を守りたいから、③戦わなければ自分の命が危ないから、④日本の将来のために戦わなければならない、でした。興味深いのは戦い方です。この電話アンケートでは『戦う』と答えた方にさらにご協力いただいて、あなたならどうやって戦いますか、と伺いました。『武器を使う』という答えが81件と多いですが、『後方支援・経済支援 』が30件、『SNSなど言葉を利用する』が22件ありました。単に戦うといっても視聴者のみなさんの中に、さまざまな知恵があることが分かります。『戦え!』とは軽々には言えませんが、議論を深める材料にはなったと思います。他方で『戦わない』の理由は①命を大切にしたいから、②もう2度と戦争を起こすべきではないから、③国・政府が信用できないから、④戦っても無駄だ、という結果でした。これらの意見は番組の議論に深い影響を与え、視聴者との双方向のコミュニケーションがうまくとれた回になりました」
――ところで、番組放送中から明け方まで元気でいられる田原さんの健康法は?
「食生活が規則正しいようです。朝ごはんはパンに目玉焼き、レタスというメニューが多いようでご自身で作っているそうです。夕食は和食が中心で好物は白身魚のお刺身。お酒は一切飲みません。毎日の散歩が日課で娘さんが飼っている犬を連れて行くようです。ちなみに、番組開始以来、ずっと『朝まで生テレビ!』の進行を務めてきた渡辺宜嗣キャスターは、田原さんについて『僕の中では、田原さんは日本で一番パワフルな後期高齢者だと思います。女性では、黒柳徹子さん』とおっしゃっています。渡辺キャスターは、『朝生』の進行をリングサイドのアナウンサーのようだとおっしゃっています。『真剣勝負が始まるぞ』と、ご自身も緊張しながら番組を進めておいでです。渡辺キャスターは、“88歳の暴れん坊”田原さんをがっちり受け止める、一番の応援団ですね。21年から番組に参加している下平さやかアナウンサーは、田原さんのことを『チャーミングな笑顔で、何を言っても許されてしまう方(笑)』とおっしゃっています。私は、渡辺宜嗣さんや下平さやかさんにこんな風に温かく見守られて、番組ができる田原さんは幸せな方だなぁと思います。健康の秘密はそんなところにもあるのかもしれませんね。また、田原さんが司会を務めるBS朝日の『激論!クロスファイア』(日曜午後6時)は近く600回を迎えるそうです。月1の『朝生』も、毎週の番組も張り切って若いスタッフと討論しています。これが田原さんの一番の元気の源ですね」
――お元気とはいえ、お年の田原さんに制作者として思うことは?
「番組制作者としては、お年を召して以前より滑舌が悪くなっても、お耳の聞こえが少し悪くなっても、長い間、真剣に日本社会と政治に向き合ってきた田原さんの問題意識や知恵を生かせるようにしたいと考えています。何と言っても、保守もリベラルも、老若男女が一堂に会する番組ですから!」
――番組のフィナーレを想像するときはありますか?
「田原さんはよく『“朝生”の放送中に田原が静かになったら死んでいた、それが僕の望みだ』と言っていますが、私としては『田原さんにはプロフェッショナルとして、放送の最後まで司会の務めを果たしていただきたい』とお願いしています。田原さんが切り開いてきた日本放送史に残る討論番組をなくしてはいけないと思います。田原さんには200歳まで生きていただいて番組を続けてもらいたいですが、田原さんがまいた種を引き継ぐことも若い人たちの務めだと思います」
□鈴木裕美子 81年テレビ朝日入社。システム部、人事部、社長秘書等の管理部門と『ニュース・シャトル』『ザ・スクープ』『スーパーモーニング』等の報道番組のディレクターを経て、2001年『サンデープロジェクト』プロデューサー。報道制作担当部長。広報局にて07年~09年『テレビ朝日創立50周年企画 東京大学とのメディアリテラシー共同研究』責任者。2013年報道局チーフプロデューサー、『朝まで生テレビ!』『東京サイト』を担当。