猫のサブスク「ねこホーダイ」問題の核心 保護猫飼育18年の飼い主「このままでは運営すべきでない」

猫のサブスク、ねこホーダイが炎上し、人間と猫の関係に対する関心が集まっている。猫とはどのような生き物で、人間と暮らす際の注意点は何か。保護猫の飼育歴18年で、現在2匹の保護猫を飼っている湊さん(@guraburu666)に問題の核心を聞いた。

湊さんの家に来たばかりの緊張している時代のムースちゃん【写真:湊さん提供】
湊さんの家に来たばかりの緊張している時代のムースちゃん【写真:湊さん提供】

ねこホーダイ炎上、問題の核心とは?

 猫のサブスク、ねこホーダイが炎上し、人間と猫の関係に対する関心が集まっている。猫とはどのような生き物で、人間と暮らす際の注意点は何か。保護猫の飼育歴18年で、現在2匹の保護猫を飼っている湊さん(@guraburu666)に問題の核心を聞いた。

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 猫のサブスクに厳しい声が上がるなか、SNS上で湊さんのツイートに注目が集まった。

「3年前外で蹴り飛ばされて人間を怖がっていた子が 日々距離が近づいて3年目にして側にくっついてくれる様になるまで 猫なりに葛藤があったんだろうなぁ 短い猫生の中の3年はとても長い その時間を使ってくれた事に対してどの言葉が適切か選びきれない」

 そして、「物じゃ無い」と続けた。

 愛猫の写真と動画を添えて、「#猫のサブスクやめろ」と取り組みに反対するメッセージを発信した。

 湊さんが現在の愛猫ムース(♂)と出会ったのは7年前にさかのぼる。

「近所で野良猫の世話をしているおばあちゃんがおり、その中の1匹がのちのムースでした」

 3年半前にそのおばあちゃんの姿を見かけなくなった。詳細は分からないものの、「おそらく施設に入ることになったか、お亡くなりになったかと思います」と察している。おばあちゃんに保護されていた猫たちは突じょ、行き場を失った。

 当時、湊さんは別の保護猫を飼っていた。ムースを迎えたい気持ちはよぎったものの、簡単には決断できなかった。自宅には病気を抱えた猫や老猫がおり、介護が必要だったからだ。

「今の自分の年齢で最後まで責任を持って迎え入れることができるか、この子が病気や大往生してくれた場合の金銭面や体力面など問題がないか考えつつ、気にかけていました」

 悩んだ末、ムースを保護したのは、冒頭のツイートの出来事があったからだ。

「小学生低学年ぐらいの子どもが猫を蹴り飛ばしている場面に遭遇しました。猫を逃がそうと間に入ると、母親からは『うちの子はそんなことしていません』と言われ、あ然としたのを覚えています。また別の日には、近所の50代くらいの男性が蹴り飛ばす場面を目撃しました。すぐに声をかけると慌てて逃げて行きました。そのとき、大きな台風が来る予報もあって、当時同居していた弟に相談をし、ムースを迎え入れることにしました」

 虐待されていたムースを助けると、ムースは意外な行動を見せる。

「うそのような話ですが、声をかけて抱き抱えると、逃げもせず、猫用キャリーに入ってくれました、おそらく外で暮らすのがつらかったんだと思います」

 しかし、実際にムースがなついてくれるまでは時間がかかった。

「うちの子として生活を始めても、すぐには心を開いてくれませんでした。抱っこも怖がる、頭をなでようと手を出すとびくびくする。きっと今まで人間から怖い思いをさせられていたんだと思います。大きな声や動きに対して怖がりなため、小さな声で話しかけたり、近くに行く時もなるべく音を立てないようにしたりと工夫しました。笑ってしまう話ですが、上から近づいて来ると怖いだろうと思い、ほふく前進のような動きで近づいたこともあります。最初の1年は遠くからこちらの様子を見て過ごしていることが多かったですね」

行き場を失ったときのムースちゃん【写真:湊さん提供】
行き場を失ったときのムースちゃん【写真:湊さん提供】

ねこホーダイの問題点と評価できる点は?

 接触を増やしていったのは、2年目からだった。

「頭やお尻などなでてもらうのがとても好きだったようで、少しずつスキンシップも増やしていきました。次第に自分たちの近くに少しずつ近づいてくれるようになっていきました」

 そして、3年目に入った現在はようやく自然体に。先輩猫との生活にも慣れてきたという。

「先住猫のテンが私から離れた隙に、自ら近くに来て寝てくれるようになりました。2匹は良きライバルのようで、なかなか仲良くしてくれませんが、互いに良い距離感を見つけた様子です。朝起きると左右に1匹づつくっついてくれていることもあり、朝から幸せをもらっています」と、湊さんは語る。

 18年に及ぶ保護猫の飼育を通じ、湊さんが感じるのは、猫は非常に人間的で繊細な動物ということだ。

「猫は人には懐かないとか感情が他の動物より薄いみたいなことを言われていますが、猫を一つの命として向き合えばそんなことはありません。性格や生きてきた環境も影響していきますが、うちにいる子は名前を呼ぶと尻尾を振りながら走ってきてくれるほど私のことを好きになってくれています。また感情も表情から読み取れるほど豊かです、うれしいと表情が緩くなり、顔つきが穏やかです」

 それゆえに、ねこホーダイには複雑な思いがあった。

 運営するのら猫バンクは、「野良猫ゼロ」を標ぼう。里親が保護された猫を飼う際のハードルを下げ、また、「飼っている猫を飼えなくなった場合に、提携シェルターに無料で引き取ってもらうことができます」としている。

 湊さんは保護猫を飼育することの問題点について、「家族構成など(飼育の)審査基準が厳し過ぎるため、保護猫の選択肢が得られず、ペットショップを利用する人も少なくありません」と指摘。また、ムースのように、路頭に迷って虐待される野良猫がいるのも現実で、少なくとも受け入れ先を提供しているという点では、ねこホーダイの取り組みを評価した。

 ただし、現行の規定のままでは、不安のほうが勝るという。

「ねこホーダイに関しては基準がほぼないように見受けられるため、無責任な飼い主を増やしてしまう可能性があることが気になっています。あとは最初から殺害目的で引き取ろうとする人には受け入れやすいサービスだと感じ、私としてはこのままでは運営すべきでないと思いました」と主張した。

 のら猫バンクは里親に年齢制限や単身者不可などの条件は設けていない。システム上、気に入らなければ返還できるなど、猫の感情を軽視していることも批判が集まる理由となっている。

 湊さんは今後、YouTubeなどを通じて保護猫サポートを行う予定。「年齢的にも安易に家に迎え入れる保護猫は現在の子を最後にしたいと思います。その後は団体や信頼できる個人保護主を通じて保護猫を支援していきたい」と話している。

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