人気VTuberとコラボで再脚光 志摩スペイン村が新たなファン獲得へ、メタバース空間に進出

三重県・志摩市の複合リゾート施設「志摩スペイン村」は、2022年にバーチャルYouTuber(VTuber)視聴者の間で大きく知名度が上がった。もともとはVTuber側がこのパークを動画で取り上げたことがきっかけだったが、公式コラボ動画に発展。さらにはオンラインゲームのプラットフォームに志摩スペイン村が登場、VRカルチャーとの距離が近づいた1年だった。若いネットユーザーがなじんでいるツールを介して新たなファンを獲得しようとしている。(取材・文=大宮高史)

志摩の海岸に、スペインをテーマにしたアトラクションを展開している【写真:志摩スペイン村提供】
志摩の海岸に、スペインをテーマにしたアトラクションを展開している【写真:志摩スペイン村提供】

VTuberの周央サンゴが動画で紹介、フォロワー数急増

 三重県・志摩市の複合リゾート施設「志摩スペイン村」は、2022年にバーチャルYouTuber(VTuber)視聴者の間で大きく知名度が上がった。もともとはVTuber側がこのパークを動画で取り上げたことがきっかけだったが、公式コラボ動画に発展。さらにはオンラインゲームのプラットフォームに志摩スペイン村が登場、VRカルチャーとの距離が近づいた1年だった。若いネットユーザーがなじんでいるツールを介して新たなファンを獲得しようとしている。(取材・文=大宮高史)

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 スペインをテーマに1994年に開園した志摩スペイン村だが、年間入園者数は開業初年の約420万人がピークで、近年は約120~130万人にとどまっている。

 2022年5月7日に、VTuberの周央サンゴが定期配信の動画で志摩スペイン村を話題にした。現地を訪問した楽しさを、ユーモアを交えて早口になるほど熱弁。「みんな志摩スペイン村に行こう!」と魅力を語った。この動画が周央のファンによりSNSで大いに拡散され、周央サンゴとともに志摩スペイン村の知名度もユーザーの間で上がり、志摩スペイン村の公式ツイッターアカウントのフォロワー数は約1.5万から5万に急上昇した。

 周央が志摩スペイン村を動画で取り上げるのは2度目で、2021年12月にも「本当にいいところ」と訪問の感想を語っていたのだが、22年5月の動画がSNSで拡散されたことで大きく話題に。周央の感情豊かで時折早口で魅力を熱弁する語り口も、視聴者が志摩スペイン村に興味を持つきっかけになったようだ。

 この2度目の動画がきっかけで、周央と志摩スペイン村の正式なコラボが実現。園内を貸切で大いに楽しんでレポートする動画が22年8月16日に投稿され、アトラクションや食べ物を興奮しながら楽しむ様子が伝えられた。「動画で見ているみんなは何にも分かってないだろうねスペイン村の楽しさを。だって来てないんだも~ん」と現地で体感してほしいと呼び掛けている。動画は周央の公式チャンネルで投稿されていて、もともと旅行や遊園地に親しい層ではなく、VTuberのファンに向け発信されていることがわかる。

 志摩スペイン村の営業企画部の広報担当者は、一連の周央の活動とのかかわりをこう振り返る。

「周央さんは志摩スペイン村の魅力を率直に、また愛をたっぷり込めて伝えてくださり、大変うれしく思います。動画をきっかけに志摩スペイン村公式ツイッターも周央サンゴさんと交流するようになりました」

 2021年の1回目の動画から志摩スペイン村は周央の活動を知っていたが、大きく知名度を上げた2回目の動画がきっかけでコラボが実現。「志摩スペイン村の魅力をよりサンゴさん目線で配信していただきたいということで、22年8月に正式にコラボ動画を配信しました」(志摩スペイン村営業企画部)。VTuberのユニット「にじさんじ」に所属する周央の影響力もあってここまでのインパクトになった。

 志摩スペイン村はオンラインゲームのプラットフォーム「Roblox」にも進出中だ。今月20日からはRoblox上でテーマパーク「パルケエスパーニャ」の景観を3DCGで再現し、スペインの「牛追い祭り」「トマト祭り」をモチーフにした生き残りゲーム「Running of the bulls」が公開されている。本場の牛追い祭りのようにVR空間の牛から逃げ切るゲームで、23年4月2日までの期間限定で、ゲームの成績上位10人に志摩スペイン村のペアパスポートをプレゼントする企画も実施中だ。

 Robloxでのパルケエスパーニャ実装は、メタバースコンテンツを制作するnewtrace株式会社の企画による。CG×テクノロジー×空間演出力をコンセプトに、社会や企業の課題解決を行っている同社の代表の柴原誉幸氏が三重県出身だった縁から企画が立ち上がった。

「柴原さんは三重県のご出身で、地方出身者として過疎や人口減少、地方経済力の縮小などを憂いていたところ、小さいころに何度も家族で訪れた思い出のある『志摩スペイン村』をCGで再現することにより、三重や関西に足を運んでもらえるきっかけになればと思ったそうです。志摩スペイン村としましては、志摩スペイン村にいるような感覚になれ、まだ来たことのない方や海外の方にも志摩スペイン村の魅力を伝えることができると考え、実現にいたりました。今までなかった取り組みであり、世界規模で話題になっているコンテンツに志摩スペイン村が関われて大変嬉しく思います」(志摩スペイン村営業企画部)

 開園直後のブームが過ぎた後、長期不況とテーマパーク冬の時代のあおりを受けて入園者減に悩んでいた志摩スペイン村。周央サンゴも動画で語ったように、地方ゆえに交通に恵まれないことも弱点だったが、インターネットやVRカルチャーを通じて現地に行ったことがない層へもアピールしている。

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