桐谷健太、家族は“音楽一家” 幼少期はモーツァルトヘビロテ 42歳で歩む俳優と音楽の両立

俳優で歌手の桐谷健太が自ら作詞を手掛けた新曲「夢のまた夢」を発表した。役者としての充実ぶりに加え、歌手としても代表曲「海の声」をはじめ、存在感のある歌を歌い続ける42歳。そこで今回は新曲の話も交えながら彼の音楽好きな一面を徹底的に紹介する。次々と飛び出す興味深い話……気が付くと目の前には素顔の桐谷が座っていた。

桐谷健太【写真:舛元清香】
桐谷健太【写真:舛元清香】

桐谷健太の音楽好きな一面を徹底紹介

 俳優で歌手の桐谷健太が自ら作詞を手掛けた新曲「夢のまた夢」を発表した。役者としての充実ぶりに加え、歌手としても代表曲「海の声」をはじめ、存在感のある歌を歌い続ける42歳。そこで今回は新曲の話も交えながら彼の音楽好きな一面を徹底的に紹介する。次々と飛び出す興味深い話……気が付くと目の前には素顔の桐谷が座っていた。(取材・文=福嶋剛)

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――桐谷さんと音楽の出会いは?

「物心ついたときからです。うちの家族、父親も母親も兄貴もみんなギター弾いていたんです。兄貴も父親もよく家で歌っていましたし、母親も昔のアルバムを見るとギター弾いている写真があって。だから当たり前のようにそばに音楽がありました。ちっちゃい頃は母親のモーツァルトのカセットをヘビロテしてましたね(笑)。寝る前は喜多郎さんのシンセサイザーで……」

――「シルクロードのテーマ」ですね。

「そうそう(笑)。だから音楽はインストゥルメンタルから聴き始めました。最初に小遣いで買ったのは、すぎやまこういちさんの交響組曲『ドラゴンクエストIII』のカセットテープ。それで中学生になって流行りの音楽を聴き始めて、高校になって洋楽を聴いたんです。ニルヴァーナとかビートルズとか」

――バンドを始めたのは高校からですか?

「ラグビー部にいたんですけど、かけ持ちで軽音部に入ったんです。文化祭とかで目立つんやったら普通はボーカルとかギターですよね? でも僕はドラムが『かっこええな』って」

――目立つことが好き?

「そうでしたね。結局、文化祭ではドラムだけじゃなくてボーカルもやりました(笑)」

――バンドは楽しかったですか?

「もちろんですよ。小学校とか中学校からずっと一緒やった友達とバンド組んで最初にスタジオで音出した瞬間の『これ、めっちゃ楽しいわ!』っていう感動は今でも覚えています。ギターのやつが激しい系の音楽が好きでオジー・オズボーンとかラモーンズとかのコピーやってバンバン叩いて、激しすぎるんで演奏の途中からよう分からんようになってね(笑)。楽器屋の独特の匂いも好きでしたね。今でも用もないのに楽器屋を見つけたら入りたくなるんです」

――楽器好きにとっての「おもちゃ屋」というか。

「それありますね。スティック触って太さを確かめてどれにしようって迷う感じがいいですよね。僕マニアックじゃないんですけどドラムやってた頃はどんな曲を聴いてもドラムの音ばかり集中して聴いていましたね」

――将来プロになりたいとか?

「あの頃はおっきなステージに立って人前でめっちゃ気持ちよく歌ってる自分みたいな妄想ばかりしてました。あと5歳のときに映画を見てから役者になりたいってずっと思っていたのでスクリーンの中やステージの上に立つ夢はいつもありました」

――面白いものを見つけたら後先考えずに飛び込んでいくタイプですか?

「ほんまにそういう感じです。三線もそうでした。中学校の頃に沖縄の宮古島に行って飛行機から降りて沖縄の風がふわーっと体を包んだ瞬間、ものすごい鳥肌が立って。大阪出身なのになぜか懐かしさを感じたんです。そっから沖縄が大好きになって三線の音色も好きでよく聴いていたんです。そのあと、しばらくして地元で撮影していたら実家の近くにまさかの三線の専門店ができていて(笑)」

――三線のお店って珍しいですね?

「ですよね? 普通そんなことないじゃないですか。すぐ店に入って三線を買って独学で練習を始めたらめっちゃ楽しくて。それでバラエティー番組でちょこっと披露させていただいたら、auのCMのクリエーターさんがたまたまそれを見ていたんです。当時、僕がイナズマ戦隊さんと歌った『喜びの歌』とテレビで見た三線からインスパイアされて『浦ちゃん浜辺で』っていうのを思いついたらしいんです。それで生まれたのが『海の声』です。ほんまに全部不思議な縁。好きやったもんを『今やっとこう』って楽しくやったら全部がつながったっていう」

――鳥肌ものですね。

「そうなんですよ。実は今回の新曲『夢のまた夢』もまた縁が重なったんです」

――どんな偶然ですか?

「去年『京都国際映画祭2021』で『三船敏郎賞』をいただいたとき、『ゲロッパ!』(2003)でご一緒した武正晴さんも『牧野省三賞』を受賞されて久しぶりに再会しました。当時は駆け出しの役者と助監督という間柄で『お互い必ず上にいこう』なんて話をよくしていたんですが、その再会がきっかけで武さんが監督した『嘘八百』という作品の主題歌を歌わせていただくことになりました」

――それはうれしい出来事ですね?

「自分が出演しない作品で歌だけというのは初めてで、僕を歌手として認めていただいたこともうれしかったです。武さんは作品の肝になるお宝の茶碗『鳳凰』(ほうおう)のイメージと僕の浮遊感のある歌声がマッチするという話をされて、それを聞いてなんとなく浮遊するイメージが僕の中で湧いたので歌詞を作りたいなと思っていたら、ある日、寝起きに次々と言葉が出てきてバーっと一気にメモして歌詞の骨格ができたんです。そして作曲を担当いただいたキヨサクさんとも偶然が重なって」

――どんな偶然でしょう?

「今年の夏、音楽番組でBEGINさんと沖縄の首里城の前で歌ったんですが、本番前に展望台みたいなところでボーっとしていたらキヨサクさんも偶然いらっしゃって、そこで初めてお会いしました。いろいろと話をしながら『またぜひお会いしましょう』といって別れたんですが、そのあと『夢のまた夢』の作曲がキヨサクさんに決まったって知らされて驚きました(笑)。一度お会いしているから、僕のことも分かってくださっていて出来上がった曲はめっちゃ最高でしたし、スペアザ(=SPECIAL OTHERS)さんのアレンジも素晴らしくて自分が聴きたいって曲ができました」

不思議な縁で完成した新曲「夢のまた夢」【写真:舛元清香】
不思議な縁で完成した新曲「夢のまた夢」【写真:舛元清香】

いつかやってみたい全国ツアー

――歌はいかがでしたか?

「歌に関しては単純に自分が心地良いかを1番に、そして、その曲を聴いた人がどう感じてほしいかという気持ちを大切にしているので今回は、明るい気持ちになってくれたり、幸せを感じてもらえたらうれしいなという思いで、余計なことを考えずに歌ってみました」

――新曲「夢のまた夢」はタイトルのまま、「夢」がテーマになっています。

「大人って周りの目を気にしすぎるところがあるじゃないですか? 人って自由やし、もっと好きなことをやった方が自分らしさを出せると思っていて。大人になっても青春は謳歌(おうか)できるのに大人になったらできなくなるっていうのは、そういうふうに自分を信じ込ませているだけなんで『そんなことないよ』って歌詞で言いたかったんです」

――お話を聞いていると桐谷さんの体中からいろんな「好き」があふれている印象で。

「ホンマですか? 僕は子どもの頃に感じた楽しいとかワクワクする感覚ってすごく大切やと思っていて、日々の散歩1つ取っても見方次第で冒険になるんですよ。子どもたちなんか毎日冒険してますよ。実は42歳になって何があったという訳ではないんですけど、心の変化としてすごくいい節目を迎えています。なんか漠然と『これからもっと面白くなるぞ! 行こうぜ!』みたいなのをめっちゃ強く感じています」

――どの辺にそれを感じましたか?

「感覚がより研ぎ澄まされてきたというか。心の感度がすごく上がって自分の心の声がよく聞こえるようになったんです。そしたら今まで見えなかった世界が見えてきて、感動することも増えました。もちろん思い悩んだりする時間もありますが、それをもパワーに変えてやってます。そして体も若返っている感じがします」

――気持ち1つで物事は変えられる?

「まさに。今まで人に嫌なこと言われて傷付くのが怖かったときもありましたが、今はそれさえも自分で変えられるって分かったから、だいぶ自信がつきました。子どもの頃に感じた超ワクワクする感じ、あれはやっぱり本物ですね」

――忘れてはいけないもの?

「忘れたら寂しいですけど、わざと忘れんとこうっていうもんでもなく、今もそれができるって思い続けることが大切なのかなって。そこって自分のことなんでうそはないじゃないですか。僕自身、5歳のときから役者になりたいとずっと夢見て妄想してきましたけど、そういう自分を今もちゃんと素直に信じてあげたいって思ってます。自分の本当の声を聞いてあげられたら間違いはないなって」

――俳優として忙しい毎日だと思いますが、もっと音楽活動をしてほしい、ライブを見てみたいって思っている人もいっぱいいると思います。

「いつかやってみたいです。友達にも『ツアーとかやらんの?』って言われて、『そこは考えてなかったわ!』って(笑)。たしかに気の知れたバンドメンバーと全国回ってちっちゃい打ち上げしながら歌うってめっちゃ楽しそうですよね。ほかにもまだまだ自分が気付いてないことっていっぱいあるし、これからもオモロいこと見つけながら、いい感じの柔らか~い高揚感をいつも持っていたいですね」

□桐谷健太(きりたに・けんた)1980年2月4日大阪府出身。2002年にテレビドラマ「九龍で会いましょう」で俳優デビュー。数多くの映画、ドラマ作品に出演。野性味と繊細さを兼ね備えた演技で独自のスタイルを築き、オリジナリティあふれる役者として高い評価を得ている。高校時代は軽音楽部に所属、表現力あふれるボーカリストであるとともに、ミュージシャンとしての豊かな音楽感性を持ち合わせ、ドラム・三線を弾きこなす。映画「 BECK」でのラップ・ボーカルパフォーマンス、映画「ソラニン」でのドラム・プレイ、“au三太郎シリーズ TVCMオリジナルソング”としてオンエアされ大ヒットを記録した「海の声」での三線など数々の映像の中でその多才さを発揮している。

次のページへ (2/3) 【動画】桐谷健太が歌う「夢のまた夢」MV(映画『嘘八百 なにわ夢の陣』主題歌)
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