フェアレディZ、オーナー同士がゴールイン 夫婦でドライブは「トランシーバーを積んで」

愛車が縁でつながる人と人。それが、ゴールインともなれば、運命は車を手にしたときから始まっていたのかもしれない。神奈川県・横須賀市の下田憲司さん、由起子さん夫妻は、互いに日産フェアレディZに乗っていたところ、オーナーズクラブで知り合い結婚した。互いの第一印象、そして結ばれて愛車生活はどう変わったのだろうか?

2台のZが縁で結婚した下田夫妻【写真:ENCOUNT編集部】
2台のZが縁で結婚した下田夫妻【写真:ENCOUNT編集部】

パッソからZに移行のワケ マニュアル練習台にサニトラ購入

 愛車が縁でつながる人と人。それが、ゴールインともなれば、運命は車を手にしたときから始まっていたのかもしれない。神奈川県・横須賀市の下田憲司さん、由起子さん夫妻は、互いに日産フェアレディZに乗っていたところ、オーナーズクラブで知り合い結婚した。互いの第一印象、そして結ばれて愛車生活はどう変わったのだろうか?(取材・文=水沼一夫)

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 由起子さんの愛車は1975年式のフェアレディZ 2by2だ。2014年に購入し、もうすぐ8年がたつ。

 その前に乗っていたのは、トヨタのコンパクトカー、パッソというから驚き。どうして?

「きっかけは父親が同じタイプの車に乗っていたので、自分も大人になったら乗りたいと思っていたんです。ちょうど、これを買ったころ、何か趣味をやろうと考えていて、車いいなと思って、その憧れを前倒しにして探してもらって、手に入れたという感じですかね」

 とはいえ、すぐに乗れる車ではなかった。マニュアルでハンドルも重たい。中古車店からは「探してあげるけど、ちょっとこれの前に1個挟めば」と助言され、日産のサニートラックを購入した。それを練習台に、半年間乗り込んだ。「免許は取っていたんですけど、実際運転はしていなかったので、久々のマニュアルでリハビリをして、次に行ったみたいな感じです」

 サニトラに慣れたタイミングで、Zに移行した。父のZとカラーも同じだった。

 オーナーズクラブの門をたたいたのは15年だ。お台場でブースを訪れたが、メンバーは年配男性ばかり。

「ちょっと見に行こうと思って、テントがあったので行ってみようかなと思ったんですけど、おじさんしかいないので入りづらいなと思いながら、2週目ぐらいで入っていって、『クラブ入りたいんですけど』と伝えました」。メンバーは55人ほどで、女性は由起子さんのほかに1人しかいなかった。

 憲司さん「そのとき来たのは覚えている。第1印象は『お、20歳ぐらいのお姉ちゃんが来たぞ!』と」。

 由起子さん「言い過ぎだね」

 憲司さん「女性オーナーは珍しいからね(笑)」

 一方、由起子さんは「よくしゃべるおじさんだなと。でも明るい人だな、面白いなと思って」との印象を持った。

 憲司さんの職業は専門学校の先生だった。「職業柄なのか、そんなことも知らないの? とかそういうことは絶対言わないので。それもよかったですね」と由起子さん。

 やがて意気投合し、交際に発展。19年にゴールインした。憲司さんの愛車は1973年式のフェアレディ240ZGで、「Zが縁で結婚したみたいなっていう感じです」と由起子さんは言った。

 既婚夫婦で車は夫の趣味というカップルは多い。しかし、憲司さん夫婦にとって車は共通の趣味だ。

「男性のほうが古い車に乗っていて、女性のほうは『ちょっと暑いし、臭いし、あまり好きじゃない』とか、よく聞くんですけど、元々Zに乗っていたので、共通項になりますね」と、互いに理解し合うことができるという。

 2人でドライブは「しょっちゅう。どっちかの車に乗っていくか、2台で行くときはトランシーバーを積んで」(憲司さん)とユニークだ。

 由起子さんが「道順がね、私がよく迷子になるので」とうなずくと、憲司さんも「便利なので。トイレ行きたいときとか、買い物とか」と続けた。

 どちらかというと、2台で行く機会のほうが多いそう。

「1台で行くのも身軽でいいですけど、それぞれやっぱり自分の車に乗りたいんです。たぶん普通の人の考えだと、『一緒に乗ればいいじゃん』となると思うんですけど(笑)」と、声をそろえた。

 車にかける維持費も別会計だ。

「普通だったら、どっちかから文句が来たりとかあるでしょうけど、うちはそれないです。やりたいことができるし、好きなようにいじれる」。車にかける趣味代は、パートナーの理解を欠いて、しばしば衝突の原因になることも。しかし、憲司さん夫婦には当てはまらない。

「すごくいいと思いますよね。だいたいはたぶん旦那に奥さんが『もうそんな趣味やめなよ。お金ばっか使って……』みたいなこともあるだろうけど、そういう部分で理解あるのは楽ですよね」と、憲司さんはホッとした表情を見せた。

美しいリアショット【写真:ENCOUNT編集部】
美しいリアショット【写真:ENCOUNT編集部】

極上のガレージハウスが完成 バーも併設の理想空間

 由起子さんのZは、ゴールドのホイールがインパクトを放つ。「車体が地味なのでちょっと派手にしたかったというのはあります」。タイヤは太目、マフラーはステンレスのデュアルマフラーにカスタムしている。

 路上でも注目を集める1台だ。

「旦那さんもそうですけど、今まで会ったことがない人たちと車の話をしたりとかこれに乗っていると声をかけられることも多いんです。全然知らない人から、前乗ってたよとか、好きだったんだよとか、そういうお話も楽しいですし、世界が広がったかなと思います」

 憲司さんと出会い、人生も変わった。

「人生が楽しくなったと思います。今もそうですけど、買ったときはいろいろ不具合が出たりして、その都度直してもらったりしていました。でも何か嫌になることはなかったんですね。面倒くさいも含めて、楽しいなっていう。やっぱり運転しているときの音ですね。転がしている感、車運転してるぞみたいな、それが楽しいです。ただ移動するだけじゃなくて、テンションが上がります」

 入籍を機に、憲司さんからはビッグなプレゼントがあった。「2台の車を入れるためにガレージハウスを建ててくれた」。愛車を大切に保管するための屋根。室内にはバーも併設しており、Zが2台並ぶ光景を眺めながら、酒が飲めるようになっている。旧車乗りにとっては、まさに理想の空間だ。

 元パティシエの由起子さんは横須賀市内にケーキ店をオープンする予定。憲司さんは妻の夢を応援しつつ、可能な限り、愛車に乗り続けることを目標にしている。

「(車を降りるのは)年齢的に、俺のほうが先になると思います。ハンドルが回せるうちは、乗ります。よくパワステつけた人多いですよね。あれをつけるなら乗らないです。そして、やっぱり託したいですよね、ちゃんと乗ってくれる人に。次の世代に乗ってもらいたい」と前を見つめた。

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