【RISE】山田洸誓、30歳で引退は「ずっと決めてた」 対抗戦で示す感謝「魅力的な選手がいっぱい」
年間最大級の立ち技格闘技イベント「Cygames presents RISE WORLD SERIES / SHOOTBOXING-KINGS 2022」(東京・両国国技館=ABEMAで全試合無料生中継)が25日行われる。「聖夜の最狂決定戦」と題したこの大会はRISEと“世界の銀河系軍団”GLORYとの対抗戦。山田洸誓(正道会館KCIEL)にとっては引退試合となる今大会で初代RISE世界スーパーライト級王者でGLORY世界フェザー級王者のペットパノムルン・キャットムーカオ(タイ)に挑む。世界最強に挑む心境や30歳での引退について話を聞いた。
世界最強を前に落ち着いている山田は“平常心”を強調
年間最大級の立ち技格闘技イベント「Cygames presents RISE WORLD SERIES / SHOOTBOXING-KINGS 2022」(東京・両国国技館=ABEMAで全試合無料生中継)が25日行われる。「聖夜の最狂決定戦」と題したこの大会はRISEと“世界の銀河系軍団”GLORYとの対抗戦。山田洸誓(正道会館KCIEL)にとっては引退試合となる今大会で初代RISE世界スーパーライト級王者でGLORY世界フェザー級王者のペットパノムルン・キャットムーカオ(タイ)に挑む。世界最強に挑む心境や30歳での引退について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
「間違いなく過去最強の相手」だがあくまで“平常心”と強調する。山田の声は道を極めた者のように落ち着いていた。
27歳のペットはGLORYの王者であるうえにRISEスーパーライト級王者。RISEのエースである原口健飛に2度も勝利している強敵だ。
「やりたいと思っても出来る相手ではないんで、本当にうれしいですね、感謝です。(試合をすることで)今の立ち位置も分かるし、怖いとか全然ないっす、楽しみしかないです」
その強さについて「ブレない動きをする。貫き通す強さっていうのが強さ」と分析。それでも「年齢と気持ち」は負けないと笑顔になる。
「経験値とかはね、世界の強豪と戦ってきてるから、向こうは何倍もある。それでいて勝ってきている選手だから生ぬるいことは言えないですけれど、年齢と気持ちですね」
ペットを「純粋にすごい」と称賛する。しかし、山田も8月の試合で“世界”を倒している。GLORY世界フェザー級5位であったヤン・カッファ(オランダ)相手に3RKO勝ちしていた。
「あの試合は自分のなかでもベストバウトですね。やりたいことができた一戦だったので、自信にはつながったし、経験値にもなったので良かったです」
今大会は対抗戦であるが、山田にとっては引退試合という特別な日となる。それでも自分のことよりも「RISE」だと当然のようにうなずいた。
「対抗戦の意識が強いですね。自分がやめるからどうとか気にしてなくて、RISEのためにとか、RISEで今後戦っていく(原口)健飛くんとか魅力的な選手がいっぱいいてるんです。そこに少しでも貢献できたらいいかな。爪痕ちょっと残せたらいいかなって思います」
RISEを代表して戦う対抗戦で世界最強の相手を前にしても怖くはない理由。山田は“空手”時代を振り返る。
「なんでなんですかね。自分が所属している正道会館の試合とかで他流派の選手を優勝させないというか、持っていかれたらあかんみたいな。そういう怖さ、修羅場、いろいろな壁を乗り越えてきたんです。人が怖いというよりもプレッシャー。今回に関しては別にそういうものはないので。チャレンジャーなんで全然(怖さは)ないです」
「最初はチャンピオンベルトに興味もなかった」
6月の「THE MATCH 2022」とキックボクシング界が大きく動いた2022年。山田にとっても大きな1年だった。苦手だったSNSも本格的に始動。ツイッターのフォロワーは1万人を超えた。
「濃かったですね。自分の立場が変わったわけじゃないですけれど、1年前にこうなるじゃないですけれど、いろんな人に見てもらえるというのが多くなった。THE MATCHは大きかったですね、規模が違うというか。選ばれた選手はみんな言いますけれど、あれは本当に大きかったですね」
“喧嘩自慢”などのエンタメ路線の格闘技も今年は流行した。K-1の安保瑠輝也とともに企画に挑戦したこともある山田が思いを語る。
「ひとつのジャンルとして結構成り立ってるというか、あんまり格闘技を知らない人とか興味ない人もそれを見るというのは、いろいろな人から聞いて、あ、(見ている人が)多いんやなって思っています。そこから格闘技を知るというのも多いらしいんですよね。SNSであれがダメだと書くひとも多いけれど、自分はいいんじゃないかなって思いますね。そういったところから知るのはいいんじゃないですかね」
知名度も強さも上り調子のなかでの引退発表。ファンにとっては8月のカッファ戦の興奮冷めぬなかでの突然の出来事だった。なぜ、今なのか。
「自分のなかで30歳っていう節目っていうか区切りがあって、それはずっと決めてた。なんならもっと手前でやめたかったっていうのがあるんですけれどRISEでチャンプになった時点でもういいかなって」
「最初はチャンピオンベルトに興味もなかった」という山田、一戦一戦をまるで脳内で再生しているかのように振り返っていった。
「正直、自分は空手でやってきていて空手で王者になって、肩書きもできたし、自分が指導者としてやっていこうと思っていました。そんな矢先にRISEさんからのチャンスをいただいたんです。そこから1戦、2戦ととんとん拍子でいって(笑)。最初はもうキックってめっちゃ簡単な世界やな。しかもお金もらえるでしょ。空手ってお金もらえないので、めっちゃ良い世界やなって。65キロがそのときチャンピオンいなかったんで意識し始めたのはそこからですね」
チャンピオンを目指す過程で意識は変わっていたという。
「王者になって人間的にも成長できた。キックの世界も空手でトップをとった時の感覚と似てきて、トップに上がるというのはどの世界でも大変なんやなって。『チャンピオンなってからがスタートや』って言われてたんで、本当にその通りかなって思いますね」
気になる引退後だが、山田には明確な目標があった。
「自分の住んでいる、四国の愛媛っていう田舎は都会に比べると選手も少ないし、環境もそんな。微力ですけど、自分発信で、いろいろな格闘技の大会とか自分の道場から選手を輩出したりとか、そういった部分から盛り上げていきたい。地方創生したいです」
自分にはこれしかないといいながらも、その眼差しには熱がこもっていた。
「格闘技にはずっと携わっていきます。だから選手終わってからのほうが忙しいんじゃないですかね」