最高時速75キロ、ジムニー女性オーナーがあおり運転減らした“秘策”「これでも全速力!」
スズキの名車ジムニーSJ10。女性オーナーの平山さんは、3年ほど前に愛車として迎え入れた。きっかけは、刑事ドラマ「太陽にほえろ!」の“マカロニ刑事”こと萩原健一(ショーケン)さん。ジムニーLJ20に乗った登場シーンが子どもながら脳裏に刻まれ、大人になって待望のジムニーオーナーになった。憧れの旧車は高速道路でも75キロがやっとだが、ジムニー仲間の輪が広がるなど、刺激的な日々を送っている。
きっかけは「太陽にほえろ!」の“ショーケン”
スズキの名車ジムニーSJ10。女性オーナーの平山さんは、3年ほど前に愛車として迎え入れた。きっかけは、刑事ドラマ「太陽にほえろ!」の“マカロニ刑事”こと萩原健一(ショーケン)さん。ジムニーLJ20に乗った登場シーンが子どもながら脳裏に刻まれ、大人になって待望のジムニーオーナーになった。憧れの旧車は高速道路でも75キロがやっとだが、ジムニー仲間の輪が広がるなど、刺激的な日々を送っている。(取材・文=水沼一夫)
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「太陽にほえろ!」は1972年から86年まで日本テレビ系で放送されたドラマだ。平山さんは小学生のときにリアルタイムで視聴していた。
「当時ライブで見て、印象があったんですよ。ショーケンの初回の登場シーンに出てきたんですね。だから非常に印象に残っていて、大人になってもう1回DVDを見たら、本当だったから、うわーっと思ってまた血が騒ぎました。かっこいいなって」
それがきっかけで、近いジムニーを探した。「いろいろ探していたら河口湖にオーナーさんがいらっしゃったんですよ。そこまで車で買いに行ったんです」。
ナンバーの「2312」は、「太陽のほえろ!」のマカロニ号と同じだ。長年、オートマに乗っていたが、マニュアルを猛特訓。今では「面白すぎて。今はマニュアルじゃないと嫌ですね。運転がすごく楽しい」とすっかりのめり込んでいる。
大きなカスタムはしていない。室内の天井に吊るされたレトロなランプは前オーナーから納車祝いでプレゼントされた。「この車を見に行ったときにかわいくて、褒めまくっていたら『いいですよ、納車のときにお祝いであげます』と言われて、後から送られてきました」。備品を受け継ぎながら、DIYでおしゃれな内装に仕上げた。
後部座席には小さないすがある。「幼稚園のいすみたいに乗れるんですよ(笑)。大人の男の人が乗れました。この車は3人乗りなんです」。思い入れが詰まったジムニーは、遊び心にもあふれていた。
そしてリアには羊のキャラクターとともに「これでも全速力!」のステッカーが貼られている。これはいったい?
「前の会社のデザイナーさんに作ってもらったんです。昔アメコミで“ラムジーちゃん“というのがあったんですよ。『ラムジー』と『ジムニー』で似ているから、ラムジムニーでいいやって作っちゃったんです。車も羊っぽい白だし(笑)」
メッセージには、後続車への切実な訴えも込める。
「私のジムニーは、現代の車と比べたら恐ろしいほどスピードが出ないので、チンタラ走ってるんじゃないかと思われないように。必死に走ってるんです!!(笑)だから “これでも全速力なんです、どうぞ行ってください。お先にどうぞ“というメッセージですよね。これを貼るようになったら、あおられることもなくなりました」
高速道路では「80キロ出したことないです。一番マックス75ぐらいまで出したけど、怖くてそれ以上はやれてないですね」と慎重だ。
“先輩”たちから悲喜こもごものエピソードを聞いており、「皆さんに聞くと、イベントに行くともうおかしくなっちゃったとか、そのままドナドナで、トレーラーで引かれて帰っちゃったとか多いらしいですよ。だから積載車にジムニーを乗せてからイベント会場に行くとか多いみたいですね」と苦笑した。
旧車は「最高に楽しい」 夢はジムニーの「聖地」訪問
熱心なマニアが多い車だ。平山さんがSNSに写真を投稿したところ、ジムニーのオーナーズクラブから誘いがあった。
「写真をアップしたら、インスタとかフェイスブックでもすぐお誘いが来ました。『女性は珍しいのでぜひ入ってください』と声がかかって、2つのグループに入っています。友達も増えたので、横のつながりじゃないけど、いろんな年齢層の方とお話できるのは楽しいですねす。すごく世界が広がったと思います」
驚いたのは他のオーナーの熱量。「めちゃコアです。話しかけられちゃうと困っちゃうときがありますね。何も答えられないから、すみませんって(笑)」。時折、トークに圧倒されながらも、ジムニーの奥深い魅力を感じている。
1981年式の古い車だけに、日ごろは神経を使っている。暖気運転は欠かせない。白煙もすごい。「時代と逆行してる車なのでちょっと心苦しいです」との思いもある。サビが気になるため、雨の日は極力乗らないようにしている。
細かいトラブルも日常茶飯事だ。「やっぱり希少価値というか、もう今ほとんど流通していないから部品とかがすごくなくて……」。だが、そのときも、ジムニーオーナーのサポートに救われた。
「実は去年、ミッションが壊れたんですよ。そのときもインスタ関係で全然会ったこともない方からDMいただいて、『僕3つあるから1つお譲りしますよ』と言われて。『僕も部品で困っているときに他の方にそういう親切をされたので、ぜひ受け取ってください。お金はいらないですから。本当に無償でいいですよ』と厚意をいただいて車検に通ったんですよ」
平山さんにとって、初めての旧車。フィアット500(チンクエチェント)からの買い替えだった。
「もう最高に楽しいです。よく街中を走っていると、信号待ちで全然知らないおじいさんとかおじさんが手を振ってくれたりとか、あとわざわざバイクの人が信号待ちのときに横まで来てコンコンってされて、『いい音してるね』とか言われたりとかします。タクシーの運転手さんの方も『2ストいいね』と声をかけてくれることが多いです」
車の歴史を感じさせる光景だ。
さらに、念願の旧車イベントにも初参加した。その舞台は11月に横浜赤レンガ倉庫で行われた「横浜ヒストリックカーデイ」。特別な理由があった。
「ずっと念願だったんですよ。3年ぐらい前に同じジムニーのほろ車に乗っているおじさまがいて、その後ろに乗せてもらったときからいいなと思っていました。それもあったんですよ。だから何かご縁で初参加できたのは一番うれしかったです」
やりたいことはまだほかにもある。
「夢は藤沢にジムニー博物館ってあるんですよ。ジムニー専門店のアピオという会社の社長さんが自分の資材で作った博物館で、私はそこに行きたいなと思って『聖地』と呼んでいるんですけど、仲間をお誘いしようかなと思っています」
一瞬で心を奪われた萩原さんの姿は、いつまでも色あせない。
「やっぱりショーケンに出会っていなかったらジムニーのオーナーにもなっていなかったので、そういう意味では今でもすごく感謝かなと思います」と結んだ。