「イル・ディーヴォ」の貴公子セバスチャン・イザンバール 盟友カルロスの死を乗り越えて

世界的ボーカルグループ「イル・ディーヴォ」。これまで3000万枚以上のレコード・セールスを記録するなど、数々の偉業を成し遂げてきたメンバーの中で貴公子的な存在として知られるセバスチャン・イザンバール(=セブ)が、これからの季節にぴったりのソロアルバム「フロム・セブ・ウィズ・ラヴ」をリリースした。昨年末、新型コロナウイルスに感染して亡くなった中心メンバー、カルロス・マリンさんへの思いや世界中のファンへの感謝を1曲1曲に詰め込んだ作品について話を聞いた。

「イル・ディーヴォ」のセバスチャン・イザンバール【写真:舛元清香】
「イル・ディーヴォ」のセバスチャン・イザンバール【写真:舛元清香】

「カルロスのことを思い出すと今も心が痛い」

 世界的ボーカルグループ「イル・ディーヴォ」。これまで3000万枚以上のレコード・セールスを記録するなど、数々の偉業を成し遂げてきたメンバーの中で貴公子的な存在として知られるセバスチャン・イザンバール(=セブ)が、これからの季節にぴったりのソロアルバム「フロム・セブ・ウィズ・ラヴ」をリリースした。昨年末、新型コロナウイルスに感染して亡くなった中心メンバー、カルロス・マリンさんへの思いや世界中のファンへの感謝を1曲1曲に詰め込んだ作品について話を聞いた。(通訳:丸山京子、取材・文=福嶋剛)

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――「イル・ディーヴォ」にとってもセブさんにとっても日本は大切な場所だとお聞きしました。

「これまで何度も訪れた日本ですが、やはり日本のみなさんの人に対する思いやりや尊敬の気持ち、東日本大震災後に来日した際にも感じた前向きな姿勢。そういったみなさんの精神性にいつも感銘を受けています。個人的には京都が大好きで日本に来るたびに行きたくなる街です。実は今回ソロアルバムを出すことになって来日したんですが、アルバムの中で日本語カバーによる『上を向いて歩こう』を歌っているんです」

――日本語の発音が素晴らしく、日本への敬意が伝わってきました。

「音楽を仕事にしている人間にとってそう言っていただけることが何よりの励みなんです。とてもいい1日になりましたよ(笑)」

――うれしいです(笑)。歌の練習も大変だったのでは。

「とても大変でした。慣れない日本語で歌うことで楽しみにしているファンのみなさんをガッカリさせないかと最初は心配でした。実は作曲家である中村八大さんのご子息の力丸さんから事前にメールをいただき、『上を向いて歩こう』の曲の意味や歌詞が何を指しているのか丁寧に教えていただきました。それを理解しながら歌で日本のみなさんに感謝の気持ちを伝えられるよう、心を込めて歌いました」

――そして大変つらい出来事についてもお聞きしなくてはなりません。昨年末、ツアー中にメンバーのカルロス・マリンさんが新型コロナウイルスに感染して亡くなり、世界中が大きな衝撃と悲しみに包まれました。

「そうですね。カルロスは仲間以上に、兄弟のような存在でしたし、彼から人生について多くのことを学びましたから……彼を思うと今も心が痛いですが、私の中には彼がいて、その存在はいつまでも消えません」

――しかし「イル・ディーヴォ」はツアーを中止することなく完走し、今年の春に日本でもコンサートを開催されました。

「カルロスにとって日本はとても大切な国でした。だから、僕たちが彼に代わって日本のファンのみなさんに癒やしを届けにいかなければいけない、そう思いました。ツアーを完走するためにいつまでも悲しんでいてはいけなかったんです」

――セブさんにとっても転機となる世界ツアーだったと。

「おっしゃる通り、大きなターニングポイントになりました。日常というのは普通にあるものではないと実感しましたし、だからこそ、1日1日、その瞬間を楽しんで生きることがどれほど大切であるかをカルロスが教えてくれました。僕は来年ソロコンサートでまた日本に戻ってくる予定です。そのときにはぜひステージからカルロスに何曲かささげる歌を歌いたいと思っています。」

――海外と違って日本のコンサートは今も観客はマスクをして声を出せない状況が続いています。あらためてステージに立ってみた感想は。

「たしかに海外とは違う状況というのはステージに立ってみてよく分かりました。しかし、国によって感染対策に違いがあるのは仕方のないことですし、一歩一歩明るい方向に前進していくものだと信じているので、決して焦ることはないと思います」

――今回リリースしたソロアルバム「フロム・セブ・ウィズ・ラヴ」は、さまざまなタイプのハートウォーミングな曲が収録されています。

「若いときはやっぱりスターを夢見たり、みんなに愛されたいと思ってこういう仕事を始めたりしたりしますが、年を重ねていくと今度はみなさんに愛と感謝のお返しをしたいっていう気持ちになってくるんです。自分はこれからどういったシンガーを目指していくべきなのかと。そんなことを真剣に考えて今回のアルバムを作りました。

 僕はフランク・シナトラやマイケル・ブーブレのような聴く人の魂を揺さぶる歌を歌っていきたいですし、コロナ禍やウクライナの問題でどうしても不安な心になっている多くの人に愛を与えられるものを作りたい。そう思って完成させたアルバムですが、クリスマスやこの冬に向けてぴったりの曲が多いなって感じています」

サービス精神旺盛で終始にこやかに話してくれた【写真:舛元清香】
サービス精神旺盛で終始にこやかに話してくれた【写真:舛元清香】

私にとって音楽は水や食料と同じ

――ずばりセブさんにとって音楽とは。

「僕にとって音楽は水や食料と同じで人生に欠かせないエッセンシャルなものです。病気になったときに元気を与えてくれたり、失ってしまった悲しみを乗り越えられたのも音楽のおかげです。実は昔、自宅がすべて焼失してしまったことがあって、そんなときも音楽があったから僕は苦難を乗り越えることができた。そんなふうに音楽はいつも僕を助けてくれる人生の一部です」

――セブさんは「イル・ディーヴォ」の中でもバラエティーに富んだ音楽性を持っています。子どもの頃はどんな音楽を聴いていましたか。

「幼い頃に母親がイギリス人プロデューサーと再婚してからイギリスの音楽をよく聴くようになり、人生最初のコンサートは7歳のときに見たデヴィッド・ボウイでした。ビートルズもよく聴きましたし、マイケル・ジャクソンのスリラーもドキドキしながらMVを見たのを覚えています。ほかにはデペッシュ・モードやデュラン・デュラン、ティアーズ・フォー・フィアーズ、ジョージ・マイケル、アンスラックス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなど、とにかく幅広く音楽を聴いていました」

――セブさんが今後目指す先は。

「次のイル・ディーヴォのアルバムで作曲もしたいですし、プロデュースにも関わりたいと思っています。また音楽以外では僕が経験してきたことや、たくさんの人から教えてもらった人生の大切なことを次の世代の子どもたちに何か伝えてあげられるようなこともしたいと思っています」

□セバスチャン・イザンバール 1973年フランスのパリ生まれ。独学でボーカルやギター、ピアノを修得し、歌手、俳優として活躍。2000年、初のソロアルバム「LIBRO」を本国フランスでリリース。ポップス・アーティストとして本格的なキャリアをスタートさせた直後、パリでカルロス・マリンと運命的な出会いを果たし「イル・ディーヴォ」のオーディションに合格。04年11月、「イル・ディーヴォ」のメンバーとして世界デビュー。22年9月、ソロ通算3作目、5年ぶりのニュー・アルバム「フロム・セブ・ウィズ・ラヴ」を全世界同時発売。23年、ニュー・アルバムを引っ提げたソロ・ツアーを日本でも予定。

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