専修大学長、大学ランキング“日東駒専”に持論展開 「受験産業が提供する情報のひとつに過ぎない」

専修大学(東京・千代田区)の佐々木重人学長が9月1日付で再任され、3期目に入った。任期は3年間。2016年からの1期目は大学で最も新しい学部となる国際コミュニケーション学部の立ち上げ準備やキャンパスの集約、19年からの2期目はコロナパンデミックとの闘いやオンライン授業実施体制の構築に奔走。3期目からは大学の教育目標である「社会知性の開発」のアップデートに取り組む。明治13年に創立された経済・法律専攻の「専修学校」が、現在では8学部20学科を擁する国内有数の大学として発展した。専修大学が目指す将来像を佐々木学長に聞いた。今回は後編。

3期目の抱負を語る専修大学の佐々木重人学長【写真:ENCOUNT編集部】
3期目の抱負を語る専修大学の佐々木重人学長【写真:ENCOUNT編集部】

ライバルは早慶やMARCHの学生ではなく“4年後の自分”

 専修大学(東京・千代田区)の佐々木重人学長が9月1日付で再任され、3期目に入った。任期は3年間。2016年からの1期目は大学で最も新しい学部となる国際コミュニケーション学部の立ち上げ準備やキャンパスの集約、19年からの2期目はコロナパンデミックとの闘いやオンライン授業実施体制の構築に奔走。3期目からは大学の教育目標である「社会知性の開発」のアップデートに取り組む。明治13年に創立された経済・法律専攻の「専修学校」が、現在では8学部20学科を擁する国内有数の大学として発展した。専修大学が目指す将来像を佐々木学長に聞いた。今回は後編。(取材・文=鄭孝俊)

――3期目は夜間部(二部)の統廃合の仕上げという大きな事業もあります。

「19年度に二部に入学した学生が今年、4年生になりました。来年度は若干名が学内に残りますが、再来年にはほとんどの学生が卒業していきます。そうなると二部で教鞭をとっていた教員の人的リソースを、新たな教育サービスに振り分けるチャンスが生まれてきます。例えば、体育会の学生は平日に試合があると授業に出られません。それを解決するために、体育会の学生向けにオンデマンド授業を配信するための仕組みを作れればいいなと思います。また、海外の国際交流協定校の授業をオンラインで学生に配信したり、国内でも遠隔地にいらっしゃる卒業生や地方で活躍している実業家の方々に、ゲストスピーカーとして登壇していただく際には、これまで時差の関係や、昼間の仕事と重なってしまったりといった問題がありました。そこに、夜間の時間帯に講義を行っていた二部の教育リソースをあてられれば、今までにない、刺激的な新しいタイプの教育サービスが提供できるのではないかと考えています。

――就職が良いという評価があります。ビジネス系の公認会計士などの支援体制についても教えてください。

「専修大学は、経済学部、経営学部、商学部といったビジネス系の伝統の学部があり人的リソースが厚い。特に会計や税務などは専門的知識の宝庫で公認会計士などの資格試験や、国家公務員などの採用試験合格を目指す学生がとても多いです。私が会計学科のクラス担任をしていたころ、クラスの24人中、20人が公認会計士を目標としていました。近くの大原学園と提携し、本学独自のプログラムを提供していますし、学内には公認会計士試験の合格を目指す学生を支援する『計修会』という専修大学公認の勉学団体もあります。卒業生とのネットワークを駆使して非常に良い成績を残しています」

――専修大学は140年以上の歴史がありますが、受験産業からは早慶、MARCHなどに続く「日東駒専」というグループに入っています。率直にどう感じますか。

「なぜ『日東駒専』なのかという考え方もありますが、受験生からすれば自身の学力や成績に基づいて受験校を測る情報であり、高校の進路指導の先生にとって指標にもなります。そこは否定しませんが、それら受験産業が提供する大学ランキングは情報のひとつに過ぎません。大切なのはランキングや偏差値によって自分が本当にやりたいことを見失わないこと。ライバルは早慶やMARCHの学生ではなく、“4年後の自分”だと思います。縁あって専修大学に入学した学生の皆さんには、専修大学が提供する教育サービスを使い倒してほしい。専修大学は資格に強いという評価を頂いていますので会計や税務の勉強に取り組む、あるいはグローバル人材を目指す、といった夢に向かって進んでほしいですね。小さな成功体験を積み重ねることで自己肯定感も生まれます。ライバルは自分だという信念があればきっと道は広がっていきます」

――ところで、著書に「近代イギリス鉄道会計史-ロンドン・ノースウェスタン鉄道会社を中心に-」があります。鉄道は好きですか。

「よく聞いてくれました(笑)。子どもの頃から鉄道が好きで、それが高じて鉄道会計を研究するようになりました。東京・銀座の老舗鉄道模型店『天賞堂』に通いつめまして、コツコツと長年鉄道模型を買い集めてきました。ただ、日本の職人芸として有名な『天賞堂』の鉄道模型は真ちゅう製で、高価なものは1車両40万円から50万円ぐらいします。アメリカの鉄道模型は4、5万円ぐらいで買えましたからそこからアメリカの鉄道に興味を持ち始めました。お気に入りは、山岳を走るユニオン・パシフィック鉄道4000形蒸気機関車、愛称『ビッグボーイ』です。それは1両の中に2両分の蒸気機関車が合体している超大型機関車です。35歳のとき、アメリカとイギリスに在外研究で約1年間滞在した折、シアトルからシカゴまでを2泊3日かけて鉄道旅行したこともありますね。途中で降車する際、車掌から『この地域には何もないぞ』と止められましたが、信念を曲げずモーテルに泊まって旅を続けました。また、同じ頃にヨーロッパの『オリエント急行』に乗ってイタリアのベネチアからドーバー海峡を渡ってイギリスのロンドンまで行ったこともあります。このペンケースは江ノ電の車両の型です。ネットで見つけたのですぐに買ってしまいました。趣味が学問につながるというのは本当に楽しいものですね(笑)」

□佐々木重人(ささき・しげと)
1978年専修大学商学部会計学科卒業。83年専修大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(経営学)。83年専修大学商学部助手。88年同助教授。95年同教授。2013~16年商学部長。16年より専修大学長。11~13年税理士試験委員。専門は会計史。
主な著書に「近代イギリス鉄道会計史-ロンドン・ノースウェスタン鉄道会社を中心に-」ほか。

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