「名前が同じ」で始まった加賀温泉郷PRと「モー娘。」加賀楓の縁 今ではファンの聖地に

石川県の加賀温泉郷では、同姓が縁でモーニング娘。’22のメンバー・加賀楓が同地のプロモーションに貢献してきた。とはいえもともと苗字以外につながりはなく、加賀を推すファンの熱量が業界を動かして実現したムーブメントが、約5年にわたり続いてきた。その加賀本人が2022年の12月10日に卒業する。ファンと地元をつないでプロモーションを展開してきた仕掛け人に、きっかけやファンへの気持ちなどを聞いた。

加賀温泉郷と加賀楓の限定コラボグッズも作られている【写真:大久保浩秀さん提供】
加賀温泉郷と加賀楓の限定コラボグッズも作られている【写真:大久保浩秀さん提供】

ファンの投稿が2つの“加賀”を引き寄せた

 石川県の加賀温泉郷では、同姓が縁でモーニング娘。’22のメンバー・加賀楓が同地のプロモーションに貢献してきた。とはいえもともと名字以外につながりはなく、加賀を推すファンの熱量が業界を動かして実現したムーブメントが、約5年にわたり続いてきた。その加賀本人が2022年の12月10日に卒業する。ファンと地元をつないでプロモーションを展開してきた仕掛け人に、きっかけやファンへの気持ちなどを聞いた。(取材・文=大宮高史)

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 加賀温泉郷には「加賀温泉」という名前の温泉があるわけではなく、加賀市付近の山中温泉・山代温泉・片山津温泉・粟津温泉の4つの温泉の総称。北陸屈指の温泉地であり、関西からは北陸本線の特急「サンダーバード」で乗り換えなしでアクセスでき、関東からは空路や北陸新幹線で約3~4時間でアクセスできる。モーニング娘。’22の加賀楓は2016年12月にグループに加入し、18年春から加賀温泉郷観光大使を務める。年々加賀と加賀温泉の縁は深まり、JR加賀温泉駅の一日駅長を務め、駅や観光施設には本人が登場するポスターがいたるところで見ることができ、加賀温泉駅には「加賀楓温泉駅」なる看板も登場した。

 もともと、東京都出身の加賀は名前以外に加賀温泉郷との接点はなく、同地の観光プロモーションを担っていた株式会社REACH代表でクリエーティブディレクターの大久保浩秀さんも彼女のことは知らなかった。加賀と加賀温泉を結びつけたのはファンの熱意だった。

 大久保さんは「すでに弊社で加賀温泉郷の広告を首都圏でも展開していて、それを見たモーニング娘。のファンが加賀さんのことをアピールしてくれたことがきっかけでした。これが17年頃のことです。どうなるかなという気持ちでまずは始めたのですが、観光大使になっていただいてからも私のSNSに、『彼女を起用してくれてありがとうございます!』といったメッセージをファンの方が寄せてくれたんです」と振り返る。

加賀温泉駅で加賀楓出演のポスターが出迎えるのも定番の光景になった【写真:大久保浩秀さん提供】
加賀温泉駅で加賀楓出演のポスターが出迎えるのも定番の光景になった【写真:大久保浩秀さん提供】

加賀ファンの熱さはハロプロの中でも別格

 加賀は12年から4年間ハロプロ研修生で、後輩メンバーの昇格も見てきた苦労人。その経歴から、彼女を応援したいファンの熱さはハロプロの中でも別格で、PRが盛り上がる後押しになったと大久保さんは分析する。

「自分たちが加賀さんと加賀温泉をつなげたという自負というか……キャンペーンが始まってからも、ファンの方々が実際に石川に来てくれて感謝を行動で示してくれていたんですね。もちろん温泉に人が来てくれて経済的なメリットもありますし、ハロプロと特に縁が強いわけではなかった場所ですが、ファンが加賀温泉郷を楽しんでくれることで、地元の方もアイドルファンへの偏見もなくなっていきました」

 以後、REACH社では明確にハロプロファンをターゲットにしたプロモーションを展開。ポスターやキービジュアルに加賀が出演するのはもちろんのこと、加賀ファンが使うミーム「加賀は引力」を特設サイトのタイトルに使う、ハロプロファンクラブからFSK(メンバー写真を使ったスタンドキーホルダー)付きの加賀温泉宿泊特別プランを発売……などで、すっかり加賀温泉は加賀ファンの聖地になってきた。「ファンの方々は旅行に行くとしっかりSNSなどでレポートしてくれます。またハロプロの中でも加賀さんのファンには特に女性が多くて、地元からすると皆さんマナーを守って旅行を楽しんでくれている。それも温泉街になじんだ一因かもしれませんね」。

 アイドル本人を通じて、ファンと温泉街のwin-winの関係が続いてきた。一時的なイベント出演のような一過性のものではなく、5年近くにわたって続いてきた点が特筆に値するだろう。だが、12月10日をもって加賀はモーニング娘。22を卒業。卒業後はダンスをより深く学びたいとコメントしていて、芸能活動を続けるかは不透明だ。果たしてプロモーションの今後はどうなるのか。

「加賀温泉観光大使に任期はありません。加賀さん本人がいなかったり新しい展開がなくても皆さんが加賀さんと加賀温泉を結びつけてくれる限りは、盛り上がっていけるのかなと思います」と大久保さんはここまで定着した加賀温泉とファンの絆に期待する。「私も最初はハロプロを全然知らなかったのが今では曲もたくさん聴いています。恐る恐る始めてみたら、所属事務所にも地元にも受け入れてもらって5年間楽しいお祭りになったと思います」。ムーブメントのきっかけを作ってくれたファンや協力してくれた地元には感謝しかない。

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