コスプレイヤーが海洋ごみ汚染を救う 日本財団との異例タッグ実現の背景

ペットボトルやプラスチック製品、ビニール袋などの海洋ごみが世界的な問題になっている。砂浜や沿岸を汚すだけでなく、海に生息する魚や生態系に大きな影響を与えている。日本では日本財団が昨年11月に海洋ごみ対策プロジェクト「CHANGE FOR THE BLUE」を立ち上げ、ごみの削減への取り組みをスタートさせた。そこでタッグを組んだのがコスプレイヤー。そこには意外な理由が隠されていた。

世界コスプレサミットで清掃活動に参加したコスプレイヤー【写真提供:日本財団】
世界コスプレサミットで清掃活動に参加したコスプレイヤー【写真提供:日本財団】

コスプレイヤーの発信力と意外な習性に着目

 ペットボトルやプラスチック製品、ビニール袋などの海洋ごみが世界的な問題になっている。砂浜や沿岸を汚すだけでなく、海に生息する魚や生態系に大きな影響を与えている。日本では日本財団が昨年11月に海洋ごみ対策プロジェクト「CHANGE FOR THE BLUE」を立ち上げ、ごみの削減への取り組みをスタートさせた。そこでタッグを組んだのがコスプレイヤー。そこには意外な理由が隠されていた。

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 海洋ごみによる海洋汚染が深刻だ。環境省の資料によると、日本における海洋ごみは年間2~6トンと推計され、世界ランキング30位にランクイン。海外からはどこへ行っても清掃が行き届いた美しい国として知られるが、実際は不名誉なランキングに名を連ねる。上位には中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、スリランカなどのアジア諸国が入っており、日本も例外ではない。

 そんな中、日本で大きな動きがあった。昨年11月、日本財団が海洋ごみ削減に向けたプロジェクトを発足。今年から本格的に全国でイベントを行うなど、啓蒙活動に力を入れている。

 国民意識の向上や企業や大学などステークホルダー(利害関係者)との連携、海洋ごみの調査などをテーマに掲げ、具体的な取り組みに着手している。その中で、目玉の一つとなっているのが、コスプレイヤーとのタッグ結成だ。世界海洋デーにあたる6月8日には東京タワーに国内外から430人のコスプレイヤーを集め、トークショーやゴミ拾いを行い、大きな反響を得た。

 海洋ごみとコスプレ…意外な組み合わせに思えるが、そこにはれっきとした狙いがあった。日本財団海洋事業部海洋チームリーダーの宇田川貴康氏は3つの理由を挙げて、その意義を説明した。

「まず、コスプレイヤーさんは非常に発信力が高い。常にSNSを使っているので、フォロワーがたくさんいる。2つ目に海外ネットワークを持っている。だから、海外でも事業が展開できる。3つ目はコスプレイヤーさんには一定数、非常に環境に関心が高い人がいます。理由は2つあって、コスプレイヤーさんは自分の写真を撮ってSNSにアップする。汚れているところで撮影したくない人が多い。常日頃からごみ拾いの活動に参加している人がいる。それに、コスプレはなりきることがポイント。ヒーローものとかは地球にいいことをしたい。率先してごみ拾いをしている」

 どれもこれも、なるほどと思わせるものばかり。確かに、世界最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」でも進んでごみ拾いをするコスプレイヤーの姿は印象的だ。

グランプリに100万円 「コスプレde海ごみゼロアワード」設立

 宇田川氏がさらに具体例として紹介したのが仮装との違い。例年、ハロウィーンで多くの仮装者が訪れる渋谷では、毎年のように大量のごみが捨てられ、問題になっている。それに対し、池袋などで行われるコスプレイベントではそういったことは話題にならない。

「コスプレイヤーさんはしっかりとルールを守る。仮装とは違い、ちゃんとキャラクターをリスペクトして、やはり、なりきるということを大事にしている」と宇田川氏は力を込めた。

 日本財団は世界コスプレサミット実行委員会(WCS)と協力し、8月3~4日、名古屋で開催された世界最大級のコスプレの祭「世界コスプレサミット2019 in NAGOYA」でも「日本財団 × コスプレ」のテーマのもと会場周辺のごみ拾いを行った。さらにWCSとの共同事業の調印式では、「コスプレde海ごみゼロアワード」の設立も発表した。

 アワードは、アクション部門とコスチューム部門に分かれる。アクション部門では、海洋ごみの削減に寄与する啓蒙的なコスプレ画像を作成したり、積極的な活動をしたコスプレイヤーに最高100万円が贈呈される。一方、コスチューム部門は、環境に優しいコスプレの衣装、レシピを募集する。グランプリは20万円だ。9月から国内外のコスプレイヤーに参加を呼び掛ける。

「もともと海洋ごみの8割ぐらいは陸から出ている。河川を使って流れている。街の中でもごみ拾いする必要がある。コスプレイヤーさんがやっていると、みんな見ますよね。一般の方にも関心を持ってもらえるのが連携した意図」

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