「クボタ」CMの菜葉菜が年齢非公表を貫いたワケ 最新映画で20代から40代まで4役

今年、主演作「夕方のおともだち」を始め、「ノイズ」「ホテルアイリス」「夜を走る」など映画に出演した女優の菜葉菜。「クボタ」のCMにも起用され、NHK夜ドラ「つまらない住宅地のすべての家」での演技も注目を集めた。4話からなる最新オムニバス映画「ワタシの中の彼女」(監督・中村真夕、11月26日公開)では、境遇、年齢の異なる4人の女性を演じ分けた。

映画「ワタシの中の彼女」で4人の女性を演じた菜葉菜【写真:ENCOUNT編集部】
映画「ワタシの中の彼女」で4人の女性を演じた菜葉菜【写真:ENCOUNT編集部】

中学生役から40代までを演じ分ける

 今年、主演作「夕方のおともだち」を始め、「ノイズ」「ホテルアイリス」「夜を走る」など映画に出演した女優の菜葉菜。「クボタ」のCMにも起用され、NHK夜ドラ「つまらない住宅地のすべての家」での演技も注目を集めた。4話からなる最新オムニバス映画「ワタシの中の彼女」(監督・中村真夕、11月26日公開)では、境遇、年齢の異なる4人の女性を演じ分けた。(取材・文=平辻哲也)

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「ワタシの中の彼女」は2020年のコロナ禍を背景に生まれた企画。短編映画「4人のあいだで」が大阪アジアン映画祭でJapan Cuts Award を受賞したことで、4編のオムニバスに発展した。「親密な他人」の中村監督が菜葉菜を当て書きし、4人のヒロインの物語を作り上げた。

 第1話「4人のあいだで」はコロナ禍で20年ぶりに連絡を取り合った大学の同級生の物語。第2話「ワタシを見ている誰か」は30代のリモートワークのOLとフードデリバリー(好井まさお)、第3話「ゴーストさん」は20代後半の風俗嬢とバス停にいるホームレス(浅田美代子)、第4話「だましてください、やさしいことば」は40代前半の盲目の女性と詐欺の受け子(上村侑)の交流を描く。

「私にとっては挑戦でしたね。2人芝居でガッツリお芝居をさせていただく感じでした。2話の好井さんは(Netflixオリジナルドラマ)『火花』から仲良くさせていただいている芸人さん、浅田さんとはずっと仲良くさせていただいていますが、お芝居では初めて。4話の上村君は新人。それぞれ共演者に支えられながら、お芝居ができたかな、と思っています」。

「ワタシの中の彼女」という題名にも深い意味が込められている。

「監督も言っていましたが、『もしかしたら、こういう人生もあったかもしれない』ということなんだと思います。パラレルワールドのようでもあるし、第3話にはファンタジーの要素も入っていますし、サスペンスぽく見えるお話もあって、見た人に委ねられている作品じゃないかなとは思います」。

 菜葉菜はプロフィール上、生年非公表を貫いているが、そのワケを聞くと、「深い意味はないと思うんですよね」と笑う。

「きっかけは『富江 BEGINNING』(2005年)だと思うんです。その時にハタチを過ぎていたんですけども、結構、高校生役をやっていたんです。年齢を明かさなかったら、高校生の現場にも呼ばれるなら、その方がいい、と。もちろん、いつまでも続くわけはなく、途切れましたけどね」と笑う。

 この映画でも、年齢設定のことは特に意識しなかったそうだが、役では、役相当の女性に見えるのが菜葉菜という女優のすごさだろう。逃亡犯を演じたNHK夜ドラ「つまらない住宅地のすべての家」の回想シーンでは自身最も若い役、中学生役も演じた。

「でも、これは私の責任じゃないんです。クレームが来たらプロデューサーさんの責任ですよ(笑)と言ったくらい。NHKでも一応、私の中学時代の役のオーディションをやったらしいんですが、プロデューサーいわく、『来たのは、かわいくて、きれいな子ばかりで、お前のような変わった顔の子はいなかったので、お前やれ』と(笑)。『はいはい、やります(笑)』と言ってやったんですけど、まあ、楽しんでやらせていただきました」。

目標は田中裕子、「大人の女性を演じたい」と意欲十分だ【写真:ENCOUNT編集部】
目標は田中裕子、「大人の女性を演じたい」と意欲十分だ【写真:ENCOUNT編集部】

渡辺哲と父娘を演じる「クボタ」のCMでお茶の間に浸透

 今年は、渡辺哲と父娘を演じた「クボタ」のCMもオンエアされ、お茶の間の認知度も高まっている。

「クボタの社長さんが『君のような人はクボタにもいる』と言ってくださって、女性のトップの方が最終的に選んでくださった。でも、『クボタ』の顔は長澤まさみさんなんですよね。でも、そこはしょうがない。私はクボタの裏の顔で十分です(笑)」。

 デビュー以来、映画を主戦場に、主演から脇まで幅広い役を演じてきた個性派。だが、若い時代は容姿にコンプレックスを持っていたという。

「仕事を始めた頃は、みんなが敵と思っていましたね。自分はこういう顔だからダメなんんだ、とか、中性的なボーイッシュな部分に劣等感もありましたし、こびるのもうまくない。私は男性受けが悪いんですよ。私って、基本、ほめられて伸びる子なんです。『その個性がいいんだよ』と言ってもらえたり、お仕事して、自分を認めてもらえた瞬間に喜びを感じるんですね。コンプレックスは今も根っこにはあります。きれいな人があふれている世界の中で、自分はどの立ち位置でやっていけたらいいのかは考えます。事務所の社長からは『劣等感を持ったり、人と比べているうちは絶対成長しない』と今でも言われるんですよね」。

 ただ別の考え方もしている。

「私がすごい美人で、完璧だったら、絶対性格悪くなると自分でも思うんですよ。もともと一人っ子で、わがまま。自信を持ってしまったら、絶対友達になりたくないタイプ。だから、これでよかったんだ、と。先日も、夜ドラで共演した夏川結衣さんからは『あなたのままでいいんだよ』と言ってもらえて、うれしかったんです。見てくださっている方もいる。そういう出会いに支えられて、今があるなと改めて感じています」。

 今年は映画の公開が立て続けとなったが、「それはたまたまですね。主演作も2本ありましたが、主演か、どうかはやっている時はあまり関係ないです。たた、終わってから、毎回、自分はどうだったのかと焦ってしまう」。

 目標とするのは名女優・田中裕子だ。田中も言ってみれば、年齢不詳。おばあさん役から恋するヒロインまで幅広い人物像を演じ分けてきた。「大人の女性を演じたいと思っていますね。今は若い子向けの作品が多くなっていますが、自分自身もそういう年齢にはなってきましたから」と話す。今後も年齢非公表のまま、幅広い役がらを見せてくれそうだ。

□菜葉菜(なはな)7月17日生まれ。東京都出身。2005年、映画「YUMENO」(鎌田義孝監督)で主演し、本格的に女優デビュー。以後、「夢の中へ」(05)、「孤高のメス」(10)、「ヘヴンズ ストーリー」(10)、「64-ロクヨン-」(16)、「百合子ダスヴイダーニヤ」(11/浜野佐知監督)、「ラストレシピ~麒麟の下の記憶~」(17)、「後妻業の女」(16)など多数の話題映画に出演。12年には「どんづまり便器」でゆうばり国際ファンタスティック映画祭最優秀主演女優、近作では主演作品「赤い雪」(19)で第14回Los Angeles Japan Film Festival 最優秀俳優賞を獲得した。

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