【映画とプロレス #10】映画主題歌からプロレス入場曲になった「スカイ・ハイ」は失恋ソングだった(後編)

“プロレステーマ曲総選挙”があるとしたら、間違いなくトップ10に入るであろうミル・マスカラスの「スカイ・ハイ」。外国人レスラー枠で1位になる可能性もあるだろうし、総合第1位になってもおかしくない。イントロが聞こえてきた瞬間、場内のファンが一体化し、気分が高揚する名曲中の名曲だ。

映画「スカイ・ハイ」/(C) 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
映画「スカイ・ハイ」/(C) 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

映画の主題歌からマスカラスの入場曲に使用された名曲

 “プロレステーマ曲総選挙”があるとしたら、間違いなくトップ10に入るであろうミル・マスカラスの「スカイ・ハイ」。外国人レスラー枠で1位になる可能性もあるだろうし、総合第1位になってもおかしくない。イントロが聞こえてきた瞬間、場内のファンが一体化し、気分が高揚する名曲中の名曲だ。

 たとえマスカラスを知らなくても、会場に居合わせれば周囲の空気に呑み込まれ同調、自然と気持ちが昂ぶってくるのではなかろうか。もしも「スカイ・ハイ」がなかったとしたら、プロレス史そのものが書き換えられていたかもしれない。それほど重要な音楽なのだ。

「スカイ・ハイ」がマスカラスのために作られたオリジナルではなく、同名映画の主題曲であることは前回の本欄で紹介した。映画「スカイ・ハイ」(75年)は、ブルース・リーによってもたらされたカンフー映画ブームと、007シリーズでロジャー・ムーアが演じた3代目ジェームズ・ボンドの時代に製作された、言ってみればいいとこ取りの便乗娯楽作品である。テーマ曲の設定は007シリーズにあやかり、「THE MAN FROM HONG KONG」(香港から来た男)という原題が示すように、香港のスターが海外でご都合主義的に大活躍するのが大きな見どころだ。

 この2大要素が重なったところでかかるのが、英国の4人組ロックバンド、ジグソーによる「スカイ・ハイ」。ほぼフルで流れるのがなんとも嬉しい。あいさつ代わりのアクションから、という流れは007シリーズへのオマージュだろう。ハングライダーでの空撮とともに、プロレスファンならずともアガること請け合い。劇中でもハイな気分が持続するかどうかは個人差があるが、「スカイ・ハイ」はエンディングでもう一度高らかに流れるからこれまたたまらない。

 この爽快感は海洋アドベンチャー「ザ・ディープ」(77年)のエンディングに匹敵する。こちらもテーマ曲が素晴らしい「ザ・ディープ」では閉塞感を突き破るように主人公が深海から海上へと一気に飛び出すのだが、「スカイ・ハイ」では曲名とシンクロするように青空が映し出される。決着の付け方は別にして、ハッピーエンドであることは間違いない。

次のページへ (2/3) 「スカイ・ハイ」とはどんな歌詞なのか
1 2 3
あなたの“気になる”を教えてください