氷川きよしや星野源の現場で踊る27歳・KASAI YUI 目指し続けた指導者の夢

24歳という若さで自身のダンススタジオを立ち上げた指導者がいる。「ALL DANCE SCHOOL」代表のKASAI YUIだ。現在27歳。ダンサーとして、サカナクションの「新宝島」や木村カエラ「OLE!OH!」、星野源「創造」など数々のミュージックビデオ(MV)に出演。さらに郷ひろみ、坂本冬美といった大御所コンサートのほか、2020年の「第71回NHK紅白歌合戦」では氷川きよしの「限界突破×サバイバー」にも出演している。

「ALL DANCE SCHOOL」代表のKASAI YUI。ダンサーとして活躍しながら指導者として子どもたちにダンスを教えている
「ALL DANCE SCHOOL」代表のKASAI YUI。ダンサーとして活躍しながら指導者として子どもたちにダンスを教えている

幼少期から夢は「ダンサー」ではなく「ダンスの先生」

 24歳という若さで自身のダンススタジオを立ち上げた指導者がいる。「ALL DANCE SCHOOL」代表のKASAI YUIだ。現在27歳。ダンサーとして、サカナクションの「新宝島」や木村カエラ「OLE!OH!」、星野源「創造」など数々のミュージックビデオ(MV)に出演。さらに郷ひろみ、坂本冬美といった大御所コンサートのほか、2020年の「第71回NHK紅白歌合戦」では氷川きよしの「限界突破×サバイバー」にも出演している。

 MVやコンサート以外にも、「JAバンク」や「銀のさら」「アース製薬」といった多くのCMに出演。最近ではピップ株式会社「ピップエレキバン」のCM「スマイルバンバン!エレキバン!」篇にも出演していた。ダンサーとして大舞台で活躍する中、自身のスタジオを立ち上げて「指導者」として子どもたちにダンスを教えているKASAI。その教え子たちもまた、ダンスコンテストで全国大会に出場し準優勝を獲得。選抜メンバーは小学生ながらすでに芸能の現場に立っている。

 実はKASAIは、自身がダンサーとして舞台に立つことよりも、「指導者」として子どもたちを育て上げることに重きを置いている。もともとの夢が「ダンサー」ではなく「ダンスの先生」だったというのだ。今回、指導者とダンサーを兼任して活躍するKASAIに、自身の現場を通して感じることや指導者としての思いを聞いた。(取材・構成=コティマム)

――有名アーティストや芸能人の作品に数々出演されていますが、そもそもダンスを始めたきっかけは?

KASAI YUI(以下、KASAI)「5歳のときに交通事故に遭い、全身打撲で動けなかったんです。医師から『リハビリとして、全身運動のクラシックバレエか水泳をやりなさい』と言われ、母と行ったダンス教室でクラシックバレエの体験をしたのが、ダンスを始めたきっかけです」

――当初はリハビリ目的だったのですね。

KASAI「リハビリを始めてすぐにバレエが好きになって、ずっと続けました。厳しい先生のもとで習っていたので『選抜クラス』があり、生徒が約100人いる中で選抜メンバーは6人でした。選抜はイベントやビデオ撮りなどの現場に出られるんです。バレエを始めてすぐに、選抜メンバーの中に憧れの人を見つけて、『この人みたいになりたい』と思いました」

――この頃からプロを目指していたのですか?

KASAI「実はこの頃からすでに、ダンサーではなく『ダンスの先生になりたい』と思っていました。リハビリをやる中で、『誰かが自分を支えてくれるありがたみ』を感じて。ダンスという大好きなものに出会えて、『ダンスで人を支える、生きがいを提供する。自分も体が動かなかったけど、ダンスが救ってくれたんだよ』という気持ちを、みんなに伝えたいと。それを伝えられるのは『指導者』だなと、小学生になる頃には思っていました」

――すでに将来の夢を決めていたのですか!

KASAI「そうですね。ダンスの先生になるためには、『まず出る側にならないと』と気づいて、そのためには『選抜に入らないと現場に出られない』と。だからまずは選抜が目標でした。小1からバレエに加えてジャズ、ヒップホップ、アクロバット、体操、タップ、殺陣、中国拳法などオールジャンルを学びました。週6日、学校の後に毎日2~3時間練習です。土曜日は9時間練習していました。小3で選抜に入り、イベントや現場に出られるようになりました」

――小3で早くも目標の第一歩をかなえたのですね。

KASAI「小3のときに出演したイベントで、日本で最も有名なコレオグラファー(振付師)に出会い、その方から現場で使っていた小道具のトランプを頂いたんです。宝物でずっと持っていたら、中3のときにお仕事の現場で再会したんです。その方が私のことを覚えてくださっていて! そこから頻繁にお仕事をご一緒するようになりました」

――子どもの頃からプロの大人と一緒にお仕事を!

KASAI「義務教育なので最初は3か月に1回程で、時間の制約もあり限られた仕事でした。大学生になってからは20時以降仕事ができるようになったので、サカナクションさんや木村カエラさんのMVのほか、郷ひろみさんなどいろいろなCMに出演しました」

KASAIが出演した「ピップエレキバン」のCM「スマイルバンバン!エレキバン!」篇
KASAIが出演した「ピップエレキバン」のCM「スマイルバンバン!エレキバン!」篇

CMやMV現場の「即効性のある指導方法」がレッスンにいきる

――大学時代はダンス一色だったのですか?

KASAI「実は、『ダンスの先生になるため教員免許を取りたい』と思い、通信制で大学に通ったんです。昼は現場でダンサーの仕事をして、通信で勉強しながら保健体育の教免を取りました」

――卒業後はダンサーに専念を?

KASAI「卒業後1年半ほどは、コンサートやMV、CM出演を続けていました。でも、ダンサーとしての経歴も教免も得たけれど、『学校運営に関して無知だ』と気づき、運営を学びたいと思ったんです。そこで専門学校の教員の仕事を見つけたので、ダンスの仕事を一旦お休みさせていただいて、就職しました」

――すべては「指導者になるため」なのですね。

KASAI「専門学校でお金の管理、成績表の付け方、ホームページ運用やSNS発信など、学校運営について学びました。2年ほど教員を経験して、2020年4月に『ALL DANCE SCHOOL』を立ち上げました。今は再びダンサーとして活動しながら、スクールでは生徒を指導しています」

――現役でダンサーをしながら、「指導者」として現場での仕事をどのようにスクールでいかしていますか?

KASAI「CMやMV撮影の現場では、メインキャストであるタレントや歌手、女優さんがダンスを踊りますよね。ダンス未経験のタレントさんたちは、現場に来てその30分後や1時間後には、『広告として通用するダンス』を完璧に踊らなければいけません。現場では振付師さんが、未経験のタレントさんに短い時間で振付を教えます。一人一人、特徴が異なるので、『この人にはいつ、どのタイミングで、どうやって言葉がけを含めたアプローチをしたら踊りがよくなるのか』など、頭をフル回転させ目を凝らしながら、短時間で深く向き合っています。現場で振付師さんの指導場面を見ているので、その『即効性のある指導方法』が、子どもたちにダンスを教える上で役に立っています」

――まさに「即効性のある指導方法」ですね。

KASAI「『即効性』=『ちゃんと読み取りちゃんと応える』ということです。魔法の言葉や魔法の指導法はなく、『その人がなぜできないのか』を読み取り、応える。一見簡単でも、『本当の意味で人に優しく』ないと難しい。『できないこと』を目の当たりにすることで、今も現場で学び続けています」

――現場経験がそのまま指導にいきるのですね。

KASAI「ダンスの精度を『短期間で仕上げる力』というのは、現場で勉強してきました。子どもたちには、『1年間で発表会までに仕上げさせる』『2か月後のコンテスト本番までにこうする』というスケジュール感でやっています。私の中でそれは、30分後に本番を撮るCMと同じことです。厳しくやらなければいけないところなど押し引きしながら、『即効性』『人に対する計画性』を意識してやっています」

□KASAI YUI 27歳、埼玉県出身。5歳よりクラシックバレエ・ジャズ・ヒップホップ・タップ・創作ダンス・殺陣・体操などオールジャンルのダンスを学ぶ。12歳で「埼玉県ジャズダンスコンテスト」決勝進出。学生時代から日本で最も有名なコレオグラファーの元で仕事を経て、ダンサーとして数々のCMやMV、歌番組やコンサートなどに出演する。メディア出演数は80件以上。24歳のときに「ALL DANCE SCHOOL」を開校。大学時代に保健体育一種教員免許(中学・高校)取得。

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