走行距離税に困惑 ガソリン車&EVオーナー「取れるところから取る。そんな魂胆が…」
初代ポルシェ911と、国産の電気自動車(EV)の“二刀流”。古き良き旧車と最新鋭技術を誇る現代車を乗り分けている60歳の男性オーナーがいる。自動車文化は過渡期にあり、相反すると考えられがちなガソリン車とEV車だが、両方に乗るオーナーは実際にはどう考えているのか。外国の名車が連なる愛車遍歴とともに聞いた。
1970年式のポルシェ911&三菱・アウトランダーPHEV
初代ポルシェ911と、国産の電気自動車(EV)の“二刀流”。古き良き旧車と最新鋭技術を誇る現代車を乗り分けている60歳の男性オーナーがいる。自動車文化は過渡期にあり、相反すると考えられがちなガソリン車とEV車だが、両方に乗るオーナーは実際にはどう考えているのか。外国の名車が連なる愛車遍歴とともに聞いた。
25歳人気女優のクルマ愛…免許はマニュアル取得、愛車はSUV(JAF Mate Onlineへ)
1970年式のポルシェ911 T-DX。2.2リッターエンジンで、北米仕様。バーガンディーの車体カラーが渋い1台だ。「ポルシェっぽくない外装、かわいらしく、のんきと言いますか。フロントバンパーのオーバーライダーがお気に入りなんです。取らずに残しています。当時の日本仕様は北米仕様だったらしいんですよ」。当時の資料を見せてもらったのだが、「最高巡行速度205キロ」というから驚きだ。ポルシェは20年前にも乗っていた。2人乗りのボクスターSで、山道やサーキットで“走り”を楽しんでいたという。
古い車に乗るようになったのは、15年ほど前のことだ。「子どもの頃に見ていた車」に興味がどんどん沸き、購買意欲を後押しした。「当時はまだ安く買えましたから」。
90年代のクラシック・ミニからスタート。「それでも、私は背が高いので、なかなか乗りづらくて、1年ほどで手放しました」。次は75年式のメルセデス・ベンツ W114。次第に旧車イベントに妻と参加するようになり、ライフスタイルに寄り添う旧車の楽しみ方を知ったという。ジャガーXJ6はかっこよさにほれぼれ。故障が多く、シトロエンに乗り換えてしばらくハマっていたという。
フォルクスワーゲン・カルマンギアのオープンカータイプを探していたところで、約10年前に現在の愛車ポルシェ911に出会った。たまたまネット検索で見つけて、老舗のポルシェ販売店から「安い買い物だよ」といったことを言われた。「確かに、現在の相場を見ると、これだけ値段が上がってしまうと手放せなくなりますよね。もう一生買うことができないぐらいの高騰化ですから」。びっくりするぐらいの旧車の値段上昇をまざまざと感じているという。
一方で、自家用車は、三菱・アウトランダーのプラグインハイブリッドEV(PHEV)に乗っている。「駆動はモーターで、四駆。制御システムの技術はすごいですよ。静かでスムーズな未来カー。これもいいんじゃないの、と思っています」。EV車ならではの良さを実感しているという。
旧車と現代車は“別物”として捉えているといい、「アウトランダーPHEVを買う時に、『ミッションはあるんですか?』と聞いて、お店の人に笑われました(笑)。ポルシェ911の運転は、物理の法則に従って自分で操作するという感覚があります。言わば機械との格闘です。アクセル、シフト、クラッチの操作で、いかにスムーズに走らせることができるか。考えながら走るのが楽しくもあるんです。なので、ガソリン車のマニュアルトランスミッションと比較してはいけないと思うんですよ。自動運転モードも体験しましたが、高速道路の運転が楽になりますし、これはこれでアリ。事故を減らすという側面においても必要な技術です。新しい世界のすごさは確かにあります。ある意味、別の乗り物なんだなと思っています。実は、(EV車の)ポルシェ・タイカンにも乗ってみたいなと思っていますよ」。柔軟な考え方で、「いろいろ経験することは大事ですよね」。それぞれの魅力と特長を受け入れている。
日本の現在の制度では、優遇措置がとられているEVに対して、ガソリン車は13年を超えると自動車税が高くなる。「古いからといって税金を高くするのはちょっと……。一般車の新陳代謝のため、という考え方はよく分かりますが、ガソリン車・旧車を文化として大切にしてほしいと思います」と率直な意見を聞かせてくれた。
一方で最近、普及の進むEV車についての政府税制調査会の議論で、波紋を広げるニュースが駆け巡った。走行距離に応じた課税の検討だ。EV車はガソリン車と比べて比較的重いため道路への影響が大きいことが理由に挙がったと報道されている。
男性オーナーは「まず、都会と違って、地方に住む人たちは車がないと生活できません。年に何万キロを走ることが生活として必要な人もいるんです。走った距離ではなく、電気量に課税する方法を考えた方がいいのではないでしょうか。そもそもガソリン車はいっぱい納税しているんですから。取れるところから、取る。そんな魂胆が見える気がします」と困惑の表情を浮かべた。
自動車業界、車文化はどう変わっていくのか。“二刀流”の乗り方を通して、見えてくるものがあるかもしれない。