興行の相次ぐ開催中止… 新型コロナウィルス影響による欧州プロレス界の現状

新型コロナウイルス感染拡大は、海外のプロレス界にも多大な影響を及ぼしている。大きなところでは、WWEが年間最大の祭典「レッスルマニア36」をフロリダ州タンパのレイモンド・ジェームズ・スタジアムから同州オーランドのトレーニング施設、パフォーマンスセンターでの2日間配信に変更。日本から進出する団体やROHなどを含む前後の大会、いわゆるレッスルマニアウィーク関連のイベントすべてが中止になってしまった。また、インパクトレスリング4・19「レベリオン」、メキシコではCMLLの3・20「オメナヘ・ア・ドス・レジェンダス」、AAA3・21「レイ・デ・レイジェス」などのビッグイベントが軒並み中止、または延期となっている。

英国EVE1月11日ロンドン大会の模様 【写真:新井宏】
英国EVE1月11日ロンドン大会の模様 【写真:新井宏】

復活の見通し立たず… “見えない敵”と戦う現状

 新型コロナウイルス感染拡大は、海外のプロレス界にも多大な影響を及ぼしている。大きなところでは、WWEが年間最大の祭典「レッスルマニア36」をフロリダ州タンパのレイモンド・ジェームズ・スタジアムから同州オーランドのトレーニング施設、パフォーマンスセンターでの2日間配信に変更。日本から進出する団体やROHなどを含む前後の大会、いわゆるレッスルマニアウィーク関連のイベントすべてが中止になってしまった。また、インパクトレスリング4・19「レベリオン」、メキシコではCMLLの3・20「オメナヘ・ア・ドス・レジェンダス」、AAA3・21「レイ・デ・レイジェス」などのビッグイベントが軒並み中止、または延期となっている。

 ヨーロッパにおいても被害の大きいイタリア、スペインをはじめ、ほぼすべてのプロレス興行が中止という状況だ。現在のヨーロッパでもっともプロレスが盛んと言える英国も例外ではない。チャールズ皇太子が感染を発表し、ボリス・ジョンソン首相が入院、4月5日にはエリザベス女王が国民に向けて異例のメッセージを送った。

 その英国では3月23日にロックダウン(都市封鎖)が宣言され、不要不急の外出禁止令が出されている。外出は1人、または同居する家族限定の2人までで、一日一回30分程度。歩く際には2メートルの距離を取るソーシャル・ディスタンスが奨励されている。友人に会いに行くことさえ許されておらず、これには同居以外の家族まで含まれている。交通機関は運行本数を減らし、都市部はゴーストタウンのようになっているとのこと。食品を扱う店は営業可能だが、レストランやカフェはテイクアウトのみ。英国人の心のよりどころであるパブでさえ閉まっている状況だ。図書館や美術館、劇場も閉鎖中。よって演劇、コンサートなどの文化的催し、プロレスを含むスポーツイベントは開催できない状態が続いている。しかし皮肉にも、どんよりした曇り空の多いロンドンはこのところ好天に恵まれており、公園に限ってはふだん以上の人出がみられるという。

 毎週木曜日、夜8時になると人々は庭や外に出て医療関係に携わる人たちに感謝の気持ちを込めた拍手を送る。道ですれ違うときにはお互い距離を意識し、感謝の気持ちを手振りなどで伝える。相手を思いやり、この危機をみんなで乗り越えようという姿勢は、7都府県に緊急事態宣言が出された日本も見習うべきところだろう。

3月7日以降の大会が白紙となったEVE(写真は1月11日の大会/写真:新井宏)
3月7日以降の大会が白紙となったEVE(写真は1月11日の大会/写真:新井宏)

 さて、本欄で紹介すべきプロレス界の現状だが、英国唯一の女子プロレスプロモーションEVEは、3・7ロンドンまで毎月興行を開催していたものの、外出禁止令発令により4・4ロンドンを無観客で開催、動画サービス「EVE on DEMAND」で生配信することを決定した。しかし会場使用の許可がおりず、選手を集めることも不可能となった。よって、大会そのものを中止する決断を強いられることに。EVEは今年で旗揚げ10周年。1・11ロンドンでは東京女子プロレスの坂崎ユカ&伊藤麻希を招聘するなど好調な滑り出しをみせていたのだが、3・7以降の興行スケジュールはいったん白紙。10周年記念大会でのメインカードも発表されていたものの、こちらも事実上の無期延期という状態だ。11・7&8のシングルリーグ戦「SHE-1」全4大会はいまのところ開催予定。しかし現状ではどうなるか、先行きがまったく読めなくなっている(前倒しで再開の可能性もあるが……)。

 EVEではチケット購入済のファンに対し、払い戻しか次のイベントに有効とする措置をとった。一年間有効のシーズンチケットに関しては中止回数をそのまま翌年も使えるとした。動画配信サービスでは、過去の未公開映像と企画もので対応している。ほかにも英国ではRPW4・5ロンドン、ファイトクラブプロ4・10~12ウォルバーハンプトン3連戦などが相次いで中止となっている。

 また、ドイツでは新団体の旗揚げ戦が延期される事態が発生した。スターダムに来日し、総合格闘技RIZINでも闘ったアルファ・フィーメル(ジャジー・ガーベルト)が昨年10月にWWEを退団、今年1月に念願だった自身のプロモーション設立を発表。団体名はシリウス・スポーツ・エンターテインメントで、4月19日、シュツットガルトの南に位置するバーリンゲンでの旗揚げ戦を控えていた。ところが、新型コロナウイルス問題によってドイツでも各イベントに中止の要請が出された。チャンピオンベルトまで完成させていたアルファだが、お披露目は先送りに……。いつ旗揚げ戦がおこなわれるのか、現時点では明らかになっていない。

 世界レベルで危機的状況に追い込まれたプロレス界(スポーツ&エンタメ界)。いまはただ一日も早い事態の収束、通常の興行再開を願うばかりだ。そのためにも一人ひとりが協力し合い、いまできること(感染しない、他人を感染させない)をするしかない。近い将来、プロレスは必ずカムバックする!
(日付はすべて現地時間、情報はすべて4月7日現在のもの)

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