共通テスト新科目「情報I」を配点0 国立大の予告に識者「世界からのデジタル化の遅れが発生」

24年度(25年)実施の大学入学共通テストに導入される新科目「情報I」について、国立大学の北海道大と徳島大などが受験科目としては課すものの合否判定に使わず配点を0点にすると予告している。「前例がなく問題の傾向や点数が不安定になる。慎重に対応したい」というのが理由だ。これに対し会員数約1万6000人を擁する一般社団法人情報処理学会(東京・神田駿河台)は「高校教育における情報科目の意義を否定する」と反発している。22年度から高等学校の必須科目として「情報I」が順次導入されており、現在の高校1年生から共通テストの必須科目は国語、英語、数学、理科、社会に情報を加えた6教科8科目になる。一部国立大の今回の“反乱”をどう見ればよいのか。個別指導学習塾・明光義塾を運営する明光ネットワークジャパン(東京・西新宿)の武藤麻紀子教務部課長(高校生指導担当)に聞いた。

新科目「情報I」をめぐって混乱が(写真はイメージ)【写真:写真AC】
新科目「情報I」をめぐって混乱が(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「情報I」は単なる受験勉強ではなく将来に役立つ勉強

 24年度(25年)実施の大学入学共通テストに導入される新科目「情報I」について、国立大学の北海道大と徳島大などが受験科目としては課すものの合否判定に使わず配点を0点にすると予告している。「前例がなく問題の傾向や点数が不安定になる。慎重に対応したい」というのが理由だ。これに対し会員数約1万6000人を擁する一般社団法人情報処理学会(東京・神田駿河台)は「高校教育における情報科目の意義を否定する」と反発している。22年度から高等学校の必須科目として「情報I」が順次導入されており、現在の高校1年生から共通テストの必須科目は国語、英語、数学、理科、社会に情報を加えた6教科8科目になる。一部国立大の今回の“反乱”をどう見ればよいのか。個別指導学習塾・明光義塾を運営する明光ネットワークジャパン(東京・西新宿)の武藤麻紀子教務部課長(高校生指導担当)に聞いた。(取材・文=鄭孝俊)

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――「情報Ⅰ」の配点の件、どうご覧になりましたか。

「現段階では北海道大学と徳島大学で配点を0点とし、判定の参考とする予定、と発表されています。英語4技能導入に関しても大学によってばらつきがありましたが、これは東大などもともとリスニングなどの独自問題を準備している大学があったためでした」

――北大や徳島大を受験する生徒にとっては負担が軽減されるのでしょうか。

「生徒や保護者にとっては『“情報Ⅰ”が点数化されないから受験しやすい! ありがたい!』となるかもしれませんが、国公立希望の生徒の場合、『共通テストの点数が悪かったら、こちらを受けようかな』と別の大学を希望することも多いので、いくつかの大学で得点化されないからといって勉強しなくてもよいということにはならないかと思います。ただ、“配点0”が大きな流れとなって採用しない大学が増えるなら生徒にとって話は別になると思います」

――今回の「情報0点」に賛成する声も多いようです。

「世間では『情報なんて専門でやる人ができればよいのだから他の人はいらない』といまだに思われているんだな、と強く感じます。『情報』というとプログラミングをイメージする人が多いようですが、高校で習う『情報Ⅰ』は、日常生活で役立つような内容を多く学びます。『プリントアウトする』『書類をPDF化する』『どこかのサイトで何かの申し込みをする』など、『情報Ⅰ』で学ぶようなことを知っていれば便利なことはたくさんあります。日常的に使うSNSなどに潜む危険を学ぶこともできます。必要を認識して取り組んでいないと、いろいろな事故も起こりえます。場合によっては訴訟などにも発展しかねません」

――「情報Ⅰ」は不要な科目ではない、ということですか。

「生きていく上で、知っていて損がない科目だと思います。逆に、知っていたら得な科目を受験科目として使えるならラッキー、くらいの感じではないでしょうか。そう思えない人が多いというのは寂しい限りだと思います。そして、その結果として今の日本の『世界からのデジタル化の遅れ』が発生していると感じます」

――「配点0」にはどんな意図があるのでしょうか。

「今回、『情報Ⅰを点数化しません』という発表をした大学は、『情報技術について高校時代に学んでこなかった生徒にも、大学入学後に自大学で基礎からみっちり教えるので、共通テストでは点数を取れなくても大丈夫です』ということなのかと思います。一般的な大学では、そこまでの教育環境が整っていません。授業では難しい用語の混ざった専門的な内容を講義するにもかかわらず、人数の多い授業がほとんどなので、習得できるか否かは生徒の自主性に任されてしまい、なかなか身に付けられないことが多いかと思います。共通テストへの『情報Ⅰ』導入は、単なる受験勉強ではなく、将来に役立つ勉強としての導入だと思っています。以前あった大学入試センターとひも付ける英語外部検定試験ではなく、各大学で独自に取り入れている『英語資格・検定試験』の評価も将来に役立つ勉強の一つだと認識しています」

――「情報Ⅰ」を教えられる高校教員の人材不足、という話も聞こえてきます。

「現在、自習型で取り組める情報教材も一部の高校で導入され始めています。ベネッセさんやライフイズテックさんが参入しているようです。情報教員の採用強化やデジタル教材の活用で、人材不足が解消され、生徒が広く学ぶ環境を持てるようになることを願っています。学ぶ環境がある場合には、ぜひ、楽しく前向きに、そして『情報Ⅰ』を学ぶ意義を理解しながら取り組んでいただきたいな、と思います。『情報』の授業などまったくなかった世代からすると、そのような内容を中学や高校で学べるというのが非常にうらやましいです」

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