デビュー30年で初主演の甲本雅裕、「主演を演じて初めて見えた、景色があった」

甲本雅裕にとってのフィルム撮影とは【写真:山口比佐夫】
甲本雅裕にとってのフィルム撮影とは【写真:山口比佐夫】

「10回以上観て、特別な作品になったことは間違いない」

――撮影はデジタルではなく、フィルムだったそうですね。フィルム作品での長回しは緊張しますよね。失敗したら、無駄になってしまう。

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「ビビりますよ。すごい緊張感が漂う。フィルムで撮れるのはすごくうれしいんですけど、その分責任を伴ってきます。長回しで僕たちが一番助かるのは、芝居を等身大でできるということですね。途切れなく芝居がさせてもらえる。これは監督の趣味なんでしょうけども、本当にカットを割らない。僕も、1回くらいカメラを寄ってよって思う時もありますけど(笑)、監督が生き生きして『寄らないんです』と言われると、うわー、錦織組に入っているっていう気持ちになれる。それは幸せでした」

――完成した作品を観た時はどんな気持ちでしたか?

「ホッとしました。ここまで起伏のないこの映画が、どう映るのか、という不安があったので。ステレオタイプな映画がたくさんある中、僕の中では、そこに留まっている映画ではないという感覚になれたので。でも、それは自分が出ているからではないか、と不安になって、2回、3回と観て、計10回以上は観ました」

――10回観る作品はありますか?

「ありません。自分が関わったものがすべていいと思えるわけでもないです。自分が主役ということをとっぱらっても、今少なくなった映画であり、あぁ、この形ねと言われる作品が多い中、そこ(のレベル)に留まっていない映画になっていると思います」

――ご自身が主役ですから、自信を持ってみなさんにお伝えしないといけないですよね。

「最初に不安が大きかったので、1回観たときにホッとした感があって、もう1回観たらどうなんだろう、と思ったんです。そのうちに、最初にホッとした感覚は間違ってないのかもしれないぞって思えることに、ちょっとした喜びを感じました(笑)。この年になって恥ずかしいんですけどね(笑)。僕にとっては、30年、役者やろうが、何をしようが、初めて訪れたことなので、人に何と言われようと観たいから観るんだっていう思いで10回以上見ました(笑)。特別な作品になったことは間違いないです」

「高津川」は当初、4月3日に全国公開を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で公開が延期された。新たな公開日は決まり次第、公式サイトなどで発表するという。

□甲本雅裕(こうもと・まさひろ)1965年6月26日生まれ、岡山県出身。1989年東京サンシャインボーイズに入団。在籍中「12人の優しい日本人」「ラヂオの時間」「ショー マストゴーオン」「罠」(作・演出三谷幸喜)など全作品に出演。95年1月劇団が充電期間に入り、活躍の場をTV、映画、舞台と広げていく。錦織監督作品には「ミラクルバナナ」(06)、「うん、何?」(08)、「RAILWAYS -49歳で電車の運転士になった男の物語-」(10)、「わさお」(11)、「渾身 KON-SHIN」(13)、「たたら侍」(17)に出演。主な映画出演作「踊る大捜査線」シリーズ(98~12)、「花のあと」(10)、「エベレスト 神々の山嶺」(16)、「四月は君の嘘」(16)、「一週間フレンズ。」(17)、「3月のライオン」(17)。

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