無断駐車の“報復”ピタリ止め「腹が立つのは分かりますが…」 弁護士が教える被害側の意外な問題点

もしも、帰宅時に駐車場に他人の車が止まっていたら…? SNSでは、他人の車の前にあえて自分の車をピタリと止めたことを報告するケースが見受けられる。意図的に出られなくするのは無断駐車への“報復”ともとれるが、問題はないのか。むしろ、無断駐車を「した側」には何か法的な問題は生じるのか。トラブルを避ける方法や妥当な解決策について、レイ法律事務所の浅井耀介(ようすけ)弁護士に聞いた。

無断駐車を「した側」「された側」の課題点は数多い(写真はイメージ)【写真:写真AC】
無断駐車を「した側」「された側」の課題点は数多い(写真はイメージ)【写真:写真AC】

日本の法制度は「無断駐車をされた側にとって酷な立て付け」 レイ法律事務所・浅井耀介弁護士

 もしも、帰宅時に駐車場に他人の車が止まっていたら…? SNSでは、他人の車の前にあえて自分の車をピタリと止めたことを報告するケースが見受けられる。意図的に出られなくするのは無断駐車への“報復”ともとれるが、問題はないのか。むしろ、無断駐車を「した側」には何か法的な問題は生じるのか。トラブルを避ける方法や妥当な解決策について、レイ法律事務所の浅井耀介(ようすけ)弁護士に聞いた。

 相手の車のバンパーのスレスレに自分の車を駐車した写真。SNSでは、“前に止めてやった”“勝手に人のところに止めるな”といったメッセージを添えた投稿が出てくる。ネットの反応はさまざまで、体験談や解決への提案の書き込みに加え、事後どうなったのか気になるというコメント、あおる内容などを含めて反響は大きい。

 法律の専門家はどう捉えるのか。浅井弁護士はまず、「された側」の課題として、「現在の日本の法制度上、無断駐車に関するトラブルについては、無断駐車をされた側にとって非常に酷な立て付けとなっています」と指摘する。

「された側としては、まず一番にその車をどかしたいと考えるでしょう。駐車場のオーナーであれば自分の土地所有権が、駐車場契約者であれば自分の駐車場利用権が侵害されているわけですから、その権利行使として無断駐車している車を自分でどかしてしまおうと考えることはある意味自然です。しかし、日本の法制度上、権利を侵害された者が自力でその状態を救済することは認められておりません。したがって、無断駐車している車を勝手にレッカー車などで移動させてしまった場合には、そのレッカー車の費用を相手に請求しても認められない可能性が高いです。また、レッカー移動の際に相手の車に傷を付けるなどした場合は、逆に相手から損害賠償請求訴訟を起こされてしまう可能性すらあります」。個人が自ら直接的な行動を取った場合、逆に民事訴訟を起こされるリスクがあることは、なんとももどかしい。

 一般的には、警察に通報する手段が考えられる。「確かに、無断駐車をしている人には、住居侵入等罪、威力業務妨害罪、軽犯罪法違反などが成立する可能性はあります。しかし、実際の警察の対応としては、民事不介入として、積極的に事件として取り扱ってくれない可能性が高いです。警察はまともに受け合ってくれないというのが実情でしょう」と浅井弁護士。駐車場におけるトラブルは私有地内のトラブルとして処理されることが多く、ここでもハードルの高さが露呈する。

 ただ、犯罪に該当する可能性が高いケースは例外とのことだ。「例えば、月極駐車場などに無断駐車され、駐車場管理者の適切な駐車場管理業務に支障を及ぼしているような場合には、当該無断駐車には威力業務妨害罪が成立する可能性があります。そこで、このような場合には、駐車場管理者から警察に通報してもらうことがよいでしょう。また、自宅に隣接しており塀などで囲まれている私有地内の駐車場に無断駐車をされてしまったような場合には、当該無断駐車には住居侵入罪が成立する可能性がありますので、このような場合には迷わず警察に通報することがよいでしょう」とのことだ。

 自分の駐車場が利用できないため、解決するまで仕方なく近隣の駐車場に止めるという選択肢もある。現実的な対応だろう。この場合には、かかった駐車場代相当額を相手に請求することが可能という。浅井弁護士は「無断駐車を解決する目的として、運輸支局や陸運局に車のナンバーから所有者を特定してもらうことができます。ナンバー照会のため無断駐車をされていることが分かる写真などの客観的証拠が必要になります。このような方法で、無断駐車をしている者を特定し、相手方に対する任意交渉で直接相当な損害額を回収するといった方法が現実的でしょう。もっとも、この際に恐喝的な手段によらないようにしておかなければ、こちらが恐喝罪などに問われてしまう可能性があるので注意が必要です。あくまで、実際に生じた損害を補填してもらう限りと考えておきましょう」と、冷静な対応を呼びかける。

レイ法律事務所の浅井耀介(ようすけ)弁護士が徹底解説【写真:本人提供】
レイ法律事務所の浅井耀介(ようすけ)弁護士が徹底解説【写真:本人提供】

見せしめ“SNS”は要注意 「掘り起こされ炎上し、仕事や私生活に影響を及ぼすかもしれない」

 それでは、意図的に出られなくする“ピタリ駐車”に問題はあるのか。浅井弁護士は「どのようなトラブルにおいても、仕返しのためや腹いせに起こす行動がいい結果を招くことはありません」とピシャリ。「逆にこちらが民事で損害賠償請求訴訟を起こされたり、相手の車を動いて走ることができない状態にしたということで、刑法上の器物損壊罪に該当する可能性があったりします。何より、無断駐車をするような相手ですから、仕返しの仕返しとして車に傷をつけてくるなど、こちらにさらに損害を与えてくることも十分に想定できます」と注意を促す。相手の車が社用車の場合は、営業妨害や威力業務妨害にあたるケースも考えられるという。相手の故意・過失に関係なく、「された側」が“強硬手段”を取ることは避けてほしいとのことだ。

 そのうえで、「まずは警察や駐車場管理者に連絡をしてみる、そして、警察や駐車場管理者を通じて、場合によっては自力で相手方と連絡を取り、無断駐車により実際に生じた損害額を補填してもらう、という流れが望ましい対応方法でしょう。長期間に及ぶ無断駐車の場合など回収すべき金銭の額が高額になるような場合には、弁護士に依頼することも一案です」とし、解決を探るための手段を示した。

 浅井弁護士は話の出発点として、無断駐車を「した側」の責任について強調する。「そもそも無断駐車をした側には、民事上の問題として『不法行為責任』が生じる可能性があり、刑事上の問題として『住居侵入等罪、威力業務妨害罪、軽犯罪法違反』などに該当する可能性があります」と改めて訴える。

 だからと言って、「された側」がSNSにアップして見せしめるような行為には、一歩立ち止まることが求められる。浅井弁護士は「相手の車の写真をネットにアップするだけでは、プライバシー権の侵害には該当せず、ただちに法的問題が生じる可能性は低いでしょう。ただ、相手がこの画像を見つけた時に、さらなるトラブルの火種となる可能性は否定できません。また、繰り返しになりますが意図的に車を出られなくするような行為は、器物損壊罪といった犯罪に該当する可能性がある行為です。今はSNS上で称賛するような声が寄せられるのかもしれませんが、数年後にはコンプライアンスの意識がさらに高まり、逆にあなたの行為が非難の対象になる可能性も十分にあるでしょう。つまり、何の気なしにSNSにアップした上記行為の画像が、数年後に掘り起こされ炎上し、仕事や私生活に影響を及ぼすかもしれないということです。腹が立つ気持ちは分かりますが、それによってこちらが痛い目を見てしまっては本末転倒です。冷静に対処するように心がけてください」と話している。

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