早見優、40周年を機に選んだ独立の道「まだまだこの世界でお仕事がしたい」

歌手の早見優が40周年イヤーを飾るベスト盤「Affection~YU HAYAMI 40thAnniversary Collection~」をリリースした。実はアニバーサリーを前に芸能活動を続けるどうか真剣に悩んだ時期があったという彼女。その答えを導き出してくれたのが今回収録されている3つの新曲だったのかもしれない。その中の1曲「make lemonade」というタイトルには「悩みごとも考え方1つでポジティブに変えられる」という意味があるそうだ。事務所を独立して心機一転、前を向いてふたたび歩き始めた彼女の今を聞いた。

早見優【写真:舛元清香】
早見優【写真:舛元清香】

「アメリカン・キッズ」を見ていた当時のキッズと遭遇

 歌手の早見優が40周年イヤーを飾るベスト盤「Affection~YU HAYAMI 40thAnniversary Collection~」をリリースした。実はアニバーサリーを前に芸能活動を続けるどうか真剣に悩んだ時期があったという彼女。その答えを導き出してくれたのが今回収録されている3つの新曲だったのかもしれない。その中の1曲「make lemonade」というタイトルには「悩みごとも考え方1つでポジティブに変えられる」という意味があるそうだ。事務所を独立して心機一転、前を向いてふたたび歩き始めた彼女の今を聞いた。(取材・文=福嶋剛)

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――いきなりですが優さんと言えば思い出されるのが英語教養バラエティー「早見優のアメリカン・キッズ」(日本テレビ系、88~94年)ですよね。

「そうですね。長いことやらせていただきました」

――以前「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」(日本テレビ系)の過去の罰ゲーム映像が放送されていて……。

「それ知ってますよ(笑)。松本(人志)さんが『このあとは“早見優のアメリカンキッズ”です』って言ってくださったんですよね。当時のことも覚えてます。ダウンタウンさんのことが大好きだった事務所の社長から『今日松本さんが番組を紹介してくれたんだよ!』と言って録画しておいたビデオを見せてもらったんですよ(笑)」

――そうでしたか。「アメリカン・キッズ」はそのあと番組名が変わりましたが、優さんの英語のバラエティー番組は続きましたね。

「そうなんです。あの頃、テレビを見てくれていたキッズたちはもう立派な大人ですからね。実はこの間、カフェに行ったら『早見優さんですか?』って若いウェイトレスさんに声をかけられて、『私の父が優さんのファンで、私も優って名前をつけてもらい、小さい頃、番組を見てカナダに留学しました』って(笑)。すごいですよね? 思わず英語で話しかけてみたら、ちゃんと英語で返してくれましたよ(笑)」

――その方にとってもきっと素敵な出会いだったんでしょうね。さて本題に入りますが、まずは事務所独立の話からお聞きします。

「そうでしたね。デビューからずっとマネジャーとして私を育てていただき、そのあとサンミュージックを独立してからも事務所の社長としてお世話になっていた市瀬達弥さんが昨年亡くなり、コロナ禍でこの2年は仕事もあまりない状況が続いていたんです。それで『もう私のいる場所はないのかな?』って実は真剣に考えていました」

――そんなことがあったとは知りませんでした。

「そうなんです。『これからどうしようかな?』って考えていたときに、長年サンミュージックの出版部門でお世話になった方から『来年40周年だからベストアルバムを出してみたら?』ってお話をいただいたんです。でも最初は気持ちの中では消極的でした。そんなある日、レコード会社のディレクターさんから新曲のご提案をいただいて、この時代に新曲を歌えるなんて幸せだなと思って、今回のベスト盤に関わってくださった関係者のみなさんと打ち合わせを行いました。すると『こんな感じの新曲はどうかな?』とか、次々とアイデアが飛び出してきてクリエーティブなお仕事の楽しさがふたたび湧き上がってきたんです。『ああ、私はやっぱりまだまだこの世界でお仕事がしたいんだ。歌いたいんだ』って気が付いたんです」

――そこで独立を考えたと?

「それで『私がこれからやっていきたいことは具体的に何だろう?』と考えたとき、今度は自分でそれを見つけていこうと決心しました。そこで大学の先輩で姉のように慕っている方にマネジメントを手伝ってほしいとお願いして、これからは私のやりたいことを私のペースでやっていこうと決意してみなさんに独立を報告させていただいたんです」

40thのベストアルバムには早見優の愛をいっぱい詰め込んだ【写真:舛元清香】
40thのベストアルバムには早見優の愛をいっぱい詰め込んだ【写真:舛元清香】

アン・ルイス、松本伊代、野村義男、森口博子 早見の仲間たちが新曲に参加

――ファンとのつながりの大切さは今回のベスト盤にも反映されていますね。

「タイトルにつけた『Affection』は深い愛情という意味なんですが、これまで私をサポートしてくださったファンや関係者のみなさんからたくさんの愛を受け取って40年歌い続けることができたので、今度は私からみなさんに感謝を込めて、私の愛(=Affection)をいっぱい詰め込んだベストアルバムを作りたいと思ったんです」

――優さんの代表曲はもちろんですが、意外な未発表曲もたくさん収録されています。

「YouTubeのライブ配信で『どんな曲が聴きたいですか?』って投げかけたら私も忘れかけていたような曲を次々とファンのみなさんが教えてくださって。やっぱりSNSってすごいですね」

――そしてすべて話題になりそうな新曲が3曲収められています。まずは仲良しの松本伊代さん、森口博子さんが集結した「今が一番好き」はとってもさわやかなポップナンバーです。

「新曲のプロデュースを担当してくださった川原伸司さんから『伊代ちゃんも博子ちゃんも今すごく充実しているからみんなで集まれる曲を作りましょうよ』ってアイデアをいただいて。2人はジョイントコンサートでも一緒だったので相談してみたら伊代ちゃんは『いいよ!』って即答で、博子ちゃんからも『こういう形で3人の歌が残せてキューティーモリモリです! めっちゃうれしいです!』ですって(笑)」

――素敵ですね(笑)。そこに同世代の野村義男さんも加わって作詞を担当されました。

「ヨッちゃんは私がデビューした頃に一緒に映画に出演したり、マネジャー同士が仲良しでみんなでハワイで食事をしたり、仲良しだったんです。そして川原さんは『THE GOOD-BYE』のディレクターだったのでヨッちゃんに声をかけていただいて作詞を担当してもらいました。レコーディングでもギターやシタールを弾いてもらったんですが久しぶりにスタジオに全員集合したら、ヨッちゃんが『よっ!元気?』と言って入ってきて。もう全然昔と声も変わらなくて(笑)。一瞬であの頃に戻ったんです。その時の言葉を曲に入れようって私から提案させてもらって実は曲の中にヨッちゃんの声が入っているのでぜひ聴いてみてほしいです」

――大変驚いたのはアン・ルイスさんが久しぶりにクレジットされていて、美勇士さんと親子で作った新曲「Your Last Woman」が収められています。

「アンさんには私がデビューして間もない頃からずっと可愛がってもらい、今でも頻繁に連絡を取り合う仲なんです。でも長い間、音楽から遠ざかっているのでそんな話もしたことがなかったんですが、今回プロデューサーの川原さんから『こういうときにこそ作ってもらった方がいいよ』と提案していただき、私から『アン、作ってくれない?』ってお願いしたら最初は『無理だよ』って断られたんです。それでもう1度だけ『私のことを一番よく分かっているアンに書いてほしいの』ってお願いしてみたら美勇士くんにも声をかけてくれて、あっという間に曲が出来上がったんです。そこにアンさんが歌詞を入れてくれて、仮歌まで入れて送ってくれたんですよ。昔から私のこと一番よく知っている彼女だからこそ今の等身大の私を歌にしてくれたんだと思っていて、とっても大切な曲になりました」

――さらに長女のありささんと次女のかれんさんの母娘3人による新曲「make lemonade」も収められていますが、3人のハーモニーがとても気持ちの良い曲です。

「娘たちとの共演はアルバムにも入っている『Dear Earth』という曲のレコーディングがきっかけでした。本田美奈子ちゃんの遺志を受け継いで難病の方々を支援している『LIVE FOR LIFE』という活動から生まれた楽曲『地球へ』の英語バージョンを作ることになり、私が英訳して歌も担当することになったんですが、長女のありさと次女のかれんにも歌のパートを手伝ってほしくて2人にお願いしたんです。その曲を聴いたプロデューサーの川原さんから『今回も3人で歌う曲を入れよう』と提案していただいたんです」

――「make lemonade」というタイトルの意味は?

「私が小さい頃に祖母からよく言われてきた言葉で『もしレモンをいっぱい投げつけられたとしても、そのレモンを使ってレモネードを作ってしまえばいいんだよ』っていう英語の格言なんですが、『悩みごとも考え方1つでポジティブに変えられる』という意味なんです。私も娘たちが思春期の頃に悩んでいる姿を見かけたら『オー! メイクレモネード!』っていつも言っていたので、子どもたちもそれを覚えていて『じゃあ曲名にしよう』って決めました」

11月から大好きなミュージカルで全国を回る【写真:舛元清香】
11月から大好きなミュージカルで全国を回る【写真:舛元清香】

母娘3人でレコーディング

――歌詞は3人で書いたんですか?

「アメリカに留学している長女が夏休みで日本に帰ってきたときに3人で作りました。最初はそれぞれ好きな言葉を歌詞していこうって言ったんですけど、なかなか上手くまとまらないので『じゃあママが書いちゃうから』と言って(笑)。最後は私が書いてきた歌詞をもとにあーだこーだと話しながら完成させました」

――親子でのレコーディングはいかがでしたか?

「3人で一緒にスタジオに入ってレコーディングしたんですが、娘たちのリアクションが面白かったですよ。ありさは子どもの頃にレコーディングを経験しているんですが、かれんは今回初めてのレコーディングなので、『すごい!こうやって曲って作られるんだ!』って感動してました(笑)」

――そんなお嬢さんたちの姿を見て一番喜んでいたのはやっぱり優さんだったのでは?

「アハハ(笑)。うれしかったですよ。『make lemonade』のリリックビデオも次女が作ってくれて、思いのほか難しかったようですが、みなさんぜひ見てください」

――40周年イヤーということで春先には過去のライブDVDをリリースして今回はベスト盤ということで、やはりライブが見たいところですがご予定は?

「今年はこれからミュージカルが始まるので、ライブは来年できたらなって思っています。『Me☆セーラーマン』とかほとんど歌ってこなかった曲なんかを歌ってみたいですね。ほかにもアルバム『Image』(1982年)や『COLORFUL BOX』(83年)は当時、風邪を引いていた時に録ったので今度はリベンジで全曲コンサートとかやってみたいですね。」

――楽しみです。ミュージカルも今年2本目となりますね

「お芝居も大好きで、前回は『三ツ星キッチン』さんという大好きな劇団のオリジナルミュージカルに出演させていただき、今回は11月から始まる吉田栄作さん主演のミュージカル『クリスマス・キャロル』に出演させていただきます。19世紀のロンドンを舞台に大好きなクリスマスがテーマなので、すごく楽しみです。吉田さんとは2回目の共演なんですが、渋くてカッコいいですよ」

□早見優(はやみ・ゆう)歌手。日本生まれ。3歳から14歳までをグアム、ハワイで育つ。1982年に歌手デビュー。「夏色のナンシー」などのヒット曲がある。バイリンガルと国際感覚を生かしテレビ、舞台などで活躍。上智大学比較文化学部日本文化学科を卒業。2008年ワインエキスパート認定。18年にダンスフィットネスZumbaRのインストラクター資格取得。「NHK World」やNHKラジオ「深夜便ビギナーズ」のレギュラー出演中。22年、デビュー40周年迎え、ベストアルバム「Affection~Yu Hayami 40th Anniversary Collection~」を発売。11月12日より全国公演のミュージカル「クリスマスキャロル」に出演。

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