3児を育てる企業広報ワーママ、時短勤務で成果のワケ 作り置き料理は「最大の安心材料」

3児の子育てをしながら、社内事業で広報部門を立ち上げたワーママがいる。人材派遣会社「株式会社セレクティ」の広報担当を務める村本綾香さん(34)だ。航空会社のグランドスタッフから人材サービス業界へ。ツイッター発信を含めた広報業務にまい進しながら、家庭では夫と育児分担をして時短料理を追求。「1つでも遅れると成り立たない緻密なスケジュール」で日々奮闘しているという。パワフルな“働くママ”のライフスタイルに迫った。

「株式会社セレクティ」の広報担当を務める村本綾香さんは3児のママでもある【写真:本人提供】
「株式会社セレクティ」の広報担当を務める村本綾香さんは3児のママでもある【写真:本人提供】

航空会社グランドスタッフから人材サービス業界へ 「株式会社セレクティ」広報担当の村本綾香さん

 3児の子育てをしながら、社内事業で広報部門を立ち上げたワーママがいる。人材派遣会社「株式会社セレクティ」の広報担当を務める村本綾香さん(34)だ。航空会社のグランドスタッフから人材サービス業界へ。ツイッター発信を含めた広報業務にまい進しながら、家庭では夫と育児分担をして時短料理を追求。「1つでも遅れると成り立たない緻密なスケジュール」で日々奮闘しているという。パワフルな“働くママ”のライフスタイルに迫った。(取材・文=吉原知也)

 同社の本社は仙台市で、村本さんは兵庫県在住で大阪支店に勤務している。7歳の長女、4歳の長男、3歳の次女のお母さんでもある。国内線・国際線のグランドスタッフの経験を経て2012年に同社に入社した。当初「人材コーディネーター」の横文字に憧れたといい、「大阪支店立ち上げ2年目に入社したので、業務内容は営業から労務管理まで幅広い業務が学べました。もともと人が好きで、新たなチャレンジで自分自身も成長することができました。初めはビジネスメールの打ち方やコピーのとり方も知りませんでしたから(笑)」。

 入社後の1年半営業を担い、2015年に長女を出産。総務に異動し、その後、長男、次女を妊娠・出産。転機が訪れたのは、次女の産休中のこと。幹部から広報部門の新設に関する相談を受けた。コーポレートスローガンを策定し、ブランディングを強化して、採用の向上にもつなげたい――。社内外に向けて必要な取り組みだが、これまで同社には広報部門がなく、公式サイトにニュース情報をアップする程度だった。“特命”を受けた村本さんは、産休明けの21年4月から広報事業をスタートアップで立ち上げた。

 真っ先に取り組んだのが、SNS展開。ツイッターのアカウントだ。「どうやったら企業の名前を知ってもらえるのか。アカウントは企業なのか、個人なのか悩みましたが、ワーママをテーマにした個人アカウントで発信することで、企業の認知度を高めるという方法を採用しました」。入社当時のあだ名である「あやぴょん」というニックネームで、「あやぴょん セレクティの縁繋ぎ広報」として21年7月にツイッターを開設。「ワーママの自分として個人色の強い、人柄を押し出した投稿」をテーマに、毎日投稿。日々の業務にあたるうえでの率直な気持ちや、同社が関係するセミナーの報告、社内行事のオフショット、得意の作り置き料理紹介まで、多彩な内容を発信。仙台に本社を置く企業だからこその防災メッセージの呼びかけ、リプライ欄に積極的にコメントを残すなど、「人として」に重きを置いたSNS活動を心がけている。結果は実を結び、1年間で5000人のフォロワー獲得の目標を立てたが、実際は6200人、120%の実績を達成した。

 今年7月からは活動をさらに強化。同社が東京・池袋に開校したドローンスクールのプレスリリース発信でウェブメディアから取材を受けるなど、実績を重ねている。「弊社の取り組みが、世の中の興味・関心にマッチしているのか。より多くの人に届く情報発信はすごく難しいです。どうやったら効果的な発信ができるのか、日々アンテナを張り、ブラッシュアップしています」と語る。

「株式会社セレクティ」広報担当の村本綾香さん(左から3人目)はパワフルに働いている【写真:本人提供】
「株式会社セレクティ」広報担当の村本綾香さん(左から3人目)はパワフルに働いている【写真:本人提供】

まな娘からのプレゼント 「働くママってすてきなんだ、と実感して…」

 仕事が充実化する中で、村本さんは午前9時~午後4時の時短勤務ですべてをこなしている。通勤は往復約3時間の環境。ここで、「生命線」となるのが、時短料理だ。作り置き料理を「つくおき食材」と名付け、調理のしやすさと質の向上に余念がない。「日曜の夜、その日のご飯を食べて片付けた後に、次の週の分をまとめて作るんです。2時間かけて4、5種類を準備します。私にとってこれが、次の週を過ごすための最大の安心材料になります」。日持ちする根菜類を中心に、ニンジンの炒め物やニンジンとゴボウのきんぴら、切り干し大根、煮物。余力がある場合は、週のどこかで「継ぎ足しおかず」として、野菜のおひたし、アボカドとツナのサラダ、もやしのナムルを追加で作る。帰りがけにスーパーで買った主菜に、つくおき食材、作り置きしている具だくさんのみそ汁を添え、栄養バランスを考えた夕ご飯が出来上がりだ。「週の後半は子どもたちが好きなカレーにすることもあります。我が家は『残してはあきまへん』と、自分のお皿にとった食べ物はきれいに全部食べるというルールがあります。食育面でそこは大事に教えています」という。

 夫の育児参加が大きな支えになっている。平日朝の子どもたちの送りや、夜の時間帯の子どもたちの世話は夫の担当だ。村本さんがリラックスできるお風呂の時間を確保できるといい、「夫の協力あってこそです。夫は美容師で、土日は私がワンオペ育児になってしまうので、家族全員がそろう時間を作るのは難しいですが、なんとかやりくりしています。一番下の子が小学生に上がるまで、あと3年間は毎日コツコツですね」。

 3児を育てることで気付いたことがある。「『手放すこと』を学びました。1人目の時は、なんでも自分がやると、すべて抱えてしまって大変な思いをしました。子育てで自分しかやれないこと、これは案外少ないものです。他の人に頼めることを整理して、切り分けることが大事かなと思います。そのために夫の協力は重要で、家事代行サービスもあります。それに、子どもが大きくなっていくと、子どもに頼めることも増えてきます。洗濯物をたたむ作業を子どもにお願いをすると、お風呂から上がったら、きちんとたたまれてケースにしまってあります。私の場合は褒めまくり教育で、『よくできたね、魔法みたい』と褒めちぎるんです。そうすると子どもは喜んで次もやってくれるし、もっときれいにたたもうとします。最近は、子育てはマネジメントなんだなと実感しているんです」と教えてくれた。

 仕事に育児に、目いっぱいフル回転の村本さん。多忙の中で支えになっているものは何か。「時間に限りがある中で、ママとしてもっと自分が育児参加するべきなのか、葛藤している部分もあります。でも、学童に通っている長女が『ママにありがとうのお手紙を書いたよ』と見せてくれたり、「ママ、頑張ったご褒美だよ」と工作の作品をプレゼントしてくれるんです。働くママってすてきなんだ、と実感して。もちろんうれしいですし、これで頑張っていけるんです」。子どもたちからのエールが、何よりの原動力になっている。

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