芸歴11年の白洲迅が今も抱える“違和感” 「人前に出るのが嫌」でも芸能界入りを決断

直木賞作家・奥田英朗の同名小説を映画化した「向田理髪店」(10月14日公開、森岡利行監督)。高橋克実の初主演映画で、理髪店を継ぐために帰郷した息子役を演じるのは俳優の白洲迅(29)だ。白洲が映画での役に重ねて、親との関係、自身のターニングポイントを語った。

自身が演じる役を「行動力のある男」と語った白洲迅【写真:舛元清香】
自身が演じる役を「行動力のある男」と語った白洲迅【写真:舛元清香】

映画「向田理髪店」で東京から帰郷した息子役「行動力のある男」を好演

 直木賞作家・奥田英朗の同名小説を映画化した「向田理髪店」(10月14日公開、森岡利行監督)。高橋克実の初主演映画で、理髪店を継ぐために帰郷した息子役を演じるのは俳優の白洲迅(29)だ。白洲が映画での役に重ねて、親との関係、自身のターニングポイントを語った。(取材・文=平辻哲也)

 本作は、九州の元炭鉱町を舞台に、理髪店の親子の葛藤を軸に、過疎化、少子高齢化、介護、結婚難など地方が抱える社会問題を軽妙タッチでユーモラスに描いたヒューマンドラマ。昨年12月、福岡県大牟田市でロケした。

 白洲が演じたのは、突然、勤務先の東京から帰郷し「会社を辞めて店を継ぐ」と宣言する息子・和昌だ。

「バイタリティーがあって、行動力のある男だなと思いました。東京から逃げてきた部分もあると思うんですけど、仕事を辞めることも、うるさくて厳しい親がいる田舎に帰ってくるのも勇気がいることだと思います。そこで、床屋を継いで、隣にカフェを併設したいと声を大にして言う。やりたいことに対して、純粋に自分の気持ちに素直に行動できる男だな、と思いました」

 和昌は九州出身、東京で働くサラリーマンだが、白洲は東京出身。共通点はあったのか。

「分かるところは家族構成とそのキャラクターです。割と厳格な親父(高橋克実)とものすごく愛にあふれた優しい母(富田靖子)というのは、僕の両親と近いんです。父は僕が中学生ぐらいまではマグロをトラックで運んでいました。子どもの頃は、父は亭主関白、昭和の親父といった感じで、トラックの音が聞こえてくると、弟2人と怖がったものです。母は、そんな父にも負けない、かあちゃんって感じでしたね。今では、父と一緒にお酒を飲んだりしていますが」

 祖父祖母の家は青森。子供の頃は毎夏休みに里帰りしていたので、地方の風景には懐かしさも感じたという。

「現場は和気あいあいで、監督が一番現場を楽しんでいるんじゃないかなと思いました。(高橋)克実さんとは同じ劇団で、若い頃からの友人だそうで、その頃に戻っているような感じで、すてきだなと思っていました。(幼なじみ役の)克実さん、近藤芳正さん、板尾創路さんが並んで歩くシーンが好きで、年を取っても、こういう友達がいたらと思いました」

11月1日に30歳を迎える白洲迅【写真:舛元清香】
11月1日に30歳を迎える白洲迅【写真:舛元清香】

親の友達に勧められて受けたジュノンボーイ「考える暇もなく」4年間務めたテニミュ

 和昌は故郷でのある出来事をきっかけに大きな決断を下すが、白洲にとってのターニングポイントは何だったのか?

「この業界に足を踏み入れたことですね。きっかけは第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストだったのですが、親の友達に勧められて受けたんです。事務所に入ったのが、高校卒業するタイミングだったのですが、正直、人前に出るのが嫌なタイプで、自分とは一番かけ離れた感じがしたんです。大学に行きながら、軽く何かできればいいかなくらいの気持ちだったんですよね」

 それが2011年にオーディションで舞台「ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン」で鳳長太郎役をつかんだ。

「当時は何も分かっていなかったですし、すぐにお仕事が決まるとも思わなかったんです。しかも4年間役を務めることになり、簡単にはやめられない、逃げられない状況を作られてしまい、すぐに大学も行けないほど忙しくなってしまった。考える暇もなく、いろんなことが決まってしまったというのが正直な気持ちなんです」と告白する。

 俳優生活はすでに10年以上にも及ぶが、その“違和感”は今も頭の片隅にある。

「僕がやりたくて、始まってないっていうのがずっと結構引っかかっていて、もう、この仕事しかできないとは分かっているんですが、そういう自分をどこかで忘れないでおきたいと思っているんでしょうね」

 今年は私生活でも大きな変化があった。11月1日には30歳の誕生日も迎える。

「本当に節目だなと思います。20代ラストだから気合も入りましたし、結果、お仕事的にも節目だなって言えるような年にはできたかなと思っています。先輩方も『30代が一番楽しかった』とおっしゃっているので、楽しみにしつつ、役者としては、役の変化をもっと楽しんでいけたらいいなと思っています」。“役者はまだ天職ではない”という思いこそが、白洲を突き動かしているのかもしれない。

□白洲迅(しらす・じん)1992年11月1日、東京都八王子市出身。2011年、舞台「ミュージカル テニスの王子様 2nd シーズン」でデビュー。以後、甘いルックスと確かな演技力でドラマ「ごめんね青春!」「学校のカイダン」などの話題作に出演し、人気を博す。最近の主な出演作にドラマ「リコカツ」「刑事7人」「個人差あります」「Life 線上の僕ら」、映画「HiGH&LOW THE WORST」、「BACK STREET GIRLS~ゴクドルズ~」など出演。

ヘアメイク:茂手山貴子
スタイリスト:持田洋輔
衣装協力:イロコイ、ブラン ワイエム、リーガルシューアンドカンパニー

シャツ2万9700円/ブラン ワイエム(ティーニー ランチ 03-6812-9341)
パンツ3万5200円/イロコイ(イロコイ 03-3791-5033)
靴5万60円/リーガルシューアンドカンパニー(リーガルシューアンドカンパニー03-5459-3135)

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