東京女子プロレスが10月9日（日）TOKYO　DOME　CITY　HALL（TDCホール）にてビッグマッチ「WRESTLE　PRINCESSⅢ」を開催する。

　東京女子のTDC大会は2019年11・7以来、2年ぶり2度目。振り返ってみれば、この大会を起点に東京女子はビッグマッチ路線へ本格的に参入した。世界的な新型コロナウイルス禍に見舞われ無観客試合も強いられたものの、世の中の情勢を鑑みながら聖地・後楽園ホールの開催増加とともにビッグマッチも増やし、大田区総合体育館、両国国技館といった大会場にも進出。大田区は2度開催で、旗揚げ9年目にして両国大会も成功させている。また、NOAH、DDT、ガンバレ☆プロレスと共催の「サイバーファイトフェスティバル」さいたまスーパーアリーナにも2年連続で参加を果たしており、2年ぶりの帰還となるこんどのTDCは10年目に向けての新たなる出発点にもなるのだろう。当日は3大タイトルマッチを中心に、全9試合をラインアップ。東京女子の世界観を存分に堪能できるカードが組まれている。

　メインはもちろん、東京女子の頂点王座であるプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合。3・19両国で絶対王者・山下実優を破った中島翔子が坂崎ユカを迎え撃つ、第10代王者5度目の防衛戦だ。このカードは今年6・12サイバーフェスのリマッチでもあり、8・14後楽園でシングルリーグ戦「東京プリンセスカップ」を制した（意外にも初制覇）坂崎が挑戦を表明した。

　両者はともに黎明期から団体を支えており、初代タッグ王者にも君臨した、みらクりあんずの元パートナー同士。この2人によるプリプリ王座戦は過去2度おこなわれており、1勝1敗。東京女子のビッグマッチではパートナー対決がメインを飾ることが多く、現在こそ袂を分けた状態ながら旗揚げ当時から団体を大きくしたいとの思いを胸に切磋琢磨してきた間柄だけに、こちらも東京女子のお家芸でもあるエモい闘いが必至である。はたして、坂崎が瑞希とのマジカルシュガーラビッツ対決を制しベルトを守った思い出の会場で王座奪回なるか、それとも中島が5度目の防衛を果たし、エース山下に次ぐ長期政権への足掛かりを築くのか。両者とも同王座は2度ずつの戴冠とあって、ある意味、次が決着戦とも言えそうだ。

　セミはプリンセスタッグ選手権試合。「令和のAA砲」赤井沙希＆荒井優希組が英国からの刺客リア・オライリー＆ナイトシェイド組を迎え撃つ、第10代王者2度目の防衛戦だ。

　SKE48の現役メンバーでもある荒井は昨年5月にプロレスデビュー。アイドル活動と並行させ、プロレスもすでに50試合以上をこなしている。芸能人のプロレス体験ではなく、レギュラーとしてリングに上がる真摯な姿勢が、プロレスファンの共感も得ているのだ。

“浪速のロッキー”こと赤井英和の娘・赤井沙希と組んだのは、4・9後楽園が初めて。芸能活動との二刀流や京都出身、またプロレス大賞新人賞受賞など共通点の多い2人はこの試合をきっかけに意気投合。DDTのリングで男子とも対戦する赤井から荒井が学ぶことは多く、7・9大田区で坂崎＆瑞希組を破って荒井はプロレス初戴冠。9・4名古屋ではSKE48のおひざ元である名古屋で初防衛に成功した。そして迎える2度目の防衛戦は、荒井にとって初の対外国人という試練のテーマも内包されている。前哨戦もないいきなりのタイトル戦で、令和のAA砲はベルトを守ることができるのか？　対戦相手はどちらも大型だけに、苦戦は必至と思われるが……。

　挑戦者のナイトシェイドは2年ぶり、2度目の東京女子参戦だ。前回は伊藤麻希のインターナショナルプリンセス王座に挑戦しており王者に肉薄、待望の再来日と言えるだろう。パートナーのオライリーは北アイルランドから4年ぶり2度目の来日で、東京女子には初参戦。現EVEタッグ王者（パートナーはスカイ・スミットソン）で、EVE王座を3度戴冠した実力者だ。ナイトシェイドとはアップライジングという4人組ユニットを組んでおり、どちらも大型ながらタイプの異なる大型。王者組には最大限の注意が必要だろう。

　オライリー組が英国EVEへのベルト持ち帰りをもくろむ中、インターナショナルプリンセス王者としてEVEからやってくるのが、伊藤麻希からベルトを引っぺがし、英国で乃蒼ヒカリの挑戦を退けたアレックス・ウィンザーだ。挑戦者は、今年の「東京プリンセスカップ」で準優勝、成長著しい渡辺未詩。外国人選手とは初めてのシングルマッチとあって不安もあるが、彼女のパワーは対外国人でこそ、よりいっそう効果を発揮する可能性もある。未詩が勝てば待望のシングル初戴冠、さらなる飛躍へのビッグチャンスだが……。

　迎え撃つウィンザーは09年12月、ブリタニー・ナイト（現ペイジ）を相手にリバティのリングネームでデビュー。16年4月のトニー・ストーム戦からアレックス・ウィンザーを名乗り、昨年11月、東京女子にも参戦し初代インター王座を争ったジゼル・ショーからRPW女子王座を奪取した。同王座はオライリーを含め現在7度の防衛に成功中。つまり、シングル2冠王としての来日となるのである。しかも今年6月にはEVEのシングルリーグ戦「SHE―1」も制覇、いまがキャリア最高潮にある選手と言えるだろう。

　第6試合の“ワン・トウー・ミリオン”山下実優＆伊藤麻希組vs里歩＆乃蒼ヒカリ組は“海外”がキーワードか。海外での試合も多い山下と伊藤、アメリカAEWで活動する里歩、そして経験値では劣るが、ウィンザーを追いかけ初の海外遠征をおこなった乃蒼。彼女の闘いぶりが試合のカギを握りそうである。

　第5試合にはアジャコングが東京女子10戦目にして初めて外国人選手と対戦する。アジャは、らく、原宿ぽむとトリオを結成するのだが、お気に入りの「おやすみエクスプレス」でらくと競演している場合ではないかもしれない。8月の後楽園2連戦で衝撃の初来日を遂げたミュータントモンスター、マックス・ジ・インペイラー（パートナーは辰巳リカ＆愛野ユキ）と激突するからだ。身長178センチ、体重95キロの巨体を武器にデビュー1カ月弱でIWAミッドサウスの女子王座を獲得、AEWやROHを中心に北米マットで暴れまわっている。アジャとの遭遇は大注目であり、来日初戦でトラウマを植え付けられたぽむには、一矢報いてほしいところだが……。

　第4試合は瑞希vsハイパーミサヲのシングルマッチ。両者は18年1・20王子以来の一騎打ちで、このときは瑞希が得意のキューティースペシャルで勝利。ミサヲが何を仕掛けてくるかが試合の行方を左右するだろう。

　第3試合では、タッグ王座挑戦や「東京プリンセスカップ」ベスト4入りなど躍進著しい鈴芽が、東京女子2度目の参戦となる水波綾を迎え撃つ。前回は渡辺未詩をシングルで破った水波。経験豊富で熱いファイトの水波に鈴芽がどこまで迫れるか。鈴芽の覚醒を期待したいと同時に、水波の今後の立ち位置も気になるカードだ。

　第2試合は上福ゆき＆桐生真弥＆猫はるな組vs角田奈穂＆まなせゆうな＆長谷川美子組。基本は3・19両国に続く東京女子vsガンバレ☆プロレスだが、角田がガンプロサイドにいくことにより、元アクトレスガールズの構図にもなった。両国ではまなせが桐生にフォール勝ち。ガンプロで男子の大型外国人ハートリー・ジャクソンとのタイトルマッチも体験しただけに、さらに一皮むけたまなせは東京女子にとって脅威の存在となりそうだ。また、角田には2年前に東京女子参戦を表明した思い出の地。ここで勝利し、さらなる飛躍へのきっかけにしたい。

　第1試合は宮本もか＆長野じゅりあ組vs遠藤有栖＆鳥喰かや組。空手家、女優、看護師、そして両国でプロレスラーの肩書きも加わった長野は、宮本との空手タッグで出陣。このチームでは4度目の登場だが、まだ勝ったことがない。そろそろ白星がほしいところで、長野の自力初勝利にも期待がかかる。自力初勝利とくれば鳥喰にも同じことが言えるだろう。サイバーフェスでのデビューから1年4カ月、タッグ戦線で頭角を現し始めた遠藤とのコンビで突破口を見出したい。

　このように注目の闘いがぎっしり詰まった10・9TDC「WRESTLE　PRINCESSⅢ」。ここから飛び出すプリンセスは、いったい誰だ!?