ドアに穴、トランクに水“ボロボロ”から蘇った53年前の貴重車 夢の1台は執念で発見

日産の名車「初代ローレル」の魅力を伝える愛好家団体「ローレルC30クラブ」の代表を務める今野信之さんは、執念で見つけたボロボロの1台を復活させた。発売当初のモデルで1969年式の「ローレル セダン 1800 デラックスB」の愛車秘話を教えてもらった。

元のライトグレーを取り戻した1969年式「ローレル セダン 1800 デラックスB」【写真:ENCOUNT編集部】
元のライトグレーを取り戻した1969年式「ローレル セダン 1800 デラックスB」【写真:ENCOUNT編集部】

村田製作所のCMを見て「まだある!」と必死に捜索 「ローレルC30クラブ」代表

 日産の名車「初代ローレル」の魅力を伝える愛好家団体「ローレルC30クラブ」の代表を務める今野信之さんは、執念で見つけたボロボロの1台を復活させた。発売当初のモデルで1969年式の「ローレル セダン 1800 デラックスB」の愛車秘話を教えてもらった。

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 子どもの頃、父親が初代ローレルに乗っていたが、故障気味で2年で下取りに出てしまった。「かっこいいなあとずっと思っていたんです。社会人になって、もうどこにもないだろうなと思っていたら、村田製作所のCMでタクシーとして使われている姿を見て、『まだある!』と驚きを覚えました」。必死に捜索。同社に連絡をして、取り扱っている業者にたどり着いたが、「けさ、解体に持っていきましたよ」。まさかの非情な通告を受けた。「潰さなくてもいいのに」。CMの車を手に入れることはできなかった。

 しかし、雑誌の個人間取引のページで、売りに出ているのを目ざとく発見。近所だったため、すぐに向かい、購入を即決。23年前のことだった。「やっぱりこういうのは見に行ったらダメですね。買っちゃいました」。

 しかし、憧れてやまなかった夢の1台は、ボロボロの状態だった。「色は真っ茶っ茶で、ドアにも穴が空いていました。雨ざらしの環境に置かれていたようで、トランクにも水が溜まっていて…」。

“修復作戦”を開始。まず、古くから営業している板金工にオールペイントを頼んだ。「ライトグレー(グレア シルバー)」の元の色への全塗装に成功。さらに、水回り、ヒーターが壊れていたので修理。マフラーなども調整した。一方で、エンジンはしっかりしており、ヘッドガスケット交換ぐらいの整備で済んだ。「当時、時間をかけてしっかり作っていたので、丈夫なんですよ」と、職人技に思いをはせる。

 購入当時、ローレルを手放した経験のある父親からは「えっ、どこから持ってきたんだよ」とびっくりされた。普段から近所の買い物にも乗っているが、つい先日も自宅の前で洗車をしていると、道行く人から「まだあるんですか? 珍しいですね」と驚かれたという。

 今は「好きな物を手に入れられた」喜びをかみしめながら、大事に乗り続けている。傷まないように、雨の日は乗らず、屋根付きのガレージで保管。置いておくことはなく、エンジンをかけて走らせ、状態を維持している。それに、「地元の日産のディーラーにもお世話になっているんです」。貴重な1台が、いつまでも元気な理由がよく分かる。

 愛好家の集まる「ローレルC30クラブ」は、4年前に立ち上げ。ローレルの魅力を紹介したり、オーナーたちの親睦を深めたりするため、年数回のイベント開催に加え、「長くみんなが乗っていけるように」と故障時の情報交換などを密に行っている。

「クルマは大きなおもちゃです。それに、気に入って買ったクルマを手放してしまっては、もう二度と戻ってきません。愛車はできるだけ長く乗っていてあげたいですよね」と話している。

次のページへ (2/2) 【写真】1969年式の初代ローレルのまばゆいショット
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