「GLAY」TERUが50代を迎えて今思うこと 「若手を意識することをやめた」自分らしい歌い方

60枚目となるシングル「Only One,Only You」を発表したGLAY。7月には通算1000回目のライブを行うなど、デビューから28年目を迎えた現在もバンドは次々と歴史を塗り替えている。まさに日本の音楽シーンをけん引してきた4人の挑戦は今も続く。そんなバンドのフロントマン、ボーカルのTERUに「新曲」、「ライブ」、「ボーカリスト」という3つのテーマでインタビュー。最終回となる3回目はTERUにボーカリストとして大切にしていることを聞いた。

「GLAY」TERU【写真:荒川祐史】
「GLAY」TERU【写真:荒川祐史】

ドラマーだったTERUはカラオケ好きがきっかけでボーカルへ

 60枚目となるシングル「Only One,Only You」を発表したGLAY。7月には通算1000回目のライブを行うなど、デビューから28年目を迎えた現在もバンドは次々と歴史を塗り替えている。まさに日本の音楽シーンをけん引してきた4人の挑戦は今も続く。そんなバンドのフロントマン、ボーカルのTERUに「新曲」、「ライブ」、「ボーカリスト」という3つのテーマでインタビュー。最終回となる3回目はTERUにボーカリストとして大切にしていることを聞いた。(取材・文=福嶋剛)

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――今回はボーカリストとしてのTERUさんについてお聞きします。昔の話になりますが、TERUさんは最初ドラムだったとお聞きしました。

「はい、そうなんです。元々GLAYに入る前にコピーバンドでドラムをやっていました。その噂を聞いたTAKUROが『一緒にバンドをやろう』と誘ってくれて。だから元々自分がやりたい楽器はドラムだったんです。歌とは違い楽器を鳴らすから自分の中ではバンドで演奏しているっていう実感が湧いてくる楽器なのですごく好きでした」

――そこからボーカルに代わった理由は?

「バンドのボーカルがなかなか見つからなかったんです。TAKUROが熱心に探していたんですが見つからないので、僕がカラオケで歌ったカセットテープを聴かせたんです。昔ダブルラジカセっていうカセットテープが2つ入るラジカセがあったのを覚えてます? 実はうちの家族はカラオケ家族だったのでよく伴奏のオケを作って、ダブルラジカセを使って歌を吹き込んで録音していたんです(笑)。そのテープをTAKUROに聴かせたら『めちゃくちゃいいじゃん! ボーカルをやった方がいいよ!』って。じゃあ歌おうかなと思って始めてみました」

――歌ってみていかがでしたか? 戸惑いはありましたか?

「実際マイクを通して歌ってみると、初めはあんまり気持ちの良いものじゃなかったんです。それで何回かボーカルをやってまたドラムに戻ったりしていたんですが、ライブを重ねていくうちにボーカルっていうのはバンドの顔でもあるし、ボーカル次第でお客さんの人数も変わってくるのが分かって、『やっぱりボーカルって大事だよな』って気が付いたんです。それからアマチュア時代もいろんな工夫をしながら歌ってきたんですが、やっぱりボーカリストとして『のど』は絶対的に大事なものだっていうのを体感して、そういう流れもあって今ものどを大切にするようになりました」

――ボーカリストとしてのTERUさんのターニングポイントは?

「独立した時だったと思います。99年の『GLAY EXPO』の頃は、のどの調子が悪い時も『とにかく楽しければいい』という、そんな気の緩みがあったと思うんです。でも、所属事務所を独立して、自分の気持ち1つでGLAYというバンドも変わってしまうし、スタッフの関係性だって変わってしまうことを実感して、すべての行動に責任を持たなくてはいけないという自覚を持つようになりました。調子が悪いとか風邪を引いたとか、そういう状況はもう絶対に許されないという緊張感が生まれたんです。そういった環境の変化が今の自分のボーカルスタイルを成長させたというか、ターニングポイントだったと思います」

――TERUさんはデビューからずっとハイトーンボイスで歌っていて、今でも切れ味の鋭い歌声を聴かせてもらえますが、のどのコンディションを保つために相当自制されているのかなと想像したのですがいかがですか?

「いやいや、まだまだすごい先輩方がたくさんいらっしゃいますから。小田和正さんのライブを見るとすごいなって尊敬します。でも、やっぱり僕もいろいろと気にするようになりました。自分のコンディションを良い状態にキープするために、どこまでやれるか検証してみたり、止めた方が良い習慣は止めるようにしていて、すごく地味な生活なんですけど(笑)」

――具体的には?

「ツアーに入る前に10日間ぐらいのリハーサルで初日から本番さながらのテンションで4日間連続で歌ってみるんです。それで4日間、普通に声が持つのか、それとも途中で声がかすれてしまうのか。ほかにもその前の晩に朝まで飲んでみて声が出るのかどうかとかね。そういう検証をしながら自分を確認するんです。それで声がかすれたらそれを止めるっていう選択をする。現在はツアーの1週間前からお酒を飲まないようにして、今のところそれでコンディションをキープできているんだけど、それでもダメなら2週間前からとか、そうやって全部引き算していくんです。でもそれって歌に限らず、どんなことにも応用できるんですよ。そんな成功体験を1つ見つけたらそれを実践してみる。それでまた新しいものを取り入れてみて自分に合うかどうか試してみる。まるで料理の味付けみたいなものかもしれないですね(笑)。そんなやり方で50代を楽しんでやろうって思っています。でも断酒はつらいですよね(笑)」

――通算60枚目となった今回のシングル「Only One,Only You」では、とても繊細なTERUさんのボーカルを聴くことができます。ボーカルスタイルの変化というのは?

「実は一時、きれいに歌おうと思った時期があったんです。今のミュージックシーンてハイトーンで歌が上手いボーカリストがたくさん出てきていますよね。バンドだと『King Gnu』や『Official髭男dism』など。そういっためちゃくちゃ歌が上手いボーカリストが出てきて、僕も彼らを意識してボーカルのレベルをもう1つ上げるためにきれいな歌い方を試してみようと挑戦したことがあるんです。でも、実際にやってみるとなんか自分のスタイルとは違ったんですね。

 やっぱり20代の頃に歌っていた当時の曲を聴き返してみると、あの頃の荒々しさがめちゃくちゃ今の自分にグッときたんです。最近忘れかけていた“あの頃”をここ2、3年は思い返しながら歌うようにしています。多少揺れたりしても『あれ?』って思うところがあったとしても、その時の感情の揺れを大切にしようって、そう思うようになりました。『Only One,Only You』もTAKUROの描いた歌詞の世界観をそういった表現で歌いました。今までは気持ちのどこかに若い人に負けないようにみたいなところがあったんだけど、50代になって感情を表現して歌えるようになってきたので、これからもっとそういう歌を残していきたいですね」

TERUは40代を過ぎてから故郷が恋しくなったという【写真:荒川祐史】
TERUは40代を過ぎてから故郷が恋しくなったという【写真:荒川祐史】

昔の曲を演奏すると知らないうちに昔に戻っている

――先ほど20代の曲を聴き返したというお話がありましたが、ステージ上で昔の曲が演奏されるとお客さんは当時にタイムスリップするっていう話をよく聞きます。じゃあ実際になつかしい歌を歌っているときのTERUさんはどんな気持ちなのかなって?

「前回の『HAPPY SWING 20th Anniversary SPECIAL LIVE』で演奏した『GONE WITH THE WIND』はインディーズ時代の曲で、当時、佐久間(正英)さんがプロデュースしてくれたすごく良いアレンジなんですけど、今回HISASHIがその頃のアレンジでライブをやりたいって言ったので、なんとなく当時の自分をコピーしながら歌ってみました(笑)。確かに言われてみれば知らないうちに昔に戻っているようなことってあるのかもしれませんね」

――最後にTERUさんの現在の至福の時間を教えてください。

「やっぱり地元の函館に帰った時です。生まれ育った街なんですが18歳で出たんです。20代や30代の若い頃はあまり帰ることもなかったんですが、40代を過ぎてから地元への愛着が湧いてきて、それで5年前に地元にプライベートスタジオを建てたんです。それからはとにかく早く函館に帰りたいって(笑)。レコーディングはそこでやることが多くなって、プロデューサーの亀田(誠治)さんやエンジニアさん、TAKUROもうちにきてレコーディングの合間に一緒に釣りを楽しむんですよ。スタジオで海を見ながらレコーディングできるからリラックスしながらいい歌が歌えるし、いい曲が生まれるんです。だから今は函館に帰った時が一番楽しい至福の時間ですね」

□GLAY(グレイ) 北海道出身のロックバンド。TAKURO(ギター)とTERU(ボーカル)を中心に1988年に結成。89年にHISASHI(ギター)、92年にJIRO(ベース)が加入し現在の体制となり、94年にメジャー・デビュー。2005年に個人事務所を設立し、10年6月に「GLAYがもっと音楽に対して真っすぐである為に」という想いを掲げ、自社レーベル「loversoul music & associates」(16年に「LSG」と改名)およびECサイト「GLAY Official Store G-DIRECT」を発足、17年には公式アプリ“GLAY app”を立ち上げるなど、音楽を通してGLAYがあらゆる可能性にチャレンジしていけるよう、常に独自のスタンスで高みを目指し邁進を続けている。

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