絶滅寸前レコード盤の復権 デジタル配信全盛なのにアナログ“一発録音”を再開した背景とは

復活した『VMS70』が新たなアナログレコードの歴史を切り開く
復活した『VMS70』が新たなアナログレコードの歴史を切り開く

 若年層に人気のバンド「back number」や歌手で俳優の星野源がアナログ盤を発売したり、ソニー・ミュージックエンタテインメントが2018年にレコードの自社生産を29年ぶりに復活させるなど、業界を挙げて“成長分野”ととらえて再興に注力。厳しさの増す音楽業界の中で、レコードの人気回復は光明だ。

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 こうした流れを受け、2台のカッティングマシンの再活用とともにダイレクトカッティングの導入に至ったキング関口台スタジオ。約2年に及ぶ再稼働計画は、困難な道のりの連続だった。キングレコードではかつて5台のカッティングマシンを所有していた。今回はそのうちの1台であるノイマン社製「VMS70」が再生に至った。

 1991年に稼働を停止し、その後は都内の倉庫で保管されていた。といっても、ラッピングされた状態で放置したままの状況だったが、サビもなく、比較的状態のよいことを確認した。倉庫内を改めて捜索し、専用ケーブルやカッティング針といった主要部品を発見。キングレコードOBの青木輝彦氏を始め、レコード会社「日本コロムビア」の技術陣やアナログレコードプレスメーカー「東洋化成」など業界内の協力を受けながら、欠品の代替品を丹念に探したり、動作不良などのトラブルを根気強く解消し、1年半の歳月をかけて復旧に成功した。

キングレコードオリジナル真空管アンプを搭載した『VMS66』は修理中。再び輝く時を待っている
キングレコードオリジナル真空管アンプを搭載した『VMS66』は修理中。再び輝く時を待っている

 もう1台のキングレコードオリジナル真空管アンプを搭載した「VMS66」は、一時寄贈していた専門学校から返却を受け、蘇生へ向けて現在も修理を続けている。

 幅広い世代から支持を取り戻しつつあるレコード文化。難度の高いダイレクトカッティングはエンジニアの技術向上にもつながり、よりハイレベルな音楽作りに結び付くといえる。

 伝統的なクラシックや、アドリブが特徴的なジャズ、ロックを含めたレコーディングを想定しているといい、キング関口台スタジオの高橋邦明経営本部長代理は「新しいチャレンジで、いい音を切れる(レコードに刻む)ようにできれば。いい音楽をいい音で、楽しく提供していきたい」と意気込んでいる。

(ENCOUNT編集部・吉原知也/Tomoya Yoshihara)

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