進化し続ける歌唱力No.1決定戦シリーズ 仕掛け人が語る特別ライブ完成までの舞台裏

数々のドラマとヒロインを生んできた、「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の第4回大会ファイナリストらによるスペシャルステージ「ファイナリストLIVE」が、8月31日に行われた。イベントの仕掛け人であるTBSの竹中優介プロデューサーに、一夜限りの特別ライブが完成した舞台裏を聞いた。

ファイナリストLIVEはメンバー、バンド、ゴスペラーズ黒沢薫氏が一体となって完成
ファイナリストLIVEはメンバー、バンド、ゴスペラーズ黒沢薫氏が一体となって完成

【独占インタビュー】竹中プロデューサーが全34曲、約3時間のご褒美ライブを解説

 数々のドラマとヒロインを生んできた、「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の第4回大会ファイナリストらによるスペシャルステージ「ファイナリストLIVE」が、8月31日に行われた。イベントの仕掛け人であるTBSの竹中優介プロデューサーに、一夜限りの特別ライブが完成した舞台裏を聞いた。(取材・文=小田智史)

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 ファイナリストLIVEは、“ご褒美ライブ”という枠を超越したこだわりの数々が特徴だ。4回目を迎えた今回は全34曲、約3時間という大ボリュームのセットリスト。歌唱力No.1決定戦の決勝大会同様、生バンド演奏で行われたが、竹中氏は「終わったあと、バンドメンバーが過去イチと言っていいくらいに疲れ切っていましたね(笑)」と明かす。

「曲のジャンルの広さ、振り幅の大きさは、プロミュージシャンでも普段やらないレベルらしくて、(SKE48)古畑奈和さんが歌うような世界観全開の曲から、アイドルソング、ボカロ曲、昭和歌謡曲、『群青』(YOASOBI)のような合唱曲まで、振り幅がすごい。ファイナリストLIVEは、一流ミュージシャンでないと対応できないと思います」

 竹中氏は「生バンドは歌唱力シリーズの心臓部分」と、こだわりとともに絶大な信頼を寄せてきた。今回のファイナリストLIVEでは、冒頭のメンバー登場シーンでバンド陣にも“見せ場”を設けているという。

「立川ステージガーデンは縦長のホールで、ステージから遠い人は遠い分、どうしても登場演出がしたかったんです。ファンのみなさんも喜んでくださいましたが、そのときにバンドメンバーはアドリブ演奏をしています。そのアドリブがすごくカッコいいんです。コード進行だけ決めてあって、メロディーラインをベースがやったり、ギターがやったり、キーボードがやったり、ドラムがやったり、1人8小節ずつ回しています。そこでは一流ミュージシャンが主役になってソロで弾いているので、超マニアックな歌唱力ファンにはぜひ音にも注目してほしい、こだわりポイントの一つです」

 第4回ファイナリストLIVEは、「第4回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」で優勝したAKB48岡田奈々のほか、STU48池田裕楽、STU48矢野帆夏、SKE48古畑奈和、STU48清水紗良、NGT48三村妃乃、STU48今村美月、HKT48坂本愛玲菜、審査員特別賞のAKB48村山彩希が出演。そのなかで、ファイナリストLIVE初登場組が「どんなパフォーマンスをするのか見せたかった」と竹中氏は話す。

「SKE48」古畑奈和(左)、「STU48」矢野帆夏にはグループ卒業の“花道”が設けられた
「SKE48」古畑奈和(左)、「STU48」矢野帆夏にはグループ卒業の“花道”が設けられた

STU48池田、AKB48岡田、SKE48古畑、STU48矢野にソロ歌唱が設けられた理由は?

「歌唱力No.1決定戦に初参戦だった村山さんをはじめ、清水さん、今村さん、ファイナリストLIVEを初めて経験するメンバーが見せたことのない良さを引き出せるようにというのと、このイベントの楽しさを知ってもらおうと思っていました。もっと歌唱力シリーズにハマってほしいなと(笑)。なぜファイナリストLIVEを目指して頑張っているメンバーがいるかを体感してもらえれば、彼女たちの次回にもつながるし、感謝の意味も込めて、最高の時間を過ごしてほしいという気持ちでした」

 一方で、「第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」で優勝を飾った池田、歌唱力シリーズへの参戦を最後としている岡田、9月限りでグループ卒業が決定している古畑と矢野は、セットリスト終盤でソロ歌唱が組み込まれた。竹中氏は、その意図をこのように説明する。

「古畑さん、矢野さんは歌唱力シリーズ最後の舞台ということで、一流ミュージシャンの生バンドで、大きなホールで歌える場を楽しんでもらいたかった。そして、ソロ歌唱ブロックのトリは、矢野さんにお願いしました。『第1回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』から真摯に向き合ってきた矢野さんが、この場では(第4回大会で優勝した)奈々さんではなくトリを飾るのが、このイベントの象徴的な部分ですね。矢野さんが最後の曲を歌っているとき、同じSTU48の今村さんは舞台袖でどんな表情をしているのか、ぜひ(9月24日の放送で)見てほしいです。

 奈々さん、池田さんの(優勝)オリジナル曲も生バンドで披露する場が欲しかった。奈々さんは今年7月のソロコンサートでもやっていたので、僕やバンドマスターの佐藤雄大さんは『それを絶対上回ってやる』という謎の意地を持っていました(笑)。一から奈々さんの歌の成長を見てきた我々が、本人オリジナルの『壊さなきゃいけないもの』は最高の形で送り届けたい、温かい場にしたいと思い、雄大さんも奈々さんの良さがより出るアレンジを加えてくださった。奈々さんはファイナリストLIVE後の囲み取材で『過去イチ優しい気持ちになった』と話していて、びっくりしながらも、以心伝心できていたんだとうれしくなりました」

竹中プロデューサーは記念の「第5回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の構想を着々と練っている
竹中プロデューサーは記念の「第5回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の構想を着々と練っている

「3人1組のユニット戦」が開催される記念の第5回大会は大注目

 気になるのは、「第5回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の内容だ。今回のファイナリストLIVEで、2023年3月の開催決定とともに、第5回記念としてこれまでの個人戦のほかに、「3人1組のユニット戦」も実施されることが発表された。竹中氏によれば、マンネリ防止以外に、「新しい可能性と楽しみを提供したい」狙いがあるという。

「いろんな方とお話するなかで、ヒントを頂きました。今まで歌唱力シリーズに勇気が出なくて参加していなかった子が出場してくれたり、自分が応援しているグループのユニットが頑張っている姿、48グループ横断企画ならではの楽しさは、ユニット戦のほうが提供できるのではないかと思いました。ただ、歌唱力No.1決定戦の本質はあくまで個人戦。個人戦のファイナリストだけが、ファイナリストLIVEに出演する権利を持つべきだと思うし、ユニット戦だけにするのは違うなと。第5回大会に関してもメインは個人戦で、ユニット戦は第5回記念のセレモニー的な扱いです。

 歌唱力シリーズはいろんな面で成立して、たくさんの人に愛されて、結果が出せたからここまで続けられています。そうしてくれたのはメンバーのみなさん、応援してくださるみなさんなので、感謝の還元ということで、ご褒美(従来通りの優勝賞品に追加する形で沖縄ロケの地上波旅行番組もプレゼント)も用意しました」

 現段階では、「正直、ユニット戦のルールは半分も固まっていない」状態で、「ファンの方、メディアの方を集めてディスカッションしたいくらいです」と竹中氏は語る。

「ユニット戦が難しいのは、(歌唱力No.1決定戦の)ファイナリスト3人が組んだら少し反則じゃないですか。ただ、自由度も持たせたい。自由曲と課題曲制にしようか、生バンドでやるか、いろいろ考えています。ユニット戦は、メロディーラインがエモさを持っていたり、音色が強い人だけでも勝てなくて、一緒に歌うときに人を立てて歌える、ハモリができる、個人戦とは別の歌の要素を持った人が活躍できる場になる。歌の相性、3人の組み方、戦略が大事になると思います。ユニット戦にどれだけ立候補が来るか未知数ですが、個人的には、出場なら(個人戦を含めて)両方に参加してほしいなと思っています」

 個人戦のほかにユニット戦も加わり、新展開を迎える歌唱力No.1決定戦に出場してほしいメンバー、台頭してきてほしいメンバーを竹中氏に聞いてみた。

「SKE48の谷真理佳さんは、たぶん自信がないから(第2回大会以外は)出てきていないですけど、勝つための努力をすれば、絶対に素養があると思います。SKE48ならほかに(第3回大会に出場した)青海ひな乃さん、(第3回、第4回大会に出場した)澤田奏音さんと伊藤実希さんら若手に期待したいです。

 AKB48で言うとベテランの柏木由紀さん。歌手として素晴らしいのは周知の事実で、柏木さんの音色はすごくかわいくて、見せ方も上手い。コンテストとは違う形で歌われる方なので、出場されない可能性は高いですが、(元AKB48)峯岸みなみさんも卒業前に一回出て頂いたように、歌唱力No.1決定戦は若手メンバーだけでなく、大先輩が出てもいいイベント。『ユニット戦でもいいので記念にどうですか?』と(笑)。もう大歓迎です!

 AKB48の小栗有以さんは、毎回予選で上手くなっていますね。第4回大会の(AKB48)岩立沙穂さん、(NMB48)加藤夕夏さんのように、成長を続けて決勝大会に進んだメンバーもいます。ファイナリスト(ベスト8)になるには相当な覚悟が必要ですけど、決勝大会は本人の向き合い方と努力次第で、どのメンバーにも可能性はあると思います。STU48に歌が上手い研究生が入ったと情報も聞いていますし、NMB48の若手メンバーも(第4回大会の)予選で良かったので、新しい風が入ってきてほしいところです」

 進化を続ける歌唱力No.1決定戦は、選抜総選挙(2009~18年)やじゃんけん大会(10~18年)の開催がない今、数少ない48グループ横断イベントにして、歌一本で成功をつかめるチャンスがある夢の舞台として、今後も大きな注目を集めていくだろう。

□竹中優介(たけなか・ゆうすけ)TBSテレビ局員プロデューサー。中学・高校・大学と吹奏楽部に所属し、トランペットなど楽器のほかアレンジも行い、学生時代は音楽漬けの日々。「輝く!日本レコード大賞」のスタッフを長年務め、ミュージシャンにも負けない“音楽ガチ度”を誇る。日向坂46ドキュメンタリー映画「希望と絶望」など、ドキュメンタリー映画の監督も担当。

■第4回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 ファイナリストLIVE
日時:9/24(土)午後7時~10時30分、TBSチャンネル1で初回放送。
内容:2022年8月31日に開催されたスペシャルステージ「ファイナリストLIVE」を独占放送! 「第4回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」を制した岡田奈々(AKB48)のほか、池田裕楽(STU48)、矢野帆夏(STU48)、古畑奈和(SKE48)、清水紗良(STU48)、三村妃乃(NGT48)、今村美月(STU48)、坂本愛玲菜(HKT48)のファイナリスト8人と、審査員特別賞の村山彩希(AKB48)が生演奏をバックに本気で挑む、一夜限りの特別ライブの模様を収録している。

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