廃車業者の若き4代目が「怒りのツイート」で訴えたかったこと 「心を込める仕事」とは

「解体車にはいろんな理由があります。解体しか選択がない車を パーツを取ってもらって、少しでも他の車に移植されて生きてくれればと思ってTwitterに載せてます」。切実で誠意を込めたメッセージをツイッターに掲げ、話題を集めている自動車の廃車・中古車業者がある。東京都北区にある「赤羽カースチール株式会社」だ。解体車の部品を欲しい人にバラ売りする「パーツ取り車」についてもSNSで積極発信しており、少なからずのリツイート・いいねを獲得。実際に購入したユーザーからは「部品もぎもぎしました」との反応も。仕掛け人は、29歳の若き4代目だ。テレビや映画で実は撮影スポットにも多く使われている、ユニーク業者に迫った。

「赤羽カースチール株式会社」は解体車のパーツ売りも行っている【写真:ENCOUNT編集部】
「赤羽カースチール株式会社」は解体車のパーツ売りも行っている【写真:ENCOUNT編集部】

「グラスホッパー」「ドンブラザーズ」のロケ場所 家族経営の老舗・赤羽カースチール

「解体車にはいろんな理由があります。解体しか選択がない車を パーツを取ってもらって、少しでも他の車に移植されて生きてくれればと思ってTwitterに載せてます」。切実で誠意を込めたメッセージをツイッターに掲げ、話題を集めている自動車の廃車・中古車業者がある。東京都北区にある「赤羽カースチール株式会社」だ。解体車の部品を欲しい人にバラ売りする「パーツ取り車」についてもSNSで積極発信しており、少なからずのリツイート・いいねを獲得。実際に購入したユーザーからは「部品もぎもぎしました」との反応も。仕掛け人は、29歳の若き4代目だ。テレビや映画で実は撮影スポットにも多く使われている、ユニーク業者に迫った。(取材・文=吉原知也)

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 1966年に設立された家族経営の同社。廃車に加え、中古部品販売、中古車リサイクル業、自動車輸出も行っている。荒川と新河岸川に挟まれた地帯に浮間工場がある。ツイッター投稿の発信地はここだ。坂本知之社長(53)の長男で、2020年4月から同社に入った常務の和也(かずなり)さん(29)が、車の引き取りに加え、SNS業務を担っている。

「実は、これは怒りのツイートなんです」。和也さんがこう明かすのは、トップに固定されたツイートだ。今年1月31日の投稿で、こう記されてある。

「解体車にはいろんな理由があります。
・事故して直せないから解体してくれ。
・自分が最後の持ち主になりたいから書類は自分でやります。
・そもそも書類がない(レアケース)
・持ち主が消息不明の放置車両
などなど沢山の理由があります。
泣く泣く解体することの方が多い。
なので、解体しか選択がない車を パーツを取ってもらって、少しでも他の車に移植されて生きてくれればと思ってTwitterに載せてます。ご理解お願いします。
この理由を1人でも多くの方に知ってもらえたらどんなに楽だろうと思う日々です」

 廃車・解体の仕事について、世間一般の認知度・理解度は決して大きくはない。ここのところ目立つネットの書き込みが理由にあるといい、和也さんは「『まだ乗れるはずなのに、これを解体するの?』と、勘違いで指摘する書き込みが多いんです。僕らだって、何でもかんでも壊しているのではなく、どうしようもなくなってしまった車についてやっているんです。怒りからの動機ではありましたが、『俺だって解体したくないんだよ』。この気持ちを理解してほしいという思いで書き込んだんです。一定の反響はありました」と説明する。

 3代目で父の坂本社長の時代からインターネットの活用を開始。オークションサイトなどを通してパーツ販売を始めたが、クレーム狙いの悪質なユーザーに苦慮したこともあっていったん取り止めた。和也さんが入社後の20年7月からツイッターを開始。解体車・中古車について写真を交えて紹介し、パーツや中古車購入の希望者を呼び込んでいる。来客やネットユーザーとの交流を深め、SNSでの浸透を図っているのだ。現在では、ネットオークションでの出品も再開している。また、今年7月には「解体車が足りません」と内情を訴えるなど、正直なメッセージ配信を心がけているという。

今後はYouTubeを検討「仕事や業界、信念を正しい形で伝えていきたい」

 若者の車ユーザーに着目しているポイントがある。「18、19歳で免許取りたての若者や20代半ばの車好きの中には、オールドカーやネオクラシックカーに興味を示している人が増えてきています。SNSで部品パーツを探している人もいるので、需要があることは確かです。とはいえ、ウチも解体していかないと経営が成り立たないので、回転は早いです。お客さんの中には、ツイッターを通知オンでチェックしてくれている若い人がいると聞いているので、うれしいです。僕自身が車の引き取りで忙しい時もありますが、なるべくツイッターをこまめにやっていきたいです」と手応えを語る。それに、「ウチにやって来る車は書類がなく、どうにも動かせない訳ありが多いです。お客さんに自ら外してもらうのでその分安くできますし、使えるパーツを次に生かしてもらえれば。その思いでいます」と熱く語る。

 同社の解体の大きな特徴は、従業員たちが1つ1つの作業を自らの手で行う「手ばらし」だ。最初から重機を使って壊していくようなことはせず、配線から丁寧に取り外し、エンジンまで取り除いてからプレスする工程を採用している。解体を頼んだ客の中には「父の形見の1台だから」とすべての作業を見届けて写真におさめた人もいるという。「解体作業中に、ダッシュボードの中に手紙が入っていることがあるんです。車の名前と共に『今までありがとう』と書いてあって。大切にしていた車なんだな、と分かるんです。これは手ばらしでやるからこそ気付くことができます」。同社の女性従業員は16年乗ったトヨタ・ノアを廃車にする際に、解体の様子を写真に撮って残しているといい、「子どもたちを乗せて育ててきた思い出が詰まっている車だったので、どうしても見届けたかったです。最後まで愛車を大事に思うことについて、私たちはよく分かっているつもりです」と教えてくれた。

 さらに、今後はYouTube配信も検討。和也さんは「YouTubeの中には、解体車を派手に破壊する内容を面白おかしく流しているものもあります。そうではなく、心を込めて仕事をしているんだよ、ということを伝えていきたいなと思っているんです」。

 それに同社は多分野で特長を生かしており、車の中の閉じ込め事案の訓練用として消防当局に車両を貸し出すほか、エンタメ作品の撮影にも協力。映画「グラスホッパー」、スーパー戦隊シリーズ「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」のロケ場所、映画「いのちの停車場」の車両提供を行うなど、“メディア露出”も積極的だ。

 実は和也さんは、もともとスポーツ関係の販売の仕事に就いており、ミニ・クーパー販売店勤務を経て、実家の家業を継ぐことを決意した。先に実家で働いていた3歳下の弟と父から、「来てほしい」とお願いされ、決断した。「弟とは性格も考え方も真逆なので、多様な視点で物事に対応できる利点があります。弟との二本柱で頑張っていきたいです。でも、廃車・不動車の引き取りにいくと、業界を見渡しても若いので、みんなに心配されてしまうんです。手早くレッカーに積み込んで仕事を進めると、安心してもらえます(笑)」。今後について、「お客さんの思いをしっかり受け止めながら、車をどう扱っていくのかをしっかり伝えて、仕事や業界、自分たちの信念を正しい形で伝えていきたいです」と前を見据えた。

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