菅田将暉、坊主頭で宮沢賢治に 主演・役所広司で直木賞「銀河鉄道の父」映画化
小説家・門井慶喜の第158回直木賞受賞作「銀河鉄道の父」が、主演に俳優の役所広司、共演に菅田将暉、森七菜を迎えて映画化することが決定した。
2017年から映画化プロジェクト始動
小説家・門井慶喜の第158回直木賞受賞作「銀河鉄道の父」が、主演に俳優の役所広司、共演に菅田将暉、森七菜を迎えて映画化することが決定した。
原作は、門井が大量の宮沢賢治資料の中から父・政次郎について書かれた資料をかき集め、宮沢賢治の生涯を父親の視線を通して活写する、究極の親子愛を描いた傑作。監督を「八日目の蝉」「いのちの停車場」などヒット作品を生み出してきた成島出が務める。小説は2016年に発売され、17年から映画化プロジェクトは動き出し、役所、菅田、森といった名優たちが集い、6年越しで満を持して映画制作が動き出した。
主演の役所が演じる政次郎は、父の代から富裕の質屋を営み、家業と一家の主人として、責任感と情熱のある明治の男だが、長男・賢治が生まれると、明治の男には珍しく子育てに熱心で子供にはめっぽう甘い。そんな政次郎について役所は「原作に、宮沢賢治の父政次郎のことを『厳格だが、妙に隙だらけの父親だ』というような一文があり、これを手がかりに息子であり、作家・宮沢賢治の大ファンの男を演じてゆこうと思いました」と撮影に臨んだと明かした。
また、「この人物を作り上げる為に『花巻弁』を聞き取れるギリギリまで攻めてゆけば強力な武器になると信じ頑張りました。成島組に集まったスタッフ、キャスト、素晴らしいチームでした!」と撮影を振り返った。
菅田は宮沢賢治役を短髪坊主頭で挑んだ。本来は長男として質屋を継ぐのだが、それに反発し、学力もないのに学問の道へ進み、さらには商人家系にもかかわらず農業や宗教の道に進みたいと、親泣かせの我が道を行く息子。父・政次郎と長男・賢治の、人間味あふれる親バカ・ダメ息子のユーモアと苛烈な闘いの日々。
宮沢賢治を演じるにあたり菅田は、「クランクイン前に、岩手県花巻市に行きました。町の至るところに、宮沢賢治さんの言葉や生きた証が残っていて、その残り香を感じることができました。ひとりの生き様が約100年後の今なおこれほど土地に影響を与えている。そして、その言葉や思想、物語は海を渡り世界中に伝わっている。改めてそんなことを思うと、あまりにも大役で身が引き締まる思いでした」と思いを明かした。
続けて、「しかし今回はその家族のお話です。賢治の父や母、妹、弟、祖父、家族との時間がいかに彼の人生にとって大切であったか。偉大な作品の裏側を想像すると、ひとりの何者でもない青年にも見えてきました。役との出会いはいつも不思議な縁を感じますが、今回ほど出会えて良かったと思わされた現場も珍しいように思います。過不足なく演じることは不可能かもしれませんが、自分なりに宮沢賢治と真摯(しんし)に向き合わせていただきました。どうか、よろしくお願いします」と作品をアピールした。
森は、そんな2人がお互いうまくいくように指南するなど、賢くしっかり者の妹・トシ役を演じる。「『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』など、あの名作たちが生まれた時間を肌で感じることができたことは、今後の人生においてもとても貴重で豊かな経験になりました。宮沢賢治作品は国語の教科書などで読んだりもしていたので少し難しく考えてしまっていましたが、そんな若い世代の人にも、宮沢家のあたたかく愉快で人間味あふれる時間が描かれたこの作品を通して、より宮沢賢治作品を楽しめるきっかけにもしていただけると思います」と作品の魅力を語った。
撮影は今年の5月、6月で行われ、公開は23年GWとなる予定だ。監督の成島は「どんな時代でも、親は子の心配をし、振り回されるものです。それは、国民的作家、宮沢賢治の父にも当てはまりました。門井慶喜さんの原作で描かれている、宮沢賢治の父・政次郎の“父でありすぎる”人物像に魅了されました。そして、ダメ息子だった賢治が、生きる道を見つけ、若くしてその生涯を閉じるまでを、底なしの愛で包み込んだ宮沢家の人々に、普遍的な家族の絆を感じました。役所広司さんの大らかで人をひきつける父・政次郎、菅田将暉さんの繊細で透き通ったガラスのような息子・賢治、森七菜さんの賢明ではじけるような輝きを放つ妹・トシに、ご自身の家族や大切な人を想いながら見ていただけたら幸いです」とコメント。
原作の門井は、「子供が親を選べないように、親も子供を選べない。生まれてくるのは天才か、努力家か、それとも生活能力のない夢想家か。宮沢賢治はそのすべてだった。ありあまるほどの生活能力を持ち、家の将来に全責任を負わなければならない父・政次郎との共感。衝突。その向こうにあるものの輝きこの世には、親子の数だけ銀河がある。私は今回の映画化をもっとも楽しみにしている者のひとりです」
日本のみならず世界中の“人の心”に生き続ける宮沢賢治。没後90年となる23年、不安定で激動の時代に、人の心に生きる力を与えてくれる映画が公開される。