心に訴えるプロの演出で勤務先への理解深める「企業史演劇」 多様化職場の向上策を探る
企業の歴史や理念をプロの演出によって演劇化する「企業史演劇」が話題を呼んでいる。創業の経緯や経営理念について従業員の理解・共有を深めてモチベーション向上につなげるのが目的で、心に訴えかける「演劇」に着目した体験型研修の新たな取り組みだ。外国人の受け入れなど多様化が進む職場で、人事研修や採用活動への活用が見込まれる。若者の早期離職や人材の流動化といった労働問題が取りざたされる中で、課題の解消のための手段としても注目を集めそうだ。
「頭と心で理解するには演劇しかない」 体験型研修でモチベーションアップの狙い
企業の歴史や理念をプロの演出によって演劇化する「企業史演劇」が話題を呼んでいる。創業の経緯や経営理念について従業員の理解を深めてモチベーション向上につなげるのが目的で、「演劇」に着目した体験型研修の新たな取り組みだ。外国人の受け入れなど多様化が進む職場。若者の早期離職や人材の流動化といった労働問題が取りざたされる中で、環境改善の一手となるか。
「企業史演劇」を企画・制作するのは、各分野のプロフェッショナルを支援する「クリーク・アンド・リバー社」(東京都)。昨年10月に演劇の上演と映像化のサービスを開始した。自ら部署を立ち上げた舞台芸術事業部の藤澤恵太部長(29)は「従業員が勤務先の企業の理念や方向性を理解できれば、120%の力を発揮することができる。生のストーリーには、紙や資料にはない臨場感がある。頭と心で理解するには演劇しかない」と説明する。
藤澤部長は「M-1グランプリ」の参加経験があり、舞台演劇・芸能をこよなく愛するだけに、演劇ならではの伝わりやすさを重視したという。
まずは自社の社史を演劇化。グループ会社を含めた300~400人の従業員を対象に「理念浸透研修」を実施した。勤続年数の浅い社員や中途入社の社員を中心に好評だったという。
今年7月には、医療法人社団「桐和会」(東京都)の企業史演劇をプロデュースした。同グループは医療やリハビリ・介護ケアを手がけており、グループ全体で3000人超の職員が60か所以上の施設で勤務。海外6か国86人の外国人職員も働いている。桐和会の岡本和久理事長から「職員の多様化・増加によって、改めて企業理念を浸透させる機会を設けたい」との相談を受け、演劇化と映像制作に取り組むことになった。