赤井英和の息子、英五郎が映画監督になった理由 本家“ロッキー”へのラブレター

映画「AKAI」(9月9日公開)は俳優・赤井英和のボクサー時代を当時の映像とインタビューでつづったドキュメンタリーだ。編集・監督は、英和の長男で、昨年プロボクサーとしてデビューした赤井英五郎(27)。小6から米国留学し、スポーツに親しみ、映像は大学と独学で学んだ。英五郎が二刀流を選んだ理由とは……。

映画「AKAI」の赤井英五郎監督【写真:荒川祐史】
映画「AKAI」の赤井英五郎監督【写真:荒川祐史】

映画「AKAI」9日公開 父で俳優の赤井英和のドキュメンタリー

 映画「AKAI」(9月9日公開)は俳優・赤井英和のボクサー時代を当時の映像とインタビューでつづったドキュメンタリーだ。編集・監督は、英和の長男で、昨年プロボクサーとしてデビューした赤井英五郎(27)。小6から米国留学し、スポーツに親しみ、映像は大学と独学で学んだ。英五郎が二刀流を選んだ理由とは……。(取材・文=平辻哲也)

 映画「AKAI」は、ファイティングスタイルと下町生まれの生い立ちになぞらえ、「浪速のロッキー」と呼ばれた赤井を追ったドキュメンタリー。1980年にデビューし、戦績は21戦19勝16KO2敗。デビュー以来12連続KOを誇ったが、大和田正春戦ではKOを食らい、ボクサー生命を絶たれた。映画では当時の試合映像、赤井の自伝を基にした劇映画「どついたるねん」(阪本順治監督)の映像と、2020年春に行ったインタビューで構成される。

「僕はお父さんがどんなに素晴らしいボクサーだったかを伝えたくて、作ったわけではないんです。『どついたるねん』は僕から観たら『撮影セットの上で出来たドキュメンタリー(ノンフィクションのようなフィクション)』です。父親の半生は映画みたいな話なので、『当時の映像で作る映画(フィクションのようなノンフィクション)』と言うイメージで作りました」と英五郎は語る。

 製作のきっかけは2020年春、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言だった。英五郎は19年に五輪の代表選考を兼ねた試合で敗戦。その後、けが、手術からのリハビリに努めながら就職を考えていたが、コロナ禍で思うように動くことはできなかった。幼少の頃から映画好きで、米大学では映像を学ぶ一方、独学で撮影や編集を学んでいたことから、父のボクサー時代の映像をまとめることを思い立った。当初はYouTubeで発表することも考えていたという。

 ボクサーと映画監督の二刀流というのは異色だが、映画監督というものをどう捉えているのか。「止まっていたくないと思って動き出したら、結果として、仕事になったという感じですね。僕の中では、父を始め家族、お世話になった方々への感謝の手紙を書いているのと同じ感覚なんです。だから、本来の映画作りとは少し違うかもしれません。別の作品を撮るか、と言われたら、オファーの内容によるとは思うんですけど、妥協はしたくないんですね」。

 本家“ロッキー”ことシルベスター・スタローンへのラブレターでもあるという。「ロッキーができなかったら、お父さんも『浪速のロッキー』とは呼ばれなかった。僕がボクシングデビューしたときに『ロッキー』の続編『クリード チャンプを継ぐ男』(15年)が上映されて、そんな偶然ないなって思っていました。いずれはロッキーの生みの親にも会いに行きたいんです」。

映画「AKAI」の製作は「感謝の手紙を書いているのと同じ感覚」と話した赤井英五郎(中央)【写真:荒川祐史】
映画「AKAI」の製作は「感謝の手紙を書いているのと同じ感覚」と話した赤井英五郎(中央)【写真:荒川祐史】

2020年にプロデビュー ジムで働く一方、フリーランスで動画編集も

“浪速のロッキーを継ぐ男”、英五郎は父・英和と「赤井の妻」として人気の母・佳子の長男として生まれた。両親の教育方針で小6の時にハワイ留学。中学ではラグビー、高校ではアメリカンフットボール、大学ではボクシングに本格挑戦した。

「家が自由にさせてくれたのは大きいです。『人を傷つけちゃダメ』という道徳的な部分はもちろんありましたが、それ以外は自分がやりたいことを好きにやらせてくれました。海外は自分にも合っていたし、感謝しています」

 大きなけがを乗り越え、20年、プロデビュー。今年7月の第2戦では2ラウンドTKOの初勝利を収めた。「1ラウンド目は良いパンチをいくつかもらいましたけど、2ラウンド目はもらってから逆に冷静で身体も温まってきたのか、慣れてきたのか、作戦があったわけじゃないけれど、その瞬間瞬間で動いたら、うまく動けた気がします」。

 月~土曜はボクサーとしてトレーニングを積み、ジムで働く一方、フリーランスで動画の編集を手掛けている。「今は基礎に戻って、トレーニングを繰り返し、次の試合の準備をしています。肩書きにはこだわらず、自分らしくありたいと思っています」と今後の活躍を誓った。

□赤井英五郎(あかい・えいごろう)1994年9月22日、東京都世田谷区出身。名前は父「英和」と祖父「五郎」からもらった。12歳の時にハワイに留学し、中学、高校、大学をアメリカで過ごす。米カリフォルニア州ウィッティア大時代に映像制作を学ぶ。スポーツでは9歳の時にラグビー、高校時代はアメリカンフットボール。20歳のとき、大学在学中に「自分の可能性を確かめるため」にボクシングを始める。18年、全日本社会人選手権ミドル級で優勝。東京五輪を目指すが、19年11月、「第89回全日本ボクシング選手権」2回戦で敗退し、出場権を逃す。アマチュア戦績は14戦8勝6敗。21年9月11日、後楽園ホールでプロデビュー。身長179センチ。

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